貞53 高校生パロ(高1高2)それは、僕の気持ちとは裏腹にとても良く晴れた日に突然やってきた。
ぼんやりと桜を眺めていた僕は自分の幻聴かとさえ思ったのだ。でもそれは確実に空気を震わせる、静かなそして力強い音だった。
ー僕と付き合ってください!
*prologue
「はあ…」
今日何度目か分からない溜息を吐く。周りにいる人々は皆期待や希望に胸を踊らせているのに。
それもそのはず、今日は高校の入学式だった。
僕の溜息の原因といえばやっぱり父さんの事だった。
僕がまだ幼かった頃、母さんを亡くして以来父さんはずっと僕に関わることを避けているみたいだった。
母さんが生きていた頃、父さんがどのような人物だったのかは僕も記憶が浅く分からない。知ろうとしても僕が物心付いた時には家には母さんの写真すら無く知る術も無かった。だからこれは僕が中学の頃お世話になった先生から聞いた話だから確証はないけれど。こんな僕でも、僕が不自由の無いように育ててくれた命の恩人のような先生の言うことであるからきっとそうなのだろうと思っていた。
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