SEXしないと出られない部屋僕、下平鉋は困惑していた。
気づけば窓のない白い密室の部屋の中にいた。
しかも、幼馴染で同性の恋人、羽座川扇くんも一緒に閉じ込められていた。
「あ、なんか書いてあるぜ?SEXしないと出られない部屋?なんだこりゃ?」
「え、そんな!」
下平の顔が赤く染まる。まだ2人は身体を重ねたことがなかった。羞恥心から扇くんがうまく見れない。
しかし扇くんのほうをちらっと見ると、顔色一つ変えていないようだった。
(自信なくすなぁ……)
少し残念に思いながらも下平は再びその紙を見た。そこにはこう書かれていた。
"あなたたちは恋人ですか?"と。
「だからなんなんだよこれ」
イラついた声でそう言ったあと、彼はもう一度声を出した。すると、
『はい』と答えた声に合わせて壁の一部がスライドし、別の文字が現れたのだ! "ではここにキスをしてください。制限時間は10秒です"という文章とともに、
「ってかこの人誰だよ!!」
彼のツッコミと同時にまた壁に吸い込まれていった。
2人が閉じこめられていたのと同じ部屋に1人の眼鏡をかけた少女がいた。彼女が言うにはここはセックスしないと出られない部屋の中らしい。彼女の説明が終わると同時に先程と同じように文字が現れる。
「じゃあさっさと終わらせよーぜ、おーいしもへー、俺男とか抱いたことねーけど大丈夫かな」
彼がそういうことを言うとは思ってなかったのか下平の目は大きく開かれた。
そして、しばらくしたあと意を決したように口を開いた。
「ぼ、僕もないよ……でも多分大丈夫だと思う……」
「そっか〜まあお前かわいいもんな!……お前のこと好きかもしんねぇわ」
「え!?」
思わず変な声が出るほど驚いた顔をする下平を見て彼は笑って誤魔化した。(こういうところが好きなんだよね…….。ああもうどうしよう、すごくドキドキしてきた///)
下平は彼を意識してしまうあまり話の内容は全く入ってきていなかったのだがそれはさておき、時間は刻一刻と過ぎていく。
扇君が優しく頬をなでる。
「初めてだろ?優しくする」
「……扇君」
僕の顔はトマトみたいに赤くなっている。
恥ずかしくて死にそうだ……。だがいつまでもこうしてはいられないと思い僕は覚悟を決めた。
僕のファーストキスはこの人に捧げます!! 目をつぶり唇を差し出すような体勢になりながら近づいてくる彼に身を委ねた瞬間、ガタンと音がしてドアの方へと引っ張られる感覚に襲われた。目の前にいたはずの彼がいないことに不安を覚えつつも恐る恐る目を開ける。そこにあったのはまぎれもなく現実の世界であった。……夢オチである。
***
目が覚めるといつも通りの自分のベッドの上に横になっていた。時刻を見ると朝の8時ちょうどを指しているところだった。今日から学校だという現実に引き戻されるかのように登校の準備をする。支度を整えている間ずっと昨日見た夢のことが頭に残っていた。思い出そうとするだけで胸がきゅんとするあの空間のことを思い返しているうちに玄関についた。扉を開いて外に出ると後ろから聞き慣れた声がかかった。
振り返った先にいたのはもちろん幼馴染みの羽座川扇くんで、笑顔を浮かべていた。
彼はなぜか制服姿ではなく私服姿でそこに立っていたのだった。これが彼との下平の関係の始まりの話となるであろうことを、この時の僕らはまだ知る由もなかった─── Fin 〜あとがき〜 10万字超えてる割にちまちました内容になってしまってすみません;^_^A次回からやっとR18指定に入りますm(__)m 次章からは少し雰囲気を変えていこうと思っています!引き続きよろしくお願いします☆ ちなみに次のターゲットは主人公ですw