むやみな賭けはやめましょう「えーと……やっぱ……あー……お前の事好きだわ……? 例えば……えーと……言わないとだめか?」
「駄目です。賭けに負けたのだから守ってもらいますよ」
午後のカフェに男二人。横向きにしたスマートフォン片手にマサキはどうやってこの場を切り抜けるか逡巡していた。
「うー……」
「どうしました? 早くしないと他の客が座れなくて困ってしまいますよ」
チェシャ猫のような、と表現するにはいささか気品がありすぎるニヤニヤ笑いを浮かべながらシュウは一口紅茶をすすった。
事の初めはほんの二十分ほど前。新商品のフラペチーノを飲みに来たマサキはたまたま居合わせたシュウと相席になった。
初めは口数は少なくとも他愛のない話をしていたが、マサキの一言が空気をガラリと変えた。
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