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    きたまお

    @kitamao_aot
    なんでもいいから書いたもの置き場。
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    きたまお

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    エルリワンライのお題「にゃんこ」で無理やり急いででっちあげ。

    ##進撃
    ##エルリ

    「ひょっとしてリヴァイは猫なのかもしれない」
     エルヴィンがそう言いだしたのは、夜が明ける直前のことだった。団長がすでに何徹目なのかモブリットは知らない。モブリットは幸いにして、まだ二徹目だ。一昨日の朝、ハンジの実験につきあっていたら爆発が起きて、その破片が頭にぶつかって気絶した。
     その、数時間の安らかな眠りを提供してくれた直属の上司は、立ちあがって頭のてっぺんから奇声を発した。
    「いいねいいね! そうかもしれないよ、あれ実に猫っぽいじゃない。絶対、犬じゃない。あれは猫だよ、猫!」
     ハンジもたぶんエルヴィンに負けず劣らず寝ていないはずだ。この人たちの体力にはほんとついて行けないし、まったくついていきたくないとモブリットは常々思っている。
    「ハンジもそう思うだろう。まず、身のこなしが異様に軽い」
    「わかる。今度さ、立体機動装置着けないで屋上から突き落としてみようよ。どこから落としても、ちゃんと足から着地すると思うよ!」
    「分隊長、人殺しはやめてください!」
     この人は本当にやりかねないから怖い。それに、リヴァイにそんないたずらをしかけようとしたら、落とそうとした側が危険だと思うのだ。
    「それに、異様にきれい好きだ。猫が顔を洗ったら雨、とか言うだろう? でも実際に猫を観察すると、いつでも顔を洗っている。天気とは関係ないんだ。猫は汚れるのをひどく嫌う生きものなんだよ」
    「あー、そういえば猫って決まった場所にうんこして、必ずうめるよね。あれもきれい好きだから」
    「いや、それは糞で自分の場所が見つからないようにだ。それに人間であれば誰でもちゃんとうめると思うよ」
    「そうかな? こないだの壁外でさ——」
    「分隊長、せめて人間の尊厳は失わないでください!」
     モブリットははらはらしながらふたりの会話に割り込む。この人たちはこんなわけのわからないことを話しているのに、ずっと手は休まずに書類を片付けているから恐ろしい。
    「猫はひらひらしたものが好きだな。リヴァイは調査兵団に入ったときから、クラバットをつけていただろう。あれは彼のたっての希望で、わざわざ取り寄せたんだよ」
    「あんなのしていて首が苦しくないかと思うんだけどねー。白い布だと汚れが目立つから、灰色か黒いのにすればいいのに」
    「リヴァイはきみと違って、ちゃんと毎日風呂を使っているんだよ。あと、もうひとつ。リヴァイはタマネギが嫌いなんだよ。知っていたか。猫にタマネギは毒だからな」
    「そういえば、あいついつも食べるの速いのに、たまに食堂で妙にゆっくり食べていることあるね。……ん、なぜかそういうときあなたと一緒じゃない?」
    「リヴァイは私の皿にタマネギを移すんだよ。食べ残したらいけないと思うみたいだな。おかげでいつも私はタマネギ過多のスープを食べる羽目になるんだが」
    「きっと血液さらさらになるよ。なんだかさ、本当にリヴァイは猫なのかもって思い始めた。いや、猫っていうか、にゃんこだね。リヴァイにゃんこ、リヴァイにゃんこだ」
     エルヴィンとハンジは顔を見合わせて、声をあげて笑った。モブリットはそのふたりを見て、非常に頭が痛くなった。
    「おい、黙っていれば、おまえらはぺらぺらとろくでもないことを言いやがって」
     ずっと、大机の反対側で同じく書類を裁いていたリヴァイが笑うふたりをにらみつける。こちらもどれだけ寝ていないのだろう。目の下はいつも以上にどす黒く、眉間には深いしわが刻まれている。目の前に本人がいるのに、このふたりはずっとわけのわからない冗談を言い続けているから恐ろしい。
    「ああ、リヴァイは猫は猫でもキジ猫なんだな。額に模様がある」
    「いるいる、そういう模様のにゃんこ。ボス猫タイプだね」
    「仕事が全部終わったら、私の膝で思うごろごろ言って、私を存分いやしてくれるかい」
    「黙れ。エルヴィン。手だけ動かせ」
     立ちあがって、拳を上げたリヴァイの姿が、背中の毛を逆立てて威嚇するキジ猫に見えて、モブリットは自分も早く寝たいと心の底から思った。
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    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん2今日の現場も一人で死亡した老人の住まいだった。大きな庭のある戸建ての二階で老人は死んでいた。老人には内縁の妻がいたが、折り悪くその妻は姪と一緒に十日間の海外旅行に出かけていた。家の状況から見て、老人は内縁の妻が旅行にでかけた初日の夜に倒れたようだった。さらに悪いことに、寒がりの老人は自室の暖房を全開にしていた。
     年齢のわりに老人は身体が大きかったようだ。ベッドに残された痕跡でそれを知ることができた。おそらく老人はリヴァイよりも二十センチ以上は背が高い。二階の部屋は天井が傾斜していて、ベッドは天井が低い方の壁にぴたりとくっつけておかれていた。
     リヴァイが最初にやることは、遺体のあった場所に手をあわせることだ。神も仏も信じてはいないが、これだけは行う。手をあわせているあいだはなにも考えていない。一緒に仕事に入ったことのある同僚には経を唱えたり、安らかに、などいうものもいたが、リヴァイは頭をからっぽにしてただ手をあわせる。これはもう習慣だった。
     後輩と一緒に、まずマットレスを外す作業をした。いくらかはまだ生きている虫がいる可能性があるので、殺虫剤を全面に散布する。動くものがなくなったこ 1271

    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん「先輩はどうしてこの仕事についたんですか」
     行きの車の中で無邪気に後輩が聞いてきた。最近入ったこの後輩は、始めは短期アルバイトの大学生だったはずが、気がつけば正社員として登用されていた。なんか、これがオレの天職だって気がついちゃったんですよね、と大声で事務員に話しているのを聞いたことがある。
     リヴァイはウィンカーを一瞬出して隣の車線に割り込みながら、ぼんやりと答えた。
    「別にやりたくてやったわけじゃねえよ。たまたま、クソみたいな伯父が便利屋をやっていて、そのクソが仕事だけ受けて逃げ出した尻拭いであばらやの清掃に入ることになって、そこからまあたまたまだ」
     母の兄である伯父には、昔からいろいろ迷惑をかけられてきた。便利屋の仕事を借金とともに押しつけられたのが、最たるものだった。
     最初から特殊清掃だったわけではない。ゴミ屋敷の片付けなどを行っているうちに、割のいい仕事として特殊清掃ももちかけられた。六月にベッドで死亡して、一週間発見されなかった老人の部屋の清掃だった。遺体はすでに警察が持ち出していたがベッドには遺体のあとが文字通り染みついていた。床や壁にこびりついている虫を片付けると 674

    きたまお

    TRAININGエルリワンライの没軽くブラシをまわすと、面白いように泡が立った。その泡をブラシの先端にとり、リヴァイが無言であごをしゃくった。上を向けということだろう。
     もみあげから下、あごの先に向けてブラシが小さな円を描くように動いていく。なめらかな動きの中で、ブラシと肌の間に泡が立っていくのがわかった。すこしこそばゆく、しかし気持ちがいい。
     カミソリの扱いは慣れたもの、あっというまに泡をぬぐうように刃があてられて、エルヴィンの無精ひげは姿を消した。最後にぬるま湯の入った桶を寄せられ、身体をうつ伏せに倒せと言われた。
    「すすぐくらいは左手だけでも可能だとおもうんだが」
    「おまえにやらせたら、ベッドが水浸しになりそうだ」
     顔をすすぎ終わり、乾いた布で水分を拭き取るまでリヴァイの世話になった。
    「自分であたるよりも、ずっといいな」
     エルヴィンはすべすべになった自分のあごに手を触れる。
    「以前から、おまえのそり残しは気にはなっていた」
     ひげそりの準備は、エルヴィンが目を覚ます前からやっていたらしい。目を開けたらちょうど、至近距離にリヴァイがいて、手にしていた石けんを取り落としそうになっていた。すぐに医師が呼ばれ、 1958

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