あじさいとひまわり 青鈍の重苦しい空の下、湿度だけがじりじりと上がっていく。うっすらと搔いた汗が蒸発せずに身体を湿らせていき、まったく気持ちがよくない日だ。
しのぶは職務に支障がなければ、オフィスが山の奥だろうが駅から三〇分掛かろうが海の側の廃工場跡だろうがまったく構わないが、夏だけはこの分署の立地を恨めしく思う。それでなくても精密機械であるレイバーが傷みやすいことに加えて、東京湾の潮風はお世辞にも心地よいとはいえないものだからだ。後者はただの愚痴だが、機材については切実な話で、それでなくても金食い虫と言われて予算が削減されている二課において、余計な出費は少しでも抑えたい。夏のサビは二課一番の敵だ。
そういえばそろそろ予算案が提示される時期である。去年は「なんなら私と後藤で折衝にいきますがよろしいか」と提案することで福島の尻を叩いて、管理職で頭を絞ってどうにか現状維持まで持ち込んだのだが、新型機の導入が間近な今年は果たしてどうなるのだろうか。
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