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    DdCLvzSYBoJ8tY7

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    スズメ虫さんがタツ☆オトシゴネタを書いてくださるときいてハイテンションで書き上げました。

     世界は割と「そんなことで?」というモノや事象で溢れている。それは時に、予期せぬ事態を運んでくる。
     そして、多分だがこの物語の一番初めは道満が生まれ変わって10年経つ頃、初詣で顔見知りの烏と出会った事から始まったはずだ。
     わざと家族からはぐれた道満はその烏こと鬼一と神社の空いている処まで移動した。二人はしばらく話していると共通の知り合いである安倍晴明の話になった。最初は「今生は何処に産まれるか」や「昔は遅咲きと言われたが今生は神童ではないか」や「今生は道満の方が歳上」等といった話だったが、次第に「晴明が人以外なら」や「鳥かもしれない」等の話になっていった。
     そして、決定的なやり取りが繰り広げられる。
    「海の生き物なら人間に食べられそうだなぁ!」
    「んんん!晴明めは人に食べられたり等されませぬ!人から敬われる……そう!ドラゴンです。きっと海龍(シー・ドラゴン)に生まれ変わっておりまする!」
     眼を輝かせながら神話のドラゴンを想い描き、口にした言葉だった。この時、誓って道満はシードラゴンという海の生き物がいるとは知らなかった。それは軽く相づちを打っていた鬼一もだ。
     しかし、軽口の場所が悪かった。偶然、一息ついてたその神社の神様がその話を聞いていた。偶然、その神様は安倍晴明と昔、知り合いだった。偶然、神様は晴明から道満の事を聞かされていた。偶然、神様は安倍晴明の生まれ変わり先について相談を受けていた。
     結果として、安倍晴明の転生先は予想外な事になった。

     パチンと急に暗がりから目が覚めた晴明は自分が生まれ落ちた事を知覚した。
     それと同時に謎の浮遊感と目の前に広がる奇妙な光景に首をかしげた。まるで水中に居るかのような……そこまで考えてた晴明は己が動かしてる部位が可笑しいことに気付いた。指ではない。自分は何を必死に動かしている?っと自問自答した晴明の目の前に奇妙な形の魚が映った。そう、魚だろう。同じ形をした魚が泳いでいる。後ろを振り向けばその魚を大きくしたデカイ魚がその魚を産んでいた。ヒヤリと臓腑が冷えた。まさか……?目を動かすと自身の体が目に入る。他の魚と同じ形をしていた。
     なぜ?なぜ?疑問が溢れ出す晴明の耳にくぐもった人の声が聞こえた。「やった!シー・ドラゴンの子供が生まれた!」信じたくなかった晴明は信じざるおえなくなった。
     自分は、シー・ドラゴンという魚に転生したのだと。

     それでも晴明は割と楽観視していた。そのうち道満が飼育員にでもなり、自分と運命的な出会いをするのだろうと。
     その頃、道満はまだ12才だった。シー・ドラゴンの寿命は大体7年だということも道満が12才だということも晴明はまだ知らない。

     一年目、何時までも現れない道満に、しかしまだ焦るときではないです。と晴明は水槽を漂っていた。兄弟の数が減っていたのはそれなりに寂しいと思っていた。
     道満は13才になり、少し大きめの制服にはにかんでいた。

     二年目、晴明は静かに焦っていた。死んでいく兄妹達に人の世も魚の世も変わらぬのかも知れぬと考えながら道満を待った。そして、大人として成熟したせいか雌が卵を産み付けようとしてくるので晴明は全力で回避し続ける日々を過ごしていた。
     道満は14才になり、あっという間に小さくなった制服を名残惜しげに学校へ寄付した。

     三年目、晴明は割と本格的に焦っていた。自分を産んだ?父親が死んだのだ。「水族館に来て六年だから寿命だろう」と聞こえた声に初めて自分の寿命がそのぐらいだと知った。まぁそんなものだろうと楽観は出来なかった。自身が死んだ後、また生まれ変わる保証なんて何処にもないからだ。
     道満は15才になった。修学旅行で京都へ行き、晴明神社へ足を向けた。

     四年目、晴明は地道に術を磨いていた。しかし、神秘が薄くなった現代で特別な生き物でもなくタツノオトシゴだ。せいぜいがちょっと病気に強くなるとかその程度だった。そして、飼育員達の切なるネガイヲ無視して決して卵は持たなかった。
     道満は16才になり、希望した高校に入学した。きっと晴明は自分よりも更に高みにいると信じて。

     五年目、晴明はいよいよもって焦ってきた。ちょっと大袈裟に泳いでみたり、他の個体と違いますよアピールも増えたがあまり話題にはならず、来なくて良い人間の目に曝されるストレスに耐えていた。
     道満は17才になった。思ったよりも進まない術の鍛練に、晴明は更に上にいるはずだと鍛練を怠ることはなかった。

     六年目、晴明は今生では会えないのかも知れないと思い始めていた。鍛練により他の個体よりも元気だがそれだけだ。そもそも道満が今の自分を見ても幻滅するだけだろう。言い聞かせるように何度も何度も見たくない道満の幻滅した顔を想像した。
     道満は18才になり、周りから反対されるが寺に修行へいくと聞かなかった。

     七年目、晴明は兄妹達が死ぬのを見ていた。焦燥感と諦めが同時に襲ってくる。雀の涙もない力で行使出来るのは精々延命程度だろう。延命したとして、何時までこうしている?延命したとして、この後はどうなる?それでも晴明はなけなしの力で若い体を維持する。それと同時にこの水槽の中で死ぬのだと覚悟をした。幻滅した道満の顔を見なくてすんだではないか。何度も何度も晴明はそう考えては、胸が締め付けられた。自分が何故延命の術を施したのか解らないまま。
     道満は19歳になった。皆が途中で諦めると思った体験修行で「……こんなに楽でいいのでしょうか」と戸惑いながら師匠へ発言していた。

     八年目、ほとんどの兄妹達が死に、自分と残り少ない兄妹達を晴明はぼんやりと見ていた。繁殖に成功した個体もいた様だが晴明にとってはどうでも良かった。来ないで欲しい。見ないで欲しいと思いつつ、来る日も来る日も来場客を眺めていた。きっと、きっと自分を見れば気付いてくれるあの子の顔を忘れそうだと悲しくなった。
     道満は20歳になり、やはり自分は寺に修行へ出ると宣言した。周りも少しづつ諦めがついてきていた。この頃になれば、かなりの術が使えるようになっていた。勿論、現代人としてはと枕詞がつくが。

     九年目、兄妹は既に晴明一人となっていた。飼育員は最長記録だと日々の入念な観察を怠らなかった。それが更に晴明にとってはストレスだった。放っておいて欲しかった。何も出来ず水槽の中で外を見るしか出来ない自分が歯痒かった。前世、あの子もこんなに歯痒い想いをしていたのかと思うと、やるせない思いで一杯になった。
     道満の成人式。晴れ着に身を包んだ道満はあっちだこっちだと連れ回されていた。うんざりした道満が静かなところに行きたいと言えば、何故か水族館へ行こうという話になった。面倒になった道満はなすがまま水族館に連行された。

     道満は信じられない気持ちで一杯だった。あの水槽にいるのは、まさか、いやしかし、アヤツを自分が間違うはずはない。周りを無視して一目散に水槽へと向かう。
    「貴方!こんなところで何してるんです?!」
     視界一杯に道満が現れた。色々と考えていた筈なのに、晴明の頭は真っ白になった。そして、気付いたら水槽に体当たりをしていた。

     様子の可笑しい晴明に飼育員まで駆け付けて大騒ぎになった。道満が駆け寄ってから可笑しくなった為、急いで道満は水槽から引き離されたが晴明はその程度では止まらなかった。水槽から出して落ち着かせようとしても暴れて手がつけられず、このままでは死んでしまうと飼育員が慌て出した頃、周りを振り切って再び近付いた道満が水槽に手を当てる。その手に大人しくなった晴明が水槽ごしに寄り添った。
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    DdCLvzSYBoJ8tY7

    DOODLE遅くなってしまった結月さんへの誕生日プレゼントになります。(本当に遅い)
    「道に振り向いてもらおうと必死な道にベタ惚れ最優と、別に現時点で既にベタ惚れな道の甘い晴道」でしたが、甘い晴道が書けなくて謎の仕上がりになりました。
    お誕生日おめでとうございます!という気持ちだけはふんだんに込めたので許されたいです。
     安倍晴明という男は、恋に落ちるという表現が理解できない男だった。
     それは単純に恋をした事がないという事でもあり、恋をしたいとも思った事がなかったのだ。自分と他人の感覚が違うと気付いてはいたが、問題ないと高校三年生になっても恋人も作らず過ごしていたし、恋に身を焦がす人間を何処か物語を見ている感覚で眺めていた。興味本位で恋をしてみたいと思った事もあったが次の日にはコロリと忘れる程度の願望だった。
     そんな晴明は友人に「恋はどうするのか。」と興味本位で聞くのは至極当然の事だったし、恋に浮かされた友人は「まさしく、落ちるという表現がピッタリだ!」と答えるのも至極当然だった。

    「転校生の蘆屋道満だ。」
     担任の声は聞こえたが、晴明は全く転校生を見ていなかった。見た処で面白味も何もないからだ。せいぜい思った事は、この時期に転校してくるなんて大変だな程度だった。
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