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    きたまお

    @kitamao_aot
    なんでもいいから書いたもの置き場。
    脳直に書いたら見直し一切せずにおいています。

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    きたまお

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    兵長の耳掃除をする団長。でもヨーロッパの人って耳かきしないらしいですね。

    ##進撃
    ##エルリ

    リヴァイが自分の右耳に小指を突っ込んでいた。次に、右に頭を傾け、左側頭部を軽く掌底で叩いている。
    「よければ耳かき使うか」
     エルヴィンは机の引き出しから耳かきを取り出した。竹製の薄く細い精巧なつくりである。たまたまトロスト区の商店で見かけて入手したが、お気に入りの品だ。
     しかし、エルヴィンが取り出した耳かきを見たリヴァイは、露骨に眉間にしわを寄せた。
    「そうか、潔癖のおまえには他人の耳かきなど気持ち悪いだけか」
     しまい直そうとしたエルヴィンに、リヴァイが、あ、いや、と声をかける。
    「……使ったことがねえ」
    「そうなのか? 一度も?」
     リヴァイがこくりとうなずいた。もともとの小柄さとあいまって、とても実年齢には見えない。
    「耳掃除、してやろうか」
     そうと決まれば善は急げ。リヴァイに手伝わせて、長椅子を窓のそばに移動する。エルヴィンは日の光が当たっている側に座り、自分の膝を叩いた。
    「頭をここにのせなさい」
     長椅子の座面を見下ろしたリヴァイは口をへの字に曲げた。
    「おい」
    「この姿勢が一番都合がいいだろう。ほら」
     不承不承、リヴァイは長椅子に横たわった。黒髪の小作りな頭がエルヴィンの膝にちょこんとのる。
    「もうちょっとこっちだ」
     細い首の下に手を差し入れて、エルヴィンはリヴァイの頭全体を自分の膝においた。
    「てめえ、変なことしたらわかってるだろうな」
    「耳掃除させていただくだけさ。おまえのような掃除魔に掃除で勝てるだなんて嬉しすぎる」
     膝の上からじろりとにらみつけてから、リヴァイは目を閉じる。
     形のよい耳だと思った。エルヴィンは顔を黒髪に近づけ、耳たぶに人差し指をはわす。黒髪がびくりとゆれた。
    「動くなよ」
     耳かきの首部分を右手の人差し指、中指、親指でつまみ、小さな暗い孔の中にそっと差し入れる。窓の外からさす太陽の光が耳を照らす。中をよく見るため、左手で耳たぶを軽く引っ張った。
     耳孔の壁にそって、耳かきを内から外へ動かした。リヴァイの肩がゆれる。引き出した耳かきの皿に黄色のもやもやした垢があった。ふっと息を吹きかけてそれを吹き飛ばす。
    「とれたか」
    「まだある」
     ふたたび耳かきを孔の中へ。視界の端で、リヴァイが拳を握りこむのが見えた。二度三度と軽く耳孔に竹を滑らせる。ぐるりと孔の中を一周すると、リヴァイの口から息がもれた。
     これは、いかん。
     エルヴィンは耳かきを勢いよくリヴァイの耳穴から出した。耳朶に唇を落とした。そのまま唇のあいだに柔らかい肉を食む。
    「なにしやがる……」
    「続きはまた後日だ」
    「ふざけんな、てめえから耳かきだけだって言いだしたんだぞ」
     うるさいことを言う唇を手のひらで塞ぐ。
    「この状態で、これ以上は無理だ。わかるだろう」
     腰を少し動かせば、リヴァイの後頭部に怒張したそれが当たる。
     この向きならともかく、反対側の耳掃除のため向きを変えさせたら、その時点で無理だ。
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    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん2今日の現場も一人で死亡した老人の住まいだった。大きな庭のある戸建ての二階で老人は死んでいた。老人には内縁の妻がいたが、折り悪くその妻は姪と一緒に十日間の海外旅行に出かけていた。家の状況から見て、老人は内縁の妻が旅行にでかけた初日の夜に倒れたようだった。さらに悪いことに、寒がりの老人は自室の暖房を全開にしていた。
     年齢のわりに老人は身体が大きかったようだ。ベッドに残された痕跡でそれを知ることができた。おそらく老人はリヴァイよりも二十センチ以上は背が高い。二階の部屋は天井が傾斜していて、ベッドは天井が低い方の壁にぴたりとくっつけておかれていた。
     リヴァイが最初にやることは、遺体のあった場所に手をあわせることだ。神も仏も信じてはいないが、これだけは行う。手をあわせているあいだはなにも考えていない。一緒に仕事に入ったことのある同僚には経を唱えたり、安らかに、などいうものもいたが、リヴァイは頭をからっぽにしてただ手をあわせる。これはもう習慣だった。
     後輩と一緒に、まずマットレスを外す作業をした。いくらかはまだ生きている虫がいる可能性があるので、殺虫剤を全面に散布する。動くものがなくなったこ 1271

    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん「先輩はどうしてこの仕事についたんですか」
     行きの車の中で無邪気に後輩が聞いてきた。最近入ったこの後輩は、始めは短期アルバイトの大学生だったはずが、気がつけば正社員として登用されていた。なんか、これがオレの天職だって気がついちゃったんですよね、と大声で事務員に話しているのを聞いたことがある。
     リヴァイはウィンカーを一瞬出して隣の車線に割り込みながら、ぼんやりと答えた。
    「別にやりたくてやったわけじゃねえよ。たまたま、クソみたいな伯父が便利屋をやっていて、そのクソが仕事だけ受けて逃げ出した尻拭いであばらやの清掃に入ることになって、そこからまあたまたまだ」
     母の兄である伯父には、昔からいろいろ迷惑をかけられてきた。便利屋の仕事を借金とともに押しつけられたのが、最たるものだった。
     最初から特殊清掃だったわけではない。ゴミ屋敷の片付けなどを行っているうちに、割のいい仕事として特殊清掃ももちかけられた。六月にベッドで死亡して、一週間発見されなかった老人の部屋の清掃だった。遺体はすでに警察が持ち出していたがベッドには遺体のあとが文字通り染みついていた。床や壁にこびりついている虫を片付けると 674

    きたまお

    TRAININGエルリワンライの没軽くブラシをまわすと、面白いように泡が立った。その泡をブラシの先端にとり、リヴァイが無言であごをしゃくった。上を向けということだろう。
     もみあげから下、あごの先に向けてブラシが小さな円を描くように動いていく。なめらかな動きの中で、ブラシと肌の間に泡が立っていくのがわかった。すこしこそばゆく、しかし気持ちがいい。
     カミソリの扱いは慣れたもの、あっというまに泡をぬぐうように刃があてられて、エルヴィンの無精ひげは姿を消した。最後にぬるま湯の入った桶を寄せられ、身体をうつ伏せに倒せと言われた。
    「すすぐくらいは左手だけでも可能だとおもうんだが」
    「おまえにやらせたら、ベッドが水浸しになりそうだ」
     顔をすすぎ終わり、乾いた布で水分を拭き取るまでリヴァイの世話になった。
    「自分であたるよりも、ずっといいな」
     エルヴィンはすべすべになった自分のあごに手を触れる。
    「以前から、おまえのそり残しは気にはなっていた」
     ひげそりの準備は、エルヴィンが目を覚ます前からやっていたらしい。目を開けたらちょうど、至近距離にリヴァイがいて、手にしていた石けんを取り落としそうになっていた。すぐに医師が呼ばれ、 1958

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