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    きたまお

    @kitamao_aot
    なんでもいいから書いたもの置き場。
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    きたまお

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    ファーラン→リヴァイ 一方通行

    ##進撃
    ##エルリ

    リヴァイを知ったのは、つるんでいた仲間が聞き込んできた噂からだった。チビだがえらく強いやつがいる。たいていそういう噂は人のあいだを経るうちに、誇張されていくものだ。実際に見てみたら、たいしてチビでなかったり、特に強くもないということがよくある。
     今回もまた、その手合いだと思っていた。だから実物を目にしたときに、本当にチビで、恐ろしいほど強いのに驚いた。
    「てめえらは、死にてぇんだな」
     表情ひとつ変えずにリヴァイは言い、ファーランの仲間たちをあっという間に地面にたたきつけていった。ナイフを使うと聞いていたが、それを抜きもしなかった。盾にしていたラルスの巨体が地に横たわるのと同時に、ファーランは両手を挙げた。
    「待った待った待った! もう降参だ、これ以上痛めつけないでくれ!」
     容赦なくリヴァイの手はファーランの首元をつかんで締め上げる。ファーランよりも頭半分小さいのに、その手の力は恐ろしく強い。そのまま背中を近くの家の壁に押しつけられた。
    「俺にかまうんじゃねえ。二度とだ」
     解放され、ファーランはずるずるとその場にしゃがみこむ。去ろうとしたリヴァイの足に必死にしがみついた。
    「なあ、俺たちの頭にならないか」
     ここで離されてしまったら一生後悔すると思った。振り払われても、蹴られても、ファーランはしがみついた。
    「話だけでも聞いてくれ! 俺は、地下街で終わりたくないんだ。上へ行きたい!」
     リヴァイを動かしたのがなんだったのか、ファーランはわからない。だがファーランはリヴァイのそばによることに成功し、徐々に距離をつめてリヴァイを仲間内のリーダーとしてまつりあげるようになった。
     リーダーと言っても、ファーランやラルスの仲間たちが周りに勝手にとりまいていたというほうが近いかもしれない。リヴァイがファーランになにかを命じるようなことはなかった。だから、ことあるごとにファーランはリヴァイに問いかけ、リヴァイに決定をゆだねた。リヴァイは自分が決定に関わったことに責任を持とうとする。地下街で生まれ育ったわりには、すれてないところがある。
     ある人物からの使者、と名乗るものが来たときに、チャンスだと思った。リヴァイたちの立体機動の腕を見込み、調査兵団のエルヴィン・スミスが兵団に引き入れようとしている。それを利用して書類を奪い、エルヴィン・スミスを殺してこい。信用できないと即、断ろうとしているリヴァイをファーランは止めた。
     地上に向かうには、リスクをとる必要がある。巨人がいる壁外へ行くという調査兵団に入るのはぞっとしないが、このリスクをとる価値はあると思った。
     想定外だったのは、エルヴィン・スミスだ。
     地下街で追いかけてきたエルヴィン・スミスは、憲兵団とは比べものにならない強さをもち、また、大胆な人物だった。リヴァイの顔を下水に沈めるなど、見ているだけでファーランは背筋が凍りそうだった。逆上したリヴァイが調査兵団入りを断ることを恐れたが、打ち合わせどおりにリヴァイはエルヴィンに従うふりをしてくれた。
    「あいつを殺してやる」
     リヴァイはことあるごとにエルヴィンへの殺意を口にするようになった。その都度、ファーランはリヴァイをいさめた。いま殺してしまってはダメだ。あいつは地上で暮らすための足がかりなんだ。目の下に黒いくまを浮かべたリヴァイが、ファーランを見る。慣れているファーランでも肝が冷えるほど、その視線は鋭く、冷たい。
    「いまだけ辛抱してくれ」
     繰り返すうちに、ファーランはひょっとして自分は間違えたかもしれないと思い始めた。
     エルヴィンへ向ける殺意は、いままでのリヴァイからは考えられない強さだ。リヴァイはそもそも、欲がない。ものごとへの執着が薄い。金を手に入れたい、女が欲しい、うまいものが食べたい、地上に行きたい。リヴァイにはそれがなかった。だから、地下でファーランがしがみつくまえまでは多少の不便があっても単独で行動していたのだろうし、「ある人物」の使者の話も断ろうとしていた。
     だが、エルヴィンを殺すというときだけは、リヴァイから強い執着を感じた。
     一番、これは選んではいけない道だったのかもしれない。
     地下でファーランが見つけた、リヴァイという中心を失う道に入ってしまったことに気がついた時にはもうすべてが遅かった。
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    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん2今日の現場も一人で死亡した老人の住まいだった。大きな庭のある戸建ての二階で老人は死んでいた。老人には内縁の妻がいたが、折り悪くその妻は姪と一緒に十日間の海外旅行に出かけていた。家の状況から見て、老人は内縁の妻が旅行にでかけた初日の夜に倒れたようだった。さらに悪いことに、寒がりの老人は自室の暖房を全開にしていた。
     年齢のわりに老人は身体が大きかったようだ。ベッドに残された痕跡でそれを知ることができた。おそらく老人はリヴァイよりも二十センチ以上は背が高い。二階の部屋は天井が傾斜していて、ベッドは天井が低い方の壁にぴたりとくっつけておかれていた。
     リヴァイが最初にやることは、遺体のあった場所に手をあわせることだ。神も仏も信じてはいないが、これだけは行う。手をあわせているあいだはなにも考えていない。一緒に仕事に入ったことのある同僚には経を唱えたり、安らかに、などいうものもいたが、リヴァイは頭をからっぽにしてただ手をあわせる。これはもう習慣だった。
     後輩と一緒に、まずマットレスを外す作業をした。いくらかはまだ生きている虫がいる可能性があるので、殺虫剤を全面に散布する。動くものがなくなったこ 1271

    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん「先輩はどうしてこの仕事についたんですか」
     行きの車の中で無邪気に後輩が聞いてきた。最近入ったこの後輩は、始めは短期アルバイトの大学生だったはずが、気がつけば正社員として登用されていた。なんか、これがオレの天職だって気がついちゃったんですよね、と大声で事務員に話しているのを聞いたことがある。
     リヴァイはウィンカーを一瞬出して隣の車線に割り込みながら、ぼんやりと答えた。
    「別にやりたくてやったわけじゃねえよ。たまたま、クソみたいな伯父が便利屋をやっていて、そのクソが仕事だけ受けて逃げ出した尻拭いであばらやの清掃に入ることになって、そこからまあたまたまだ」
     母の兄である伯父には、昔からいろいろ迷惑をかけられてきた。便利屋の仕事を借金とともに押しつけられたのが、最たるものだった。
     最初から特殊清掃だったわけではない。ゴミ屋敷の片付けなどを行っているうちに、割のいい仕事として特殊清掃ももちかけられた。六月にベッドで死亡して、一週間発見されなかった老人の部屋の清掃だった。遺体はすでに警察が持ち出していたがベッドには遺体のあとが文字通り染みついていた。床や壁にこびりついている虫を片付けると 674

    きたまお

    TRAININGエルリワンライの没軽くブラシをまわすと、面白いように泡が立った。その泡をブラシの先端にとり、リヴァイが無言であごをしゃくった。上を向けということだろう。
     もみあげから下、あごの先に向けてブラシが小さな円を描くように動いていく。なめらかな動きの中で、ブラシと肌の間に泡が立っていくのがわかった。すこしこそばゆく、しかし気持ちがいい。
     カミソリの扱いは慣れたもの、あっというまに泡をぬぐうように刃があてられて、エルヴィンの無精ひげは姿を消した。最後にぬるま湯の入った桶を寄せられ、身体をうつ伏せに倒せと言われた。
    「すすぐくらいは左手だけでも可能だとおもうんだが」
    「おまえにやらせたら、ベッドが水浸しになりそうだ」
     顔をすすぎ終わり、乾いた布で水分を拭き取るまでリヴァイの世話になった。
    「自分であたるよりも、ずっといいな」
     エルヴィンはすべすべになった自分のあごに手を触れる。
    「以前から、おまえのそり残しは気にはなっていた」
     ひげそりの準備は、エルヴィンが目を覚ます前からやっていたらしい。目を開けたらちょうど、至近距離にリヴァイがいて、手にしていた石けんを取り落としそうになっていた。すぐに医師が呼ばれ、 1958