額に感じたくすぐったさで目を覚ました。
「お、起きた。おはよ」
「……おはよ木戸。何してんの」
「いや、やっぱ花井の髪綺麗だなーと思って」
いいながらも木戸は、俺の前髪をすくいあげてみたり、かきわけてみたりしている。
どうやらやめる気はないらしい。
「ねえ、前髪ばっかりくすぐったいんだけど」
「んー、だってこうすると花井の顔がよく見えるからさ」
「……赤ずきんの狼かよ」
「はは、食べちまうから間違ってないんじゃね」
笑いながら昨日つけられた嚙み跡をゆるくなぞってくる。朝からそういうことをしないでほしい。お、ちょっと顔赤くなった?なんて言うから軽く足を蹴っ飛ばしてやった。
「それより先に言う事があるでしょ」
「ごめんついな。誕生日おめでとう花井」
「ん、ありがと。……でもお祝い遅かった分、一個誕プレ増やして」
「えっ何そのシステム、金欠だからお手柔らかに頼みます?」
無茶ぶりしてみたけど聞き入れてくれるらしい。さすが木戸、優しい。
「俺にも木戸の顔よく見せて」
「えっもちろんいいけど……普通に今もサングラス取ってるじゃん?」
頭にはてなを浮かべながらもじっと見つめてくれる。少しだけ色素が薄い瞳をのぞきこめば、その中に俺が映り込む。前髪をわけられたままだから、大分甘い顔をしているのが自分でもわかって恥ずかしい。