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    Copic_V91

    @Copic_V91のらくがき置場です。

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    ・視点が章ごとに変わるため、読みずらいと感じる方が居らっしゃるかもしれません💦(一人称を ⏳=ぼく 📮=僕 としてあります(はず))
    ・章ごとに小分けにして投稿します。
    ・誤字脱字が含まれる可能性があります。

    綿毛の君と傘帽子の君⑧第8章

    木々の隙間から朝日が顔を覗かせた頃、ぼくたちは 丁度、石造りの階段の半分を登り終えたところだった。

    ぼくの身長では、1つの段差が高い。

    一段一段を兎が跳ねるみたいに登ったら、頑張って空気を取り込もうとする肺が痛む。

    息を切らしながら登り続けると、数段上に
    ぼくの背の数倍は有りそうな朱色の鳥居が、そびえ立っていた。

    神社だ。

    その鳥居の内には、二体の狛犬が並んでいた。

    ぼくは、狛犬たちに目が釘付けになった。

    向かって左側の狛犬の方は 苔むし、彼の勇ましいだろう表情が 隠れてしまっているのに対して、

    右側の方の狛犬は、雨風で多少摩耗してはいるが、その逞しい牙や凛々しい瞳は健在であった。

    「ねぇビクター、なんで片方だけ掃除してもらえていないんだ?」

    何故か その事が気にかかった。

    『もう、そこには誰も居ないので』

    左の狛犬を眺めて 悲しそうな笑いを漏らす横顔に、ぼくは聞いてはいけないことを 聞いてしまったのだと悟った。

    咄嗟に、早く家で休みたいと、見え透いた嘘をつき、ビクターの服の袖を引く。

    焦ったあまりに、力加減を間違えてしまったようで、ビクターが体勢を崩してしまう。

    慌てて袖を引く手を緩めたことで、怪我には繋がらなかったけれど、申し訳なさが残り、僕の足取りを、更に重くさせた。

    息を切らしながら、もう半分の階段を登りきると、そこには どっしりと構え、歴史を感じさせる本殿があった。

    中央の開き戸の上には、大蛇のようなしめ縄がかけられている。

    ビクターは開き戸を開け、ぼくに中へ入るように促した。

    ここが、ぼくたちの帰るべき場所なんだろう。

    ぼくは目が覚めてから可笑しいんだ。

    いろんなことを忘れちゃってる気がする。

    そんな感覚を振り払うように、頭を振り、本殿の中へ足を踏み入れた。

    お社の中は、外装とは異なり、つい最近改築されたような 様子だった。

    まだ、心落ち着く 木の香りが残っている。

    前を歩く2人は、終わりの見えない木張りの廊下を ぐんぐんと進んでいく。

    ぼくの方はというと、落ち着きなく 辺りを見回しながら、よたよたと進んでいた。

    先を歩く二人が、突き当たりの部屋の前で止まったに、横ばかり見ていたぼくは気付けずに、そのままビクターの背中に顔面を強打した。

    「いてっ」

    鼻先がじんじんと痛むことと、よそ見をしていてぶつかってしまった恥ずかしさから、僕は手で顔を覆って隠した。

    開かれた襖の中の空間は簡素なものであったが、所々に配置された装飾品が上品に纏まっていて、風情があった。

    そして その部屋の中心には、一組の布団が用意されている。

    ウィックが 我先にと 布団に潜っていくのに次いで、ビクターも布団の中へ入っていた。

    ぼくが案山子のようにつっ立っていると、ウィックが こっちにおいでよ、とでも言いたげに、布団からひょっこり顔を出す。

    それでも尚 躊躇っていると、今度はビクターが掛け布団を縦に開き、彼の横をぽんぽんと叩いた。

    気恥しさはあったが、それに区切りをつけ、僕も、布団に飛び込むように滑り込んだ。

    三人で使うにはやはり小さ過ぎて、お互いの肩や足が、コツりと当たってしまう。

    仕方のない事だと分かってはいたが、実際そうなってしまうと 気にかかる。

    ぼくはできる限り身体を縮こませようとした。

    でも、ビクターの腕が それを許さなかった。

    大人の腕が、脇の間に入り込み 持ち上げ、向かい合わせになるように ぼくを横たわらせた。

    その隙間に、ウィックが すっぽりと丸まり収まる。

    湯たんぽのように暖かかった。

    『これなら狭くないですね』

    そう言って微笑むビクターの笑顔が、誰かに似ているような気がした。

    誰だっただろうか、と考えている内にぼくは夢の中へと落ちていた。
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