Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    きたまお

    @kitamao_aot
    なんでもいいから書いたもの置き場。
    脳直に書いたら見直し一切せずにおいています。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 26

    きたまお

    ☆quiet follow

    ワンライ「優しさ」没ネタ、ニト保、ニートが相当おばか

    ##進撃
    ##エルリ

    一回量は二錠とのことだった。エルヴィンは銀のシートから二錠押し出した。ころころと転がっていきそうな錠剤を、チラシの上に置く。でも、二錠ってなんだか少なくないか。どうせならまとめて処理しておきたい気もする。結局、シートから全錠取り出した。
     なにか押しつぶすものが必要だ。すりこぎみたいなものがいい。が、キッチンにいってもすりこぎはなかった。固くて重ささえあればいいわけだ。棚の隅にあったウィスキーのボトルを取り出した。これは、リヴァイがもらったと言って持ち帰ってきたものだ。保育士がどうしてウィスキーをと思うが、どうやら職場の父兄からの横流しらしい。詳しく突っ込んで聞いてはいない。
     こたつに戻って、白い錠剤にウィスキーボトルの底をあてる。力をこめると錠剤は簡単に割れた。ごりごりと茶色いボトルを転がして錠剤をただの粉にしていく。
     ——あ、なんか、悪いことやってる気分だ。
     労働もせずに昼間から家に閉じこもって、錠剤から白い粉をつくっているって、言葉だけ聞けば背徳的だ。だが、エルヴィンは悪いことをやっているわけではない。うん、悪いことでは、……ないはずだ。
     時間を見てお湯を沸かし始める。あと、冷蔵庫を確認する。さすがにストレートだと見抜かれてしまうような気がする。牛乳をいれるのが適当だろう。ドアポケットにあった未開封の牛乳パックを取り出した。なにも言ってないのに、こうやって家の中の隅々まで行き届いているのが、リヴァイの恐ろしさだ。
     マグカップにティーバッグを入れた。途中で思い直して二袋。ぐらぐらとわかした湯をカップに半分まで入れる。たしか、むらしたほうが美味しいって言ってたよなあ、と適当な小皿でカップにふたをする。そうそう、そもそもこれを忘れちゃいけない。こたつからチラシを、白い粉が落ちないようにそーっと持ってくる。そこで、はっとエルヴィンは気がついた。あ、今日ってテレビであの特撮の特番やるんじゃなかったっけ。特撮自体にはさして興味がないのだが、出てくる適役の女幹部がたいへんいい体をしているのだ。小柄な黒髪で、おっぱいはこう、ぼいんっと、ウェストは内臓が入っているのか不思議なくらいきゅっと締まっていて、お尻は上向きにつきだしている。
     まだ時間はOKだしね。
     いそいそこたつに戻ってテレビをつけた。番組が始まってまもないころのようだった。あぶないあぶない。録画機器があればいいのだが、リヴァイはそんなものがあったらおまえは一生この部屋からでなくなると言って買ってくれない。こたつに潜り込んで、見たくもない正義の味方たちのわきあいあいとした青春シーンを見て、やたらと怪人に襲われる町を見て、やっとお目当ての女幹部が出てきた。おっと新衣装じゃないか! 視聴者の思いを反映したかのような襟ぐりのあいたピタリとしたボディースーツ、下半身は足首まであるタイトな布で覆われているが、足の脇にながーいスリットが入っている。動くと尻と腿の境目までがチラリと現れる。いいね、いいね!
     興奮していて、すっかり気がつかなかった。
    「おい」
     地の底から這い出してきたような声に、エルヴィンは首を真上に向けた。腕組みをしたTシャツ姿の男がすごい顔をしてたっている。
    「おかえり」
     いつのまに帰ってきていたのか。リヴァイの背後に、かげろうのような揺らめきが見えた気がした。
    「おかえりじゃねえよ。台所のあれは一体、なんのまねだ」
    「あ」
     すっかり忘れていた。小皿で蓋をしたマグカップも、冷蔵庫から出した牛乳パックも。
    「あの白い粉はなんだと言っている」
    「わ、誤解だ誤解! 決して変な粉じゃなくって。あれは優しさ」
    「白い粉ってだけで十分変なんだよ! だいたいあの準備の仕方じゃ紅茶に入れて飲むつもりだったみたいじゃねえか。なんだ、おまえとうとうただのニートじゃ飽き足らずに、ヤバいヤクをやるクズにまで墜ちてえのか!」
    「違う違う、飲むのは、俺じゃなくて、リヴァイだ」
     リヴァイが真上からガッとエルヴィンの首を腕でホールドした。
    「てめえ、俺に変なヤクやらせてどうするつもりなんだ。えっ? 変なビデオでも撮って売り飛ばすとでもいうのか? てっとりばやく、ヤクザに俺を売る気か?」
     強く首を絞められてエルヴィンは声が出せない。リヴァイの腕を手で叩く。息が苦しくて、目の前が暗くなりそうになって、やっと解放された。
    「ち、ちがいます……」
     だいたい発想が古いんじゃないかな。ビデオとかヤクザとか。
    「あったま、いてぇ」
     両腕を後ろに投げ出して、ぜーはーと息をつくエルヴィンの横に、リヴァイが座り込んだ。こめかみを拳でぐりぐりと押している。今日も、目の下のくまがひどい。
    「だ、だから、薬を飲んでもらおうかと思って。でもリヴァイはなかなか薬を飲まないだろう? 眠くなるのが嫌だとか言って」
    「ああ?」
    「頭痛、ここのところ、ずっとひどいじゃないか。痛いときは無理しないで、薬を飲んでやすんでくれよ」
     エルヴィンはこたつの端にちらっと視線をやった。小さなビニール袋のなかに、青と白のパッケージの箱が入っている。とても有名な、半分が優しさのあの薬だ。リヴァイも目をすがめてそちらを見ている。手を伸ばしてビニール袋から、空になった銀のシートを取り出す。
    「俺にもたまにはおまえを甘やかさせろ、リヴァイ」
     おいで、と両腕を広げたが、リヴァイは入ってきてはくれなかった。
    「くそニート、あの薬の優しさは、錠剤を大きくして、大量に飲めないようにするためのものだ。すりつぶしたら何の意味もねえだろ!」
    「ああー」
     エルヴィンの優しさは、リヴァイの正論と常識によって粉々に打ち砕かれた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん2今日の現場も一人で死亡した老人の住まいだった。大きな庭のある戸建ての二階で老人は死んでいた。老人には内縁の妻がいたが、折り悪くその妻は姪と一緒に十日間の海外旅行に出かけていた。家の状況から見て、老人は内縁の妻が旅行にでかけた初日の夜に倒れたようだった。さらに悪いことに、寒がりの老人は自室の暖房を全開にしていた。
     年齢のわりに老人は身体が大きかったようだ。ベッドに残された痕跡でそれを知ることができた。おそらく老人はリヴァイよりも二十センチ以上は背が高い。二階の部屋は天井が傾斜していて、ベッドは天井が低い方の壁にぴたりとくっつけておかれていた。
     リヴァイが最初にやることは、遺体のあった場所に手をあわせることだ。神も仏も信じてはいないが、これだけは行う。手をあわせているあいだはなにも考えていない。一緒に仕事に入ったことのある同僚には経を唱えたり、安らかに、などいうものもいたが、リヴァイは頭をからっぽにしてただ手をあわせる。これはもう習慣だった。
     後輩と一緒に、まずマットレスを外す作業をした。いくらかはまだ生きている虫がいる可能性があるので、殺虫剤を全面に散布する。動くものがなくなったこ 1271

    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん「先輩はどうしてこの仕事についたんですか」
     行きの車の中で無邪気に後輩が聞いてきた。最近入ったこの後輩は、始めは短期アルバイトの大学生だったはずが、気がつけば正社員として登用されていた。なんか、これがオレの天職だって気がついちゃったんですよね、と大声で事務員に話しているのを聞いたことがある。
     リヴァイはウィンカーを一瞬出して隣の車線に割り込みながら、ぼんやりと答えた。
    「別にやりたくてやったわけじゃねえよ。たまたま、クソみたいな伯父が便利屋をやっていて、そのクソが仕事だけ受けて逃げ出した尻拭いであばらやの清掃に入ることになって、そこからまあたまたまだ」
     母の兄である伯父には、昔からいろいろ迷惑をかけられてきた。便利屋の仕事を借金とともに押しつけられたのが、最たるものだった。
     最初から特殊清掃だったわけではない。ゴミ屋敷の片付けなどを行っているうちに、割のいい仕事として特殊清掃ももちかけられた。六月にベッドで死亡して、一週間発見されなかった老人の部屋の清掃だった。遺体はすでに警察が持ち出していたがベッドには遺体のあとが文字通り染みついていた。床や壁にこびりついている虫を片付けると 674

    きたまお

    TRAININGエルリワンライの没軽くブラシをまわすと、面白いように泡が立った。その泡をブラシの先端にとり、リヴァイが無言であごをしゃくった。上を向けということだろう。
     もみあげから下、あごの先に向けてブラシが小さな円を描くように動いていく。なめらかな動きの中で、ブラシと肌の間に泡が立っていくのがわかった。すこしこそばゆく、しかし気持ちがいい。
     カミソリの扱いは慣れたもの、あっというまに泡をぬぐうように刃があてられて、エルヴィンの無精ひげは姿を消した。最後にぬるま湯の入った桶を寄せられ、身体をうつ伏せに倒せと言われた。
    「すすぐくらいは左手だけでも可能だとおもうんだが」
    「おまえにやらせたら、ベッドが水浸しになりそうだ」
     顔をすすぎ終わり、乾いた布で水分を拭き取るまでリヴァイの世話になった。
    「自分であたるよりも、ずっといいな」
     エルヴィンはすべすべになった自分のあごに手を触れる。
    「以前から、おまえのそり残しは気にはなっていた」
     ひげそりの準備は、エルヴィンが目を覚ます前からやっていたらしい。目を開けたらちょうど、至近距離にリヴァイがいて、手にしていた石けんを取り落としそうになっていた。すぐに医師が呼ばれ、 1958

    recommended works

    niesugiyasio

    INFO原作軸の冬のエルリエルヴィンはシガンシナでの冬のある日を思い出していた。あの年はなかなか冬らしくならなかったところに、急な冷え込みが訪れたのだった。エルヴィンは寒がりな方ではないが、突然の寒さにいくらかおののいた。
    凍てつくような空気に、思わず身を縮こまらせる。吐く息が白い。桶の水に氷が張っている。空はすでに明るいが、まだ日は差し始めていない。早朝の道を、ウォール・マリアの農地に向かう人々と、シガンシナ区の市中に向かう人々が行き交っている。
    エルヴィンは道の向こうにちいさな背中を見つけた。自由の翼のついた外套に、ちいさな頭。彼が何をしているのか、すぐには分からなかった。その場で足踏みをしては一歩動き、また足踏みをしている。足踏みといっても行進の訓練のような規則的なものではなく、地面を見下ろしながら無心に、かつ不規則に土を踏んでいる。しばらく見ていれば分かった。霜柱を踏んでいるのだ。音や感触が小気味よいのだろうか、背中が楽しそうだ。子どもみたいだ、と思ってしまう。鉄面皮と言われるほど表情の変わらぬエルヴィンの頬が綻ぶ。地下街は年間を通してさほど気温が変わらないと聞く。つまり、彼にとって、初めての冬だ。これ 2574