冬の日、まどろみしとしとと雨垂れの落ちる音がする。ふと窓を見ると、垂れた水滴が曲がりくねった道を何本も作っていた。
明け方まで降っていた雪は気づかないうちに雨に変わったようだった。わずかに積もっていた分も、そのうち溶けて土に吸われていくだろう。積もったままだと木々の手入れも大掛かりになるので少し安堵する。
喉の乾きを覚えて身体を起こすと、指の触れた先が身じろいだ。
「…シノ……」
「どうした、ヒース」
迷子のようにぼんやりと名前を呼ばれる。夢の中にいるのだろうか。朝に弱いオレの主君は重たげな目蓋をかすかにふるわせる。羽根のような睫毛が一緒に揺れる。
まだ外も暗い。
寝てていいぞ、とあやすように声を掛けると、ん〜……とむずかるようにむにゃむにゃ唇を動かした。心臓を羽ぼうきでくすぐられているような気持ちになる。幼い頃一緒に過ごした厄災の夜のことを思い出す。
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