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    きたまお

    @kitamao_aot
    なんでもいいから書いたもの置き場。
    脳直に書いたら見直し一切せずにおいています。

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    きたまお

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    好きじゃないと言わなくちゃいけないへいちょ。

    ##進撃
    ##エルリ

    まず、口うるさい。
     リヴァイの一挙手一投足について、ああだこうだと言う。机に向かってまっすぐ座れ、茶を飲む際に音をたてるな、食事は残さず全部食べろ、上官の話を聞くときにらみつけるな、同じ班の兵士とはうまくやれ、字は丁寧に書け、椅子で寝ないでベッドで寝ろ。無視をしてもこりずに何度も言ってくる。
     ハンジなどは、あんなに細かく言ってくるなんて、愛だよね、と呆れたように言う。
    「お母さんでもないのに、普通、大の大人に対してああは言わないでしょう。あ、別にリヴァイが小さいからエルヴィンには子供に見えているんじゃないかなんて言ってないよ」
    「うるせえ」
     たいして必要無いであろうときも、エルヴィンはリヴァイを近くに置いておきたがる。
    「リヴァイ、王都での会議に同行しろ」
    「リヴァイ、訓練には私も参加する」
    「リヴァイ、次の壁外調査では私の直属として動いてもらう」
     隙あらばずっと、エルヴィンは独り言ともつかないことを言い続けている。
    「王都に新しい店ができていてな、川沿いの四番街の先だが、もともとあのあたりは住宅街だったのに、最近は商店が増えている。住民たちの生活が安定して豊かになっているからかもしれないが、住宅費が高騰しているからとも考えられるな」
    「巨人の血をあびたあとに独特の匂いが残るだろう。おまえだったらあの匂いの取り方を知っているんではないかと思っているんだが。兵団の庶務方から古いジャケットについた匂いが困るとの苦情がきていて」
    「おまえを地下街から連れ出したのは、ロヴォフォの揺さぶりのためだけだと思っているかもしれないが、どちらかと言えばおまえたちを兵団に引き入れることが最初の目的で、ロヴォフォがおまえたちを利用しようとしたことが渡りに船だったんだ」
     起きているあいだはずっと口を開いていないといけない病にでもかかっているのだろうか。リヴァイのあとをついて回るひな鳥のように、やかましくしゃべり続ける。
    「なあ、聞いているか、リヴァイ。返事をしろ」
    「聞いている。なあ、たまには黙れないのか」
    「黙っているヒマがあるか。おまえには兵団幹部になるための知識を短時間で詰め込まないとならん」
     だが話している内容のほとんどは、兵団とも壁外調査とも関係のないたわごとではないか。エルヴィンはしつこくリヴァイ、リヴァイと言い続ける。これで、エルヴィンが分隊長で、リヴァイが一般兵で宿舎が別でまだ良かった。同じ大部屋だったらエルヴィンは眠りにおちる直前までリヴァイを拘束してしゃべり続けるのではないか。
     いや、エルヴィンの権限であれば、リヴァイを無理やりにもっと近くに置くことも可能なのか。過去にはお稚児のように、気に入りの兵をそばに置いていた幹部もいたということを聞いた(それは、リヴァイもそうなるのではないかと、情報を探る意味もあったようだが)。非常にうるさく干渉してくるが、まだエルヴィンは最低限のラインは守っているのかもしれない。
    「リヴァイ、来週の調整日だが私も午後から時間がとれるから、一緒に街へ行こう。おまえ、石けんの種類がどうとか言っていただろう。駐屯兵団の兵からありそうな店を聞いたんだ」
    「断る。どうして休みでまでてめえのツラを拝まないといけねぇんだ。てめえもせっかくの休みならもっとほかに有意義な過ごし方があるだろう」
     リヴァイは背の高い金髪を見上げ、眉間に力をいれた。エルヴィンは青い目を瞬かせて、あごにてを当てた。
    「いや、リヴァイと一緒にいる以上の有意義な過ごし方はないな」
    「おかしいだろう、それは。おまえ、なんでそんなことが言える」
    「なぜって、おまえのことが好きだからだ」
     ごくあたりまえのことを言うように、エルヴィンは言った。今日は晴れていると言うくらいのあたりまえの声だった。
     考えてみたら、エルヴィンの行動には一貫性があった。リヴァイの将来をよいものにしようというのも、なんでも問いただし、どうでもいいことも話してくるのも、しつこく名前を呼ぶのも。
     あふれるほどの愛だ。リヴァイがいままで得たことのないもの。母からも、母の後に世話してくれた男からももらっていないもの。
     呆然と言葉を失っていると、エルヴィンが両手をリヴァイの肩にかけてきた。
    「気がついていなかったのか? こんなにわかりやすく行動していたのに」
    「あ、いや、ハンジがそんなことを言っていたが、まさか。ハンジの冗談だろうと」
     肩にエルヴィンの太い指がめり込む。
    「おまえは。おまえ自身はどうなんだ」
     考えるまでもなく、すぐに言葉が出た。
    「俺は、おまえが好きじゃない」
     肩に乗っていた重みがすっと消えた。見下ろしてくるエルヴィンの顔の口角がわずかにあがり、目尻は下がった。
    「そうか」
     ごく普通の声でエルヴィンが言う。
     口やかましく、マナーにうるさいし、ずっとしゃべり続けているし、しつこくリヴァイの名を呼ぶし。まったくリヴァイが必要としていないエルヴィンのアピールだった。お願いだから静かにしてくれ、そっとしておいてくれと思っていた。
    「好きでなくていいよ。だから、泣かないでくれ」
     エルヴィンの両手がリヴァイの背にまわされ、そっと引き寄せられた。そのままエルヴィンのシャツに顔があたる。
     そこで、頬を伝う、ぬるい液体の感覚に気がついた。
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    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん2今日の現場も一人で死亡した老人の住まいだった。大きな庭のある戸建ての二階で老人は死んでいた。老人には内縁の妻がいたが、折り悪くその妻は姪と一緒に十日間の海外旅行に出かけていた。家の状況から見て、老人は内縁の妻が旅行にでかけた初日の夜に倒れたようだった。さらに悪いことに、寒がりの老人は自室の暖房を全開にしていた。
     年齢のわりに老人は身体が大きかったようだ。ベッドに残された痕跡でそれを知ることができた。おそらく老人はリヴァイよりも二十センチ以上は背が高い。二階の部屋は天井が傾斜していて、ベッドは天井が低い方の壁にぴたりとくっつけておかれていた。
     リヴァイが最初にやることは、遺体のあった場所に手をあわせることだ。神も仏も信じてはいないが、これだけは行う。手をあわせているあいだはなにも考えていない。一緒に仕事に入ったことのある同僚には経を唱えたり、安らかに、などいうものもいたが、リヴァイは頭をからっぽにしてただ手をあわせる。これはもう習慣だった。
     後輩と一緒に、まずマットレスを外す作業をした。いくらかはまだ生きている虫がいる可能性があるので、殺虫剤を全面に散布する。動くものがなくなったこ 1271

    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん「先輩はどうしてこの仕事についたんですか」
     行きの車の中で無邪気に後輩が聞いてきた。最近入ったこの後輩は、始めは短期アルバイトの大学生だったはずが、気がつけば正社員として登用されていた。なんか、これがオレの天職だって気がついちゃったんですよね、と大声で事務員に話しているのを聞いたことがある。
     リヴァイはウィンカーを一瞬出して隣の車線に割り込みながら、ぼんやりと答えた。
    「別にやりたくてやったわけじゃねえよ。たまたま、クソみたいな伯父が便利屋をやっていて、そのクソが仕事だけ受けて逃げ出した尻拭いであばらやの清掃に入ることになって、そこからまあたまたまだ」
     母の兄である伯父には、昔からいろいろ迷惑をかけられてきた。便利屋の仕事を借金とともに押しつけられたのが、最たるものだった。
     最初から特殊清掃だったわけではない。ゴミ屋敷の片付けなどを行っているうちに、割のいい仕事として特殊清掃ももちかけられた。六月にベッドで死亡して、一週間発見されなかった老人の部屋の清掃だった。遺体はすでに警察が持ち出していたがベッドには遺体のあとが文字通り染みついていた。床や壁にこびりついている虫を片付けると 674

    きたまお

    TRAININGエルリワンライの没軽くブラシをまわすと、面白いように泡が立った。その泡をブラシの先端にとり、リヴァイが無言であごをしゃくった。上を向けということだろう。
     もみあげから下、あごの先に向けてブラシが小さな円を描くように動いていく。なめらかな動きの中で、ブラシと肌の間に泡が立っていくのがわかった。すこしこそばゆく、しかし気持ちがいい。
     カミソリの扱いは慣れたもの、あっというまに泡をぬぐうように刃があてられて、エルヴィンの無精ひげは姿を消した。最後にぬるま湯の入った桶を寄せられ、身体をうつ伏せに倒せと言われた。
    「すすぐくらいは左手だけでも可能だとおもうんだが」
    「おまえにやらせたら、ベッドが水浸しになりそうだ」
     顔をすすぎ終わり、乾いた布で水分を拭き取るまでリヴァイの世話になった。
    「自分であたるよりも、ずっといいな」
     エルヴィンはすべすべになった自分のあごに手を触れる。
    「以前から、おまえのそり残しは気にはなっていた」
     ひげそりの準備は、エルヴィンが目を覚ます前からやっていたらしい。目を開けたらちょうど、至近距離にリヴァイがいて、手にしていた石けんを取り落としそうになっていた。すぐに医師が呼ばれ、 1958

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    きたまお

    TRAININGただそこにいた兵士の話その男が動くたびに、鎖がじゃらじゃらと鳴った。左の手首と両足首が太い鎖でつながれている。男には右腕がなかった。巨人に食われたのだと噂で聞いた。
     調査兵団第十三代団長エルヴィン・スミス、その人だ。
     兵士は憲兵団に所属していた。巨人がいる壁外へ行こうとする調査兵団のやつらは彼には理解できなかった。なにを好き好んでわざわざ食われに行くというのだろう。訓練兵団同期で調査兵団へ進んだものは、一握りの変わり者と、成績が悪くて憲兵団に入れず、駐屯兵団に入るためのくじ引きに負けたものだけだった。そのほとんどがもう死んでいる。五年前のウォール・マリア崩壊後の奪還作戦、その後のマリアルート確立のための壁外調査で命を落とした。
    「処刑台に連れて行け」
     宰相の言葉でエルヴィン・スミスの身体が、兵士の上司の手で引き起こされる。兵士は上司に手を貸すために近くに寄った。エルヴィン・スミスの顔が見えた。今、死刑を宣告された男は、薄ら笑いを浮かべていた。拷問で左目をつぶされ、あごにも無数の傷を負った男が笑っている。兵士はギョッとして動きを止めた。死の恐怖のあまり、この男は頭がおかしくなってしまったのだろうか。
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