殊塗同帰「ああ、あなたですか。はい? ええ、急に何ですか?」
社長室で資料を確認している戴天に電話がかかってきた。雨竜はそわそわしたものを感じながら戴天を見る。いかにも不機嫌という口調ではあるものの、どことなく声が明るい。親しい相手なのだろうか。誰なのか気にしながら耳を澄ましていると、トン、と指で机を叩く音がした。
「いえ、午後は……しつこいですね。話は……ッ」
何か頭痛を堪えるような顔で戴天がうつむく。
「雨竜君、午後、中央地区にいく用事がありましたね?」
声からしてただの確認だ。雨竜は開いていたスケジュールを確認する。
「はい、商談予定は、14時から15時半まで、その後本社に戻って会議、開始時間は16時半になります」
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