「それで、七夕祭りはどうでしたか?」
僕がお土産を渡すと、九郎先生は言った。
「楽しかったよー」
スマホを操作して、会場の写真を数枚見せてあげる。一枚めくるたび、彼はほうほうと感心した。
「これだけの量の短冊は、さぞや壮観だったでしょう。北村さんは何をお願いしたのですか?」
「んー、まあ、色々とー」
どう書こうかと悩んだものの、結局短冊には川柳を書いた。だって、他人任せにするような願いごとじゃないしねー。
「……あの、羊羹一緒にいただきませんか? お茶をお点てしますよ」
気がつけば、九郎先生は分かりやすく眉をひそめている。「貴方のことが心配です」とでも言いたげに。
「実は自分用にも買ってたりしてー。彩のみんなで食べなよー」
「……はい。では、三人でいただきます」
見透かされそうだ。見透かされてしまったら、甘えてしまいそうだ。
「私も、今度お土産買ってきますね」
「うん。楽しみにしてますー」
その時までには解決しているといいなー。僕はやはり他人任せに願いながら、見透かされても構わない自己とどっぷり甘えても構わない関係性と、どちらが良いんだろうとぼんやり思った。