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    きたまお

    @kitamao_aot
    なんでもいいから書いたもの置き場。
    脳直に書いたら見直し一切せずにおいています。

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    きたまお

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    ロッド・レイス巨人のところで久々に合流したエルリ

    ##エルリ
    ##進撃

    夜明けまではまだ相当時間がある。
     普通であれば、せいぜい月の光しか届かない夜中に、地上からの赤い炎が空を焦がす。木々や草地が燃えている。あたりはずっと鼻をつまみたくなる焦げ臭い匂いが充満している。炎にあぶられて生木が割ける音、草が燃えさかるごうとした音が絶え間なくしている。白い煙、黒い煙が一帯を覆っている。
     リヴァイの視線の先では、赤黒い小山のようなものがうごめいている。四肢をつっぱり、先へ先へと進んでいる。地を削りまっすぐ進み、進行方向にあるものはすべて踏み潰している。林も、畑も、農家も、大地すらも巨体の下になり、潰れ、燃えかすになっていく。先ほどから馬車の荷台の上からエレンが声をからして叫んでいるが、効果があるようには思えなかった。
     そもそもリヴァイはエレンが壁外で巨人たちを操ったという現場にはいなかった。戻ってきた調査兵たちの証言をあわせると、どうやらエレンが操ったらしいという結論に達しただけだった。あの、意思もなにもない巨人を操るなどできるのかは疑問だった。本気にしたわけではない。女型の巨人にそれらしい行動があったので、いまはわずかな確率でも試さないわけにはいかなかった。
     ずっとロッド・レイスの巨人とエレンのほうを見ていたが、進行方向の右側に馬の足音を聞いた。顔を向けると暗闇の中からぬっと馬が現れた。巨人の作り出す炎の光が顔を照らす前にリヴァイは気がついた。
    「リヴァイ」
     先に名を呼ばれた。
    「エルヴィンか」
     間違えようもない。
     左腕で馬の手綱を操り、エルヴィンが近づいてくる。赤く照らされた顔を見て、リヴァイは下唇の内側をかんだ。
     エルヴィンの左目のまぶたはひどく腫れていた。青い大きな瞳が垂れたまぶたに覆われて三分の一ほど見えなくなっている。唇の左側が切れて、まだ乾ききっていない傷になっていた。その横に青いあざができている。顔の右側も頬骨と下顎に大きなあざがあった。鼻も多く殴られたのだろう、鼻の穴付近には血のあとがある。
     中央憲兵につかまっていて、取り調べという名の拷問を受けていたのだ。無事なはずはなかった。もうすぐ縛り首になるところだったとも聞いた。その状態から想像した最悪の状態からすると、まだ無事なほうだろう。
     だが、この胸の奥の痛みはなんだ。
     いますぐ、エルヴィンを取り調べた連中を全員捜しだし、こころゆくまでそいつらを殴ったり蹴ったりしたい。エルヴィンに与えた傷と同じ位置に三倍の痛みを与えたい。
    「ずいぶん男前になったじゃねえか」
     エルヴィンは手綱をもったままの手であごをなで、顔をしかめてみせた。
    「痛むのか?」
    「腕を喰われて引きずられることに比べれば、痛くないな」
     リヴァイは馬を操ってもう一頭の馬へ近づく。炎に照らされた顔が歪んだ。馬上のまま、リヴァイは手を伸ばしエルヴィンの胸ぐらをつかんで引き寄せた。
    「おまえを殴っていいのは、俺だけだ」
     言ってすぐに突き放す。エルヴィンの太い眉の眉尻が下がっていた。
     実際にリヴァイがエルヴィンを傷つけたのは、入団したての壁外調査のときだけだ。ブレードをエルヴィンに打ちこもうとして、手のひらを斬った。いまもあの傷はエルヴィンの手に白いすじになって残っている。
     その傷を爪の先でなでるのが行為の合図だ。最中にもリヴァイは何度も傷を強くつかみ、爪を食い込ませ、かみつく。その都度、エルヴィンは痛みにうめき、歓喜の声をもらす。
     エルヴィンを傷つけていいのはリヴァイだけだ。なのに、こいつは不用意にあちらこちらで傷を負ってくる。
    「ああ、リヴァイ。悪かった」
     上の空の謝罪をリヴァイは視線で切って捨てる。
    「この話はまたあとだ。まずは、あの巨人をどうにかする。おまえの意見を聞かねぇとな、団長さんよ」
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    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん2今日の現場も一人で死亡した老人の住まいだった。大きな庭のある戸建ての二階で老人は死んでいた。老人には内縁の妻がいたが、折り悪くその妻は姪と一緒に十日間の海外旅行に出かけていた。家の状況から見て、老人は内縁の妻が旅行にでかけた初日の夜に倒れたようだった。さらに悪いことに、寒がりの老人は自室の暖房を全開にしていた。
     年齢のわりに老人は身体が大きかったようだ。ベッドに残された痕跡でそれを知ることができた。おそらく老人はリヴァイよりも二十センチ以上は背が高い。二階の部屋は天井が傾斜していて、ベッドは天井が低い方の壁にぴたりとくっつけておかれていた。
     リヴァイが最初にやることは、遺体のあった場所に手をあわせることだ。神も仏も信じてはいないが、これだけは行う。手をあわせているあいだはなにも考えていない。一緒に仕事に入ったことのある同僚には経を唱えたり、安らかに、などいうものもいたが、リヴァイは頭をからっぽにしてただ手をあわせる。これはもう習慣だった。
     後輩と一緒に、まずマットレスを外す作業をした。いくらかはまだ生きている虫がいる可能性があるので、殺虫剤を全面に散布する。動くものがなくなったこ 1271

    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん「先輩はどうしてこの仕事についたんですか」
     行きの車の中で無邪気に後輩が聞いてきた。最近入ったこの後輩は、始めは短期アルバイトの大学生だったはずが、気がつけば正社員として登用されていた。なんか、これがオレの天職だって気がついちゃったんですよね、と大声で事務員に話しているのを聞いたことがある。
     リヴァイはウィンカーを一瞬出して隣の車線に割り込みながら、ぼんやりと答えた。
    「別にやりたくてやったわけじゃねえよ。たまたま、クソみたいな伯父が便利屋をやっていて、そのクソが仕事だけ受けて逃げ出した尻拭いであばらやの清掃に入ることになって、そこからまあたまたまだ」
     母の兄である伯父には、昔からいろいろ迷惑をかけられてきた。便利屋の仕事を借金とともに押しつけられたのが、最たるものだった。
     最初から特殊清掃だったわけではない。ゴミ屋敷の片付けなどを行っているうちに、割のいい仕事として特殊清掃ももちかけられた。六月にベッドで死亡して、一週間発見されなかった老人の部屋の清掃だった。遺体はすでに警察が持ち出していたがベッドには遺体のあとが文字通り染みついていた。床や壁にこびりついている虫を片付けると 674

    きたまお

    TRAININGエルリワンライの没軽くブラシをまわすと、面白いように泡が立った。その泡をブラシの先端にとり、リヴァイが無言であごをしゃくった。上を向けということだろう。
     もみあげから下、あごの先に向けてブラシが小さな円を描くように動いていく。なめらかな動きの中で、ブラシと肌の間に泡が立っていくのがわかった。すこしこそばゆく、しかし気持ちがいい。
     カミソリの扱いは慣れたもの、あっというまに泡をぬぐうように刃があてられて、エルヴィンの無精ひげは姿を消した。最後にぬるま湯の入った桶を寄せられ、身体をうつ伏せに倒せと言われた。
    「すすぐくらいは左手だけでも可能だとおもうんだが」
    「おまえにやらせたら、ベッドが水浸しになりそうだ」
     顔をすすぎ終わり、乾いた布で水分を拭き取るまでリヴァイの世話になった。
    「自分であたるよりも、ずっといいな」
     エルヴィンはすべすべになった自分のあごに手を触れる。
    「以前から、おまえのそり残しは気にはなっていた」
     ひげそりの準備は、エルヴィンが目を覚ます前からやっていたらしい。目を開けたらちょうど、至近距離にリヴァイがいて、手にしていた石けんを取り落としそうになっていた。すぐに医師が呼ばれ、 1958

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