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    麻邑(まゆう)

    @Mayuu_BAIKA

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    麻邑(まゆう)

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    ○風邪をひいた監督生をアズールが看病する話です。
    ○アズールの片想い(アズール→監督生)風味です。
    ○食事についてはパブ●ンのサイトを参考にしました。

    #twstプラス
    twstPlus
    #twst夢
    #アズ監
    azSupervisor
    #女監督生
    femaleCollegeStudent

    クリームスープとコンポート 監督生が風邪をひいて寝込んだと、エース、デュース、グリムからアズールが聞いたのは放課後だった。これからグリムは保健室に薬をもらいに行き、エースとデュースはオンボロ寮に行って看病をするという。監督生が苦しんでいると思うと居ても立ってもいられないアズールは、しかしそれは少しも表に出さず、「自分が行った方がいかに手厚く看病できるか」をエース、デュースに説いてその役目を強引に奪った。
     アズールは今日のモストロ・ラウンジの運営をジェイドとフロイドに任せてオンボロ寮へと向かう。出迎えたゴーストに事情を話して中に入れてもらい、まずは監督生の部屋へ様子を見に行った。静かに扉を開けて中を覗くと、ゴーストの一人が、ベッドサイドテーブルに置いた洗面器でタオルを濡らして絞り、監督生の額に載せているところだった。アズールはこの光景に眉を寄せて目を伏せ、扉を閉めた。

     保健室から戻ってきたグリムと共に食事の用意をし、アズールは再び監督生の部屋に向かう。今度はグリムが扉を開けて中に入り、食事の乗ったお盆を持つアズールもそれに続いた。

    「子分、オレ様が夕飯を作ってやったから食べるんだゾ! 起きられるか?」

     グリムの声に監督生の眉がぴくりと動き、瞼がゆっくりと上がる。

    「すごい、グリムが作ってくれたの? うん、食べたいな。」

     ベッドの横にいるグリムを見て笑顔を作った監督生だったが、ゴーストではないもう一人の存在に気付き驚いて目を丸くした。監督生と目が合い鼓動が速くなったアズールだったが、平静を装ってお盆をサイドテーブルに置く。

    「監督生さんが寝込んだと聞いたので、慈悲深い僕が看病に来て差し上げました。起き上がれますか? 手伝いますよ。」
    「あっ、ありがとうございます…。」

     なぜアズール先輩が? という監督生の戸惑いには気付かぬふりをして、アズールはその背中に優しく手を添えて体を起こした。次いで自分も椅子に腰掛け、温かいスープが注がれた皿を手に取る。

    「鶏肉と里芋のクリームスープです。ビタミンも摂れますし、身体も温まりますよ。」

     監督生はアズールから皿とスプーンを受け取った。ひとつすくって口に運ぶと、その目がぱっと輝く。

    「ん、美味しい! とっても美味しいです、グリム、アズール先輩。」

     嬉しそうに顔を綻ばせる監督生にアズールは安堵した。どうやら監督生の症状はそれほど重くはなさそうだ。きちんと栄養を摂って薬を飲めば、あと二日ほどで回復するだろう。

    「オレ様が鍋をかきまぜて煮込んだからな、美味くて当たり前なんだゾ! オレ様も食べるんだゾー!」

     監督生の笑顔にグリムも安心したのだろう。子分と一緒に食べるんだ、とアズールに持ってこさせていたスープを自分も食べ始める。食べながら、今日はどんなことがあったのかを監督生に話して聞かせているうちに、グリムも監督生も皿のスープをすっかりお腹におさめていた。
     アズールは二人のスープがなくなるのを見計らって部屋を出て、小さめの皿を持って戻る。そこにはほんのり朱色に色付いたりんごのコンポートがのせられており、監督生とグリムは瞳を輝かせた。
     監督生とグリムがコンポートも食べ終えたところで、アズールがグリムとゴーストに声をかける。

    「グリムさん、監督生さんのことは僕が看ていますからお風呂に入ってきてください。皿も後で洗っておきますので。…なんですその顔は? 今日一日外に出て汚れた体のまま、監督生さんの布団に潜り込むつもりですか? ゴーストの皆さんもお疲れでしょう。あとは僕に任せてください。」

     グリムはしぶしぶと一人で風呂へと向かい、ゴーストも「自分たちがずっとそばに浮いていては落ち着かないだろうから」と監督生を気遣って部屋を出て行った。パタンと部屋の扉が閉まり、アズールが監督生に向き直る。

    「さあ、監督生さんは薬を飲んで横になってください。」

     監督生はアズールから受け取った薬を飲んで布団に入ったが、しかし目は閉じず、アズールに視線を向けた。

    「アズール先輩、来てくださってありがとうございました。エースとデュースが来ると思っていたからびっくりしましたけど…。」
    「…陸で風邪をひいたときにどのように対処すればよいか、あなたで試しただけですよ。明日は休みですしね。」

     あなたが心配でたまらないから来ました、と素直に言えばいいものを。それができないアズールは自分で自分に苛立ったが、それを消してくれたのは監督生の「ふふっ」という可愛らしい笑い声だった。

    「そうだとしても嬉しいです。すぐに元気になれそう。」

     監督生はアズールに笑いかけた後、すっと窓の方に顔を向ける。

    「…最近授業の内容が難しくなってきて、着いていけなくなりそうになってしまって。グリムのためにも自分のためにも置いていかれないようにしなきゃって、すごく焦ったんです。気付けば毎日、日付が変わるまで勉強をしていました。」
    「寒い中ろくに暖房もつけずに、でしょうかね。」
    「うっ、はい、その通りです…。でも、思ったほど成果は出せませんでした。しかもこうして風邪をひいてしまうなんて…。情けないなぁと思います。」

     監督生は苦笑し、顔を隠すように掛け布団を上に引っ張る。その目が潤んでいるのをアズールは見逃さなかった。

    「…あなたは別の世界からここに来て、魔法の知識もないのですから、授業の内容を理解するのが困難なのは当然でしょう。」

     アズールは更に、ゆっくりと言い募る。

    「そういうときは一人で何とかしようとせず、誰かに頼りなさい。人を頼るのは弱いことでも恥ずかしいことでもありません。あなたの周りには、ジャックさんやリドルさんやジャミルさん、ほかにも勉強のできる方がたくさんいらっしゃるでしょう? あなたが頼めば皆さん快く教えてくれると思いますよ。それでも気が引けるのなら、なにかお礼でも持っていけばいい。」

     「あなたが望んでくれれば僕だって」と小声で付け足してから、アズールは監督生に手を伸ばして大事なものに触れるような優しい手つきで頭を撫でた。

    「あなたはじゅうぶん努力していますよ。情けないだなんて、自分を貶めないでください。」

     アズールの言葉に、監督生は涙がたまりかけていた目を見開いたが、その顔はすぐに照れ笑いに変わる。

    「努力家のアズール先輩にそう言ってもらえるなんて、嬉しいです。」

     頬を染めて笑う監督生にアズールも眉を下げて笑みを返す。アズールはもう一度監督生の頭を撫でて、

    「ほら、目を瞑って。しっかり休んで、早くいつもの元気なあなたになってください。」

    と促した。監督生はこくりと頷き、しばらくしてすうすうと寝息を立て始めた。
     アズールは監督生が寝ついたのを確認して、椅子から立ち上がり皿の載ったお盆を持つ。そして扉を開けて一度振り返り、監督生を見つめた後、足音を立てないようにそっと部屋から出ていった。
     ーー翌朝、監督生は窓から差し込む太陽の光と小鳥の囀りに意識を浮上させた。
     いつもなら朝の空気の冷たさにぶるりと震えるところだが、心なしか今日は温かい。横を向いて寝ている監督生の首の後ろにグリムがぴったりくっついているからだろうか。それならいっそグリムを抱き枕代わりにしちゃおう! と、体の向きを変えようとしたのに、腰のあたりが抑えられているような感覚があり動くことができない。それだけでなく、頭の下にも温かなものがあることに気が付いた。この温もりは、まるで人の体温のような…?
     いつもと何かが違うと察した監督生はそうっと目を開ける。そこに見えたのは、部屋の壁、ではなくさらりとした白い布だった。いつも自分が着ている制服のシャツにそれはそれはよく似ている布だ。次にそろりと顔を上げてみる。すると、口元に黒子がある綺麗な男性の顔が目に入った。紛れもなくアズールだ。
     監督生は、ここでようやく自分がアズールに腕枕をされ抱きしめられていることを理解し、驚いて思わずのけぞった。すると、

    「…ん、監督生さん、僕から離れないで…。体が冷えてしまいます…。」

     と眠気を含んだ声のアズールに抱き込まれる。監督生は恥ずかしさに体がかあっと熱くなり、無意識にアズールの胸元をぎゅっと握った。
     監督生の身動ぎに、今度はアズールが意識を浮上させる。目を開けて自分の胸元を見れば、耳まで赤く染めてシャツを握る監督生の姿があった。
     ああ、可愛らしい、と微笑ましく見ていたアズールだったが、意識がはっきりするにつれて、この状況に照れと焦りと監督生の許可なくベッドに入り込んだ罪悪感が心の中に巻き起こり、がばあっと勢いよく上体を起こした。

    「ちっ、違うんです監督生さん! 昨日、寮に戻ろうとしたらグリムさんから『子分が寒そうにしてるから一緒に温めろ』と頼まれまして…! あっ、お風呂にはきちんと入りましたからご安心を!」

     アズールがわたわたと言い訳を連ねていたとき、部屋の扉ががちゃりと開いた。そこからひょこりとジェイドとフロイドが顔を出す。

    「小エビちゃん、アザラシちゃん、アズール、おはよ〜。朝ごはんできたんだけどぉ、小エビちゃん談話室で食べられそう? …てか何してんのアズール。」
    「おや、これはこれは…。アズール、あなたという人は…。」
    「小エビちゃんが弱ってて抵抗できないからって…。アズールサイテーじゃん。」
    「ジェイド! フロイド! わかってるくせに、からかうのはやめてください!!」

     昨夜、アズールは自分もスープを食べてから食器を新い、オクタヴィネル寮に戻ろうとした。しかし、風呂から上がったグリムが「いま子分の様子を見に行ったら、布団の中で寒そうに丸まってたんだゾ! このままじゃ風邪が悪化しちまう! アズール、子分を温めろ!」と必死になって頼んできた。そこでアズールは即座に、オンボロ寮に泊まることと、翌日に朝ごはんを用意しに来るようジェイドとフロイドにメッセージを送ったというわけだ。
     騒がしい朝ではあったが、監督生が楽しそうに朝食をとる姿にジェイドとフロイドも安心したようだ。
     オクタヴィネルの三人は食後の後片付けをし、オンボロ寮を後にした。アズールは監督生に、今日一日くれぐれも体を休めるよう言い聞かせることを忘れずに。

     寮へと戻る道すがら、三人は監督生の話をする。

    「小エビちゃん、思ったより元気そうでよかったぁ。」
    「そうですね。アズールからオンボロ寮に泊まると連絡があったので心配していたんですよ、僕たち。」
    「食事もとれていますし、薬もありますから、きっとすぐに良くなるでしょう。」

     「そうだね〜」と相槌を打ったフロイドが、「でもさぁ」と続けた。

    「アズール、ほんとに小エビちゃんに何もしてないの?」
    「はぁ!? するわけないだろう!?」
    「小エビちゃんのお尻とか胸とか触ったり…。」
    「そのような不謹慎なことは断じてしてない!!」
    「ですが、額に口付けるくらいはしましたよね?」

     ジェイドの指摘に、アズールの肩がびくっと跳ね上がり目が盛大に宙をさまよった。アズールの不審な動きを見てジェイドとフロイドはにやぁっと愉しげに笑う。

    「やっぱやってんじゃーん。サイテー。」
    「監督生さんの寝込みを襲うとは…。サイテー、ですねぇ。」
    「うううううるさい! あんなに距離が近かったら我慢なんて……ではなく!! お前たち、その笑いをやめろーー!!」


     後日、監督生はすっかり元気を取り戻した。そして相変わらず勉強に奮闘している。ただ一つ以前と違うのは、その隣にアズールの姿をよく見かけるようになったことだ。
     二人の恋をどうやって進展させてあげようか。ジェイドとフロイドは今日も二人を温かく……いや、興味津々で見守っている。
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