一緒にお風呂入ってる北スバ「あ」
すっとんきょうな声が狹くもないが二人で使うには広いとも言い難い浴室に響いた。
「どうした、明星」
湯船に肩まで浸かると爪先まで全身に湯のあたたかさが行き渡った。月並な表現ではあるが、生き返る心地がするとはよく言ったものである。
「あ〜……。シャンプー切れてるの忘れてた」
今日買って帰ろうと思ってたのに、と続ける。
「予備の詰め替えもないのか」
「この間買いに行ったときちょうど気になってたやつが売り切れてたんだよね〜」
「全くおまえは……。消耗品はインターネットの定期便に登録しておけといつも言っているだろう」
「え〜、だってしょっちゅういろんなのが出てくるんだよ? いろいろ試してみたくない?」
「仕事でもらう試供品で十分じゃないか?」
「むぅ。ホッケ〜は貰うかもしれないけどさ、俺どっちかというとワックスばっかり貰うんだよね。使ってみてレビュー、みたいなお仕事もそういうのばっかり」
「……たしかに、そういう印象はあるな」
「でしょ?」
首を傾げた拍子に、その柔らかな毛先から落ちた水滴が、スバルの首筋を伝っていった。
「あ、そうだ。ホッケ〜の借りてもいい?」
この状況では至極まっとうな相談ではあったが、北斗は躊躇った。
「……それは、まずいんじゃないのか、いろいろと」
「え?」
それなりの年数この業界にいて、下世話な噂話を耳にしないのは難しい。良からぬ噂が立つことを懸念するのは当然のことだった。
「う〜ん、大丈夫だと思うよ? 明日午前中オフだしさ。ていうかホッケ〜気にしすぎじゃない?」
「どういう意味だ」
「だって一人暮らししてたとき、サリ〜やウッキ〜だってホッケ〜のお家に泊まりに行ったりしてたじゃん。ツアーのときだってシャンプー貸し借りしたりしてたしさ」
言いながら北斗のシャンプーのポンプを押した。