現パロジャンハン④「……なんで」
なんで、ではない。ハンジは自分で自分の言葉にツッコミを入れる。だが、むしろジャンの言葉は自分にすれば助け舟ではないかと思いつつハンジはそう言わずにいられなかった。
「……俺、慰め合うって言っただけでセックスしようとまでは言ってねーなって」
いや、慰め合うって言葉にはおそらく一般的にはセックスも含まれているのでは?とハンジは思ったが、ベッドの上に座って黙ってジャンの話を聞いた。
「うーん、違います、それは無理があるな」
座ったジャンは髪の毛をガシガシ掻いた。嘘がごまかせなくなった子供みたいに。前髪があるジャンはいつもより子供っぽいなとハンジは少し冷静になって思った。
「……遊びとかじゃなくてホントに欲しくなったんですよね、ハンジさんが」
正直ハンマーで殴られたくらいのダメージをハンジは感じた。悪くない相手からの不意打ち好意攻撃というのを過去に受けたことのないハンジのこの攻撃に対する免疫はゼロだった。
「なので、早くあのオッサンとケリをつけてきてください。……って聞いてる? おーい?」
ジャンがハンジの目の前で掌を左右に振る。ハンジは呆然としながら答えた。
「ジャン。私は今謎のダメージをくらって非常に混乱している。ジャンの言ったことはノリでセックスをする仲になろうとしていたように思える私たちに於いて異例に思える。しかもセックスに至る途中で中断までしてその話をした。大事なミッションをポッシブルせず。君の君にも可哀想なくらいだと思う」
ジャンは自分の股間に視線を落とした。確かに可哀想な感じではあった。
「それはあの、ジャンは少なからず私に真剣に好意のような何かを抱いているとかいないとかそういう感じで変化したと受け取ってしまいそうなんだけど、そう受け取ってしまっていいのか否かぜひご教示願いたい」
股間から目線をハンジに向け直し、ジャンは言った。
「何言ってるんですか。もともと好意はありましたけど」
「な、もともとって」
「もともとですよ。電車で助けたあの日から」
ハンジはますます混乱して返した。
「君が好きなのはミカサじゃ」
「いや、そりゃそうだったんですけど。でも人の気持ちってそんなもんでしょ。白黒はっきりしてなくてもいいじゃないですか。ただの飲み友?飲み上司?なんでもいーや、ハンジさんに対する好意が急に今はこれからずっと一緒にいたいっていう、まぁそれはセックスもしてーって気持ちももちろん含んでんだけども、そういう気持ちに変わったっていいっしょ。別に誰にも文句言われる筋合いねーし。俺の気持ちなんだから」
よくわかるようなわからないような。でもやたらとジャンが真っ直ぐに申し開くのでハンジも「これが若さか…眩…」となり異論を唱えることも出来ず、半ば丸め込まれたように「そうですか」とだけ言った。
「まあ、いーから、とりあえず一緒に寝よ。ハンジさん」
下着だけとりあえず履いたジャンはベッドに寝て、とりあえず下着だけをつけたハンジを引っ張った。ジャンがハンジを抱きかかえる。ハンジはすっぽりと腕と胸の中におさまる。ジャストフィット、シンデレラフィット的に。
ジャンがハンジの頭のてっぺんに顎をくっつける。「一緒の匂いっすねぇ、俺ら」とか言いながら。そりゃそうだ、同じシャンプーで髪を洗ったんだからとハンジは思う。しかし一歩踏み込んできたこの男はいちいちとにかくペットみがすごい。オキシトシンが出まくってしまう。
「うーちんこ痛ぇ」
確かにハンジの下腹部のあたりに異様に固いモノが当たっている。さっきベッドの上で座って話していたときは多少勢いが衰えていたものの、今はまたアゲアゲに盛り上がっているような気がする。多分、いや絶対。ハンジはいたたまれなくなった。ジャンに、というよりジャンの所有物に。ハンジは思わずそれに再び触れた。
「うっっっ何!?」
唐突に下半身への刺激を感じて、ジャンは声を上げた。ハンジは布団の中に向かって話しかける。
「ごめんよジャンのジャン」
「なっ何言ってるんですか!?」
「君の君に謝ってるんだよ。あまりにもいたたまれないから、早急に何とかした方がいい。これじゃ寝れないだろ」
「はあ!? そ、それはどういう」
「私がやる。手とか、口とかで」
「嘘だろ……」
「私だけやられっぱなしじゃないか。多少お返しないと」
「お返しとかそういう問題でもないと思いますけど、あの、マジで俺断りませんよ? そこまでいい奴じゃねーぞ!?」
「臨むところだよ。でもやらない。それが約束だ」
「……は~い」
ずれている。ずっとずれている。今まで出会った女の誰とも違う。違いすぎる。けど、そういうとこがこの友達兼上司の可愛いところなのだ。だから手に入れるためにはちゃんとするべきだと思った。しかしそこらの女と発想が違いすぎる、でもそんなとこも好きかなって思っ………とかぐるぐる思っているうちに、ジャンの折角履いたばかりのパンツは剥がれた。真剣そのもののハンジの表情に気圧されて、もうどうにでもなれとジャンは陸に打ち上げられた魚のようにベッドに横になった。その瞬間ハンジに唇を塞がれて、ジャンは息が止まりそうになった。
自分が仕掛けたときとは違い、自覚的に蠢く年上の女の舌に応える。甘く不埒な舌。いやらしく自分の下半身を刺激するハンジの長い細い指。えっ何でこんな豹変するわけ? やべぇんだけど、ガチガチなるんだけど。
ハンジが言った。目が据わっている。
「私がさっきからどれだけ大変だったか、君もわかってくれるといいんだけど」