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    麻邑(まゆう)

    @Mayuu_BAIKA

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    麻邑(まゆう)

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    ○恋心はあるけれどまだそれに気付かないリド監です。
    ○監督生とエース・デュース・グリムがリドルに勉強を教えてもらう話です。
    ○監督生の一人称は「自分」です。

    #twstプラス
    twstPlus
    #twst夢
    #リド監
    lido
    #女監督生
    femaleCollegeStudent

    まだ恋だと気付かない 試験が近いある休日の午後、監督生とグリムはエースとデュースに誘われて、ハーツラビュル寮の談話室で勉強会を行っていた。
     前日にエースから、監督生も呼んで談話室で勉強会を開くときいたリドルは「それはいい心がけだね。ならばボクも談話室にいることにしよう。わからないことがあればボクに質問するといい」と提案し、いまは監督生たちの向かいのテーブルで読書をしながら、大きいソファに横ならびに座って勉強に励む三人と一匹を見守っている。
     ところが、初めこそ笑みすらたたえていたリドルの顔がしだいに険しくなっていった。それは、エースとデュースがしきりに監督生に話しかけるからだ。

     例えば、魔法史の復習をしているときにはーー。

    「ねえ監督生、この法律ができたきっかけって、この出来事があったからってことでいいんだよな?」

     グリムを挟んで監督生の左側に座るエースが、手に持った教科書と共に体をぐっと寄せる。エースが寄ったことで体を少しつぶされたグリムは思わず「ふなぁ!」と鳴いた。
     監督生も左側に体を寄せ、エースが指した部分に目を走らせて、

    「えーっと…そうそう、合ってる。自分もこの理由がよく理解できなかったから授業が終わった後にトレイン先生に質問したらね、詳しく話してくれて…。」

    と説明する。二人の顔が近くなっている様を見たリドルの胸にモヤモヤとした不快な気持ちが湧き起こり、その眉間に深い皺が刻まれていった。

     また、魔法薬学の復習をしているときにはーー。

    「教えてくれ監督生、この材料を使う時の注意点って、どこかに書いてなかったか…? 記憶はあるんだけど見つからなくて…。」

     監督生の右側に座るデュースも、エースと同じように体を寄せる。

    「うーんと、これは…。ほら、違う実験のときにこの材料を使ったでしょ? その実験の説明のところに書いてあったはずだよ。教科書めくっていい?」
    「ああ、頼む。」

     監督生がデュースの教科書をめくり、「ここ、ここ」と目的の部分を指し示した。その間二人の肩が触れていることに、またもやリドルの胸の中にモヤモヤが広がり、口がへの字にまがっていく。

     同じようなことが繰り返され、エースとデュースが監督生に体を寄せて質問をするたびにリドルはどんどん機嫌が悪くなっていった。だが、リドル自身にはその理由がよくわからない。なぜなら、グリムが監督生に体をくっつけて質問をしても胸にモヤモヤは起こらなかったからだ。
     もし「自分の頭で考えず監督生に質問をしてばかりいる行為」が不快であるのなら、グリムが質問をしたときにも同じような気持ちになるはずだ。それが、エースとデュースのときだけなのはなぜだろう? もっと言えば、彼らが監督生に体を寄せた時に更に不快になるのはなぜだろう?

     それは当然、嫉妬なのだが、監督生への恋心をまだ自覚していないリドルはその答えには辿りつかない。
     結論が出ないことにいつまでも悩んでいても仕方がないことと、とにかく監督生からエース、デュースを引き離したくて、リドルはついに口を開いた。

    「エース、デュース、グリム、さっきから見ていればなんだい君たちは。自分で考えもせずに監督生にきいてばかりじゃないか。」

     名前を呼ばれたエースたち、そしてつられて監督生も、弾かれたようにパッと顔を上げてリドルを見る。デュースがばつが悪そうに、

    「すみません! 監督生にきくとすぐに答えてくれるので、つい頼ってしまって…。」

    と気まずそうに視線を泳がせる。リドルは小さくため息をつき、

    「人にきくのは決して悪いことではないけれど、自分で考える力も必要だよ。それに、監督生は自分の勉強が進んでいないんじゃない? キミもわからないところがあるだろう?」

    と監督生に問いかける。監督生はおずおずと、

    「は、はい、実は…。」

    と頷いた。
     リドルは「そうだろう」とでも言うように首を縦に振り、自分のソファの隣をぽんぽんと叩く。

    「そこにいては勉強が進まないだろうから、監督生はこちらにおいで。わからないところはボクが教えてあげる。」

    と、リドルは監督生に笑顔を向けた。逆にエース、デュース、グリムには厳しい目を向け、

    「エース、デュース、グリムはしばらく自力で努力するように。困ったときは、監督生ではなくボクに質問をすること。」

    と言いつけた。二人と一匹は「え〜〜!?」と驚きの声をあげるが、リドルが気にする様子はない。
     エースたちの不満げな様子に、自分だけリドルの隣に行くことがためらわれる監督生だったが、リドルの「ほら、こちらへ」という優しい笑みに胸が高鳴る。監督生はゆるみそうな口元をごまかすようにささっと自分の勉強道具をまとめて立ち上がり、「よろしくお願いします」と軽く頭を下げてリドルのそばに腰掛けた。

     リドル・監督生と、エース・デュース・グリムに分かれてから、お互いの様子はまるで正反対だった。
     監督生に頼る前提だったエースたちは、あてが外れてうんうん唸りながら教科書や参考書をひっくり返している。
     監督生も教科書や参考書を確認しながら勉強を進めていくが、引っかかるところがあって手を止めると、リドルから「どこが分からないんだい?」とすかさず助けが入った。リドルの教え方も上手く、答えに至るまでの過程を丁寧に説明している。
     リドルとしてもエースたちを見捨てたわけではなく、ときおり彼らのテーブルに行っては監督生にしたのと同じように勉強を教えていた。それでも、もともとのやる気の違いもあって、エースたちがまだうめき声をあげている中、ちょうど三時頃に監督生は出題範囲の復習を終えることができた。
     そこにトレイがやってきて、リドルと監督生に声をかける。

    「二人ともお疲れ様。今日は天気が良いから外にお茶の用意をしておいた。頭を使って疲れてるだろうし、ゆっくりしてこい。」

     そう笑って寮の外を指す。監督生は驚いて思わずリドルを見、リドルはそれに笑顔で返した。

    「トレイの言葉に甘えようじゃないか。」

    ***

     「ずるい!」と騒ぐエースたちをトレイに任せ、リドルと監督生は寮の庭に出る。近くのガーデンテーブルに、トレイの言葉通り紅茶と苺のタルトが用意されていた。
     庭に出るまでエースたちを気にしていた監督生だったが、つるりと輝くポットやカップ、つやつや光る苺のタルトが目の前に現れてしまってはもうそちらに気を移さずにはいられない。
     リドルに促され監督生はチェアに腰かける。そして、リドルの「召し上がれ」を合図に二人はタルトを頬張った。
     甘酸っぱい苺の味が口の中にふわりと広がり、監督生は目も口も頬もゆるませる。
     一口一口を大事そうにその小さな口に運ぶ監督生をリドルは目を細めて眺めていたが、監督生はその視線に気付いてぽっと頬を赤くし手を止めた。食べるのをやめてしまった監督生にリドルが首を傾げる。

    「どうしたんだい? 美味しくなかった?」

    「いえっ、とっても美味しいです! でも、あの、夢中になっているところをリドル先輩に見られていたのが…恥ずかしくて…。」

     監督生はフォークを置いて肩をすくめた。リドルは一瞬目を見開いてから、ふふふ、と笑い出す。

    「ごめんごめん、ボクも自分で気付かないうちに監督生を見つめてしまっていたよ。にこにこしながらタルトを頬張るキミがとても可愛らしくてね、目が離せなかったんだ。」

     そう言われた瞬間、今度は監督生が目を見開く。リドルは監督生の反応にはっとして、もしかして自分はいまとんでもないことを口にしたのではないかということに気付いた。
     監督生を気味悪がらせてしまったろうか? リドルは慌てて何か言葉を続けようとしたが、その前に監督生が「あはは…」と照れて笑った。

    「ちっちゃい子どもみたい、ですよね? ううっ…、トレイ先輩の作るタルトが美味しすぎるのが悪いんです…!」

     生地は香ばしくてサクサクだし苺は甘酸っぱくてみずみずしいし、と懸命に言い訳をする監督生の姿がまた可愛らしくて、リドルは思わずふっと笑い、

    「恥ずかしいことなんてないよ、美味しいものを食べると笑顔になるのは当然だもの。さあ、紅茶も冷めてしまうから、いただこうじゃないか。」

    と監督生を促した。こうして、二人だけの楽しいティータイムは穏やかに過ぎていった。

    ***

     一時間ほど後にエースたちも無事に復習を終えた。
     監督生とグリムはオンボロ寮に戻り、一息ついてから夕飯を済ませ、いまはトレイがお土産にと持たせてくれた二切れの苺のタルトをデザートとして用意したところだ。
     しかし、グリムはぱくぱくと食べ進めるのに対して監督生はぼうっと苺のタルトをーーいや、タルトの上にのった苺を見つめている。ナパージュをまとった赤い苺はリドルのつややかな髪を思い出させ、さらに、その髪をふわっと揺らして「キミが可愛らしくて」と笑うリドルの顔が監督生の目に浮かんだ。その瞬間、監督生は顔を赤くし、両手で顔を覆って足をバタつかせる。
     「何やってんだ子分? 食わねえならオレ様が食ってやるんだぞ!!」と、自分のタルトをすでに食べ終えたグリムが監督生のタルトに手を伸ばしたが、監督生は目にも止まらぬ速さでその皿を頭上に掲げたのだった。

     一方、リドルも自室で監督生のことを思い浮かべていた。タルトを頬張るあの幸せそうな顔以外にも見せてくれた、勉強に真剣に打ち込む顔、わからないところがあって困った顔、リドルの説明を理解して納得した顔、問題が解けてほっとした顔……。これらもすべて可愛らしいと感じている。できるならもっともっと彼女のいろんな表情が見たい、誰よりも近くで。
     ーーどうしてこのような欲が湧き起こるのか、リドルはまだ理由を解明できずにいる。が、この甘い胸の疼きは「後輩への慈しみ」ではないことだけはなんとなく理解していた。
     勉強一筋で生きてきたリドルが、これが恋だと気付くまで、もう少しだけかかりそうだ。
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