このゴリラは実に阿呆である。
この俺を散々好き放題させてやってるのに、カーラに嫉妬を抱くなんて。
「…ふん、間抜け面め」
隣ですぅすぅと寝息を立てる間抜けゴリラの鼻をぎゅっと摘んでやる。
「んがっ」
間抜けゴリラに相応しい間抜けな声を出すが虎次郎は起きない。
「……………」
深い眠りに落ちていることを確認した薫はそっと眠る虎次郎の耳に顔を寄せた。
そして、世界で一番愛しい男に向けて桜色の薄い唇を開いた。
「…カーロ」
カーラに呼びかける時よりも一等優しい顔で、一等愛しさを滲ませた顔で。
でも、そんな顔をこの馬鹿には見せてやらない。
カーラに嫉妬するような馬鹿なゴリラには見せてやらない。
「馬鹿だな、虎次郎」
眠る虎次郎がふにゃりと微笑んだ。
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