2000年ぶりの両片想い優しい年下の夫・フロックとこの春小学校に上がる息子と共に幸せな生活を送っていた言語聴覚士のハンジは、健康診断で肝臓の数値に異常が見つかり、精密検査の結果、非常に珍しく手術が困難な部位に肝臓癌が出来ていることが判明する。愛する妻のため、医学書や関連本を読み漁り執刀できる医師を探し回るフロックは、ちょうど同じ癌の執刀のために帰国していたパラディ医科大学教授のリヴァイの存在を知る。妻の手術を懇願するフロックをすげなくあしらうリヴァイだったが、執刀した患者の容体が急変し死亡したことで、自身の名誉を守るためにハンジの執刀を請け負う。

執刀医との面会のために来院したハンジは、リヴァイの顔を見るなり驚き、思わずその場を走り去ってしまう。切ない両片想いの前世の記憶が蘇ったのだ。しかし既婚者である今、その内なる恋心を明かしたくない。リヴァイだけには切られたくない、心の底からそう願ったハンジだったが、フロックと息子のことを考え手術を受けようと決心する。手術は無事成功し、順調に回復し退院したハンジは今まで通りの生活を始め、早々に仕事に復帰するが、胸にかすかな痛みを感じる。リヴァイも記憶を取り戻しており、術後の検診の後ハンジをランチに誘うが、「今、幸せなんだな」との問いにうなずくハンジを見てパラディへ戻る決心がつく。

家族に心配をかけまいと痛みを我慢するハンジだったが、再発の恐怖が頭をよぎる。仕事中、高熱と痛みに耐えられなくなったハンジは思わずリヴァイに電話で助けを求めてしまう。パラディへ向かう飛行機に搭乗直前だったリヴァイは急遽病院へ戻りハンジに処置を施すが、ベッドに空きがなくリヴァイが自分の執務室であった居室を提供する。同じ頃、フロックは前世の記憶を取り戻し、ハンジとリヴァイが前世で固い絆で結ばれていたことも思い出していた。ハンジは本当に思い出していないのか、もしかしたら思い出して隠しているのかと2人の仲を勘繰ってしまう。

リヴァイが自分のためにパラディでのキャリアを棒に振ろうとしていることを知ったハンジは、リヴァイに別れを告げパラディへ戻るよう話すが、押しとどめていた思いが湧きあがり、抱き合いキスを交わしてしまう。逃げるように帰宅したハンジはフロックへ後ろめたさを感じながらも、リヴァイからの電話を待っていた。数日後、ハンジはリヴァイとオディハのオーベルジュで会い、前世でリヴァイがハンジを愛していたこと、死なせたくないと思っていたことを知る。真実を知ったハンジはリヴァイへの思いをより一層強くするが、家族を思い必死にこらえる。そんなハンジの幸せを壊したくないと、リヴァイはパラディへ戻る決心がつく。その日の夜、リヴァイからの別れのメールを受け取ったハンジは、そのメールと連絡先を涙とともにそっと削除し、再び家族との穏やかな生活に戻るのだった。

ハンジの手術から1年後、パラディで恩師のピクシスと電話中だったリヴァイは脳出血で突然倒れる。後遺症で失語症を患ったリヴァイは、ピクシスの娘で元妻のペトラに連れられて帰国し、患者としてハンジと再会する。命を救ってくれたリヴァイを次は自分が救いたい、とフロックにも事情を話し、言語聴覚士として接することを自分に誓い、リヴァイのリハビリを開始する。利便性を考えて、リヴァイはハンジの幼なじみエルヴィンの家からリハビリに通うことになるが、思うように言葉が出てこないもどかしさと、後輩の医師たちの屈辱的な言葉に悲観。街をさまよい歩き、ハンジとの思い出の場所であるオディハの港へ行く。前世でハンジと過ごした思い出が胸にこみ上げ、迎えに来たハンジを指差し、昔のように「クソメガネ」と呼ぶ。その日の夜、エルヴィンと酒を酌み交わしていたリヴァイは、酔ったエルヴィンの口から、ハンジが家族とリヴァイの間で心揺れていたのを必死で抑えていたことを知り、ハンジへの申し訳なさから姿を消してしまう。リヴァイの行方を探してあの港へ行ったハンジは、つたない言葉で必死に詫びるリヴァイに前世の気持ちを伝え、「あの時に戻れたら…」とつぶやき、一夜を共にしてしまう。寝ずにハンジの帰りを待っていたフロックは、エルヴィンや近所の仲間と一緒にリヴァイを見つけたとハンジから聞くが、仲間に確認しそれが嘘だと分かってしまう。

リヴァイから絵文字だけのメールを受け取ったハンジは港へ向かい、家族のためにももう会えないと告げ、互いに別れを惜しんでいると、そこへフロックが現れる。2人が隠れて逢っていた事実に激昂し、ハンジを家へ連れ帰ったフロックは、冷静さを失わないようにしながら「自分と息子を選んでくれたならそれでいい」と告げるが、ハンジは嘘をつけなかった。「フロックのこと大好きだよ」と泣いてすがるが、フロックは怒りのあまりハンジがPTAのために貯めていたベルマークを蹴散らし、息子にはもう二度と会わせないと宣告し家を追い出してしまう。

その後、離婚し1人で生活していたハンジを、エルヴィンから居場所を聞いたリヴァイが迎えに来る。拒否するハンジだったが、「もう離さない」と抱きしめられ、一緒に暮らすようになる。それから3年後、ハンジは言語聴覚士に復帰し、リヴァイは小学校の校医などをして幸せに暮らしていた。しかし、手術から5年目の検診でハンジに癌が再発していることが判明する。投薬治療を薦めるリヴァイの態度から、ハンジは自分の病状が重く余命が短いことを悟り、リヴァイはハンジが最期の時を家族と過ごせるようフロックに取り計らってもらうのだった。

最期の1日をフロックに迎え入れられ、愛しい息子と過ごし、翌朝、ハンジは息を引き取る。

おわり