モノクロレコード シアタールームに満ちる、淡々とした声を聞いている。大好きなはずの声は普段とは違ってボソボソと覇気がなく濁っていて、蓮すら咲かない泥のようだ。こんな声が目の前の男からこぼれていいはずがない。なんだか現実味のない、悪夢のような時間だった。
鋭心先輩の口からは際限なく罪状が零れ落ちる。いま、俺は神父で鋭心先輩は裁かれることのなかった罪人だった。彼の告白する罪のひとつひとつがどんな罪に問われるのかは知らないけれど、その積み重ねの先にこんなどうしようもない人間が生まれてしまったのだということが悲しいほどにわかってしまう、そういう声だ。
正直、こんな役を鋭心先輩に演じてほしくはなかった。鋭心先輩が次の仕事で演じるのは罪を犯したのに罰を与えられなかった人間だ。キーパーソンでもなんでもない、ただ世界の不条理を示すだけの端役で、やることは道端を歩くこと、懺悔室でたっぷり2分をかけて罪を吐露すること、そして何を守るでもなく車に轢かれることだけ。未来すら描かれることのない、亡霊のような役だ。
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