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    おかしい、見たいところに一向にたどり着かない……
    (改行とかもてきとうです)、

    犬のフィガ口先生×大学生のミチル バイトを終えて、アパートの敷地に一歩足を踏み入れたミチルは、ふと覚えた違和感に、その場で立ち止まった。
     十六夜の夜。満月を過ぎたばかりの月が、晩夏の夜空を冴え冴えと明るく照らしていた。駅から10分ほど歩いた静かな住宅街の片隅にぽつんと建っている二階建ての小さなアパートは、あまり新しくは無いけれど綺麗に片付けられていて、町並みの中に違和感なく馴染んでいる。
     違和感の元を探して、きょろきょろと周囲を見渡してみるが、目に見えておかしなところは無かった。一棟しかないアパートの窓にはいくつか光が見えているが、そこで何か騒ぎが起きている様子も無い。念入りに確かめても収まらない胸のざわめきに、ミチルは斜めがけにしていた鞄の紐を、ぎゅっと握りしめた。何かを見逃したら、とてつもなく後悔するのでは無いか。そんな予感のようなものが、どうしても頭から離れない。

    ミチルの部屋は二階にある。一人暮らしを始めるときに、心配性の家族から押し切られて、少し家賃の高い二階の角部屋を選ばされた。隣の部屋は空き部屋で、そこ以外はは埋まった5世帯が住んでいる。アパートをさらに奥に歩くと古い洋館があり、そこに大家が暮らしていた。なんだかんだと面倒を見てくれる面倒見の良い人で、夜は自分の店にでているので今は居ないはずだった。
    (明かりが無いかだけ見てみようかな)
         茜色のブロックを敷き詰めて鋪装された駐車場を抜けて、庭の方へと抜ける。ミチルが引っ越してきた当初はほとんどが雑草だらけで放置されていた広い庭は、大家さんの好意でミチルがガーデニングのスペースとして使わせて貰っている。カーブを描くように埋め込まれたステップストーンの左右には、夏の盛りも過ぎたというのに、隙間も無いほどぎっしりと緑がざわめいていた。人目に付きやすい手前の方には華やかな色合いの花をつけるものを多く植えているけれど、奥に行くにつれてハーブの類が増えてくる。香りの良いそれらはミチルのお気に入りで、我ながらうまく育てられていると思う。ミチルは花壇、だと認識しているけれど、それらをよくお裾分けする一階の住人には「これは畑じゃねえの?」と指摘されていた。 あまりにもよく育つので楽しくなってしまい好き放題に手を広げていたので、そう言われればそうかもしれない、と思ってしまう程度の規模はある。
     踏み固められた土の道は、前日に降った雨でまだ泥濘んでいた。駐車場と違って灯りの無い庭は暗く、しかし月の明るい今日は何も見えない程では無い。ミチルが世話をしている花の甘い香りが、ふと風に乗って届く。そのなかになにか嗅ぎ慣れない匂いが混じっているような気がして、視線を彷徨わせた先に、等間隔に何か穴のようなものが、ぽこぽこと続いているのが見えた。しゃがみこみ、顔を近付ける。
    (あしあと?)
    それは、何か動物の足跡のようにみえた。猫ならばよく庭に現れるけれど、それよりもずっと大きい。その足跡の中に、何か暗い色が貯まっている。暗い中ではよく見えず、持っていたスマートフォンを懐中電灯がわりに掲げると、それは暗褐色に光った。
    (なんだろう)
    足跡を追い、通路を越えて、庭に踏み入る。
     別の住人には「魔女の庭か?」なんて例えられたりする庭の奥。グラウンドカバーとして植えたカミツレを踏むたびに、草の青い香りに混じって、甘い香りが立ち上る。その奥、所狭しと咲き誇る草花の中に、とてもおおきな犬が倒れている。
    「……!!!」
    慌てて駆け寄る。薄暗くてはっきりとは分からないけれど、灰色がかった毛並みとその大きな体は、もうこの国には居ないはずの狼のようにも見えた。
     その姿を間近で捉えて息を呑む。後ろ足の付け根辺りの毛並みが、血でべっとりと汚れていたからだ。
    (さっきの……!)
    傷口を検分しようと手を伸ばすけれど、月明かりがあるとはいえ、それができるほど明るくはなく、端末の明かりも頼りにならない。
     ふと視線を感じて顔を上げると、力なく倒れ込んでいた獣の瞳が、ミチルをじっと観察していた。ひどく静かなその目線は、動物らしくない理知的な光に満ちているように見えた。吠えるでも唸るでもなく静かにこちらを見つめた後、諦めてしまったような、そんな緩慢さで目を閉じてしまう。
    ーー放っておいてくれと、そう言われた気がした。
     その時、ミチルの心を締め付けたのは、寂しさだった。もしかしたら、人に捨てられたのだろうか。捨てられて彷徨う内に怪我をして、生きることを諦めてしまっているのかも知れない。
    ――そんな寂しいまま、終わって良いはずが無い。
    その瞳をのぞき込んで、そっと頭を撫でる。
    「一人ぼっちにはしませんからね」
     そう言って気合いを入れる。触れる部分に怪我が無いのを確かめて、ゆっくりと抱き上げた。
    「ううっ、重い……」
     他の住人に手を貸して貰った方が良かっただろうかと今更そんな考えが脳裏を過るけれど、ちらりと目をやった知り合いの部屋には寝ているのか、まだ帰っていないのか、明かりは灯っていなかった。
     体力に自信があるわけでは無いけれど、虚弱でも無いはず。重いけれど、これくらいなら何とかなる。慎重に、けれどなるべく急いで、自分の部屋へと急ぐ。
     階段を慎重に一歩ずつ登っている最中、抱き上げた犬が呼吸をする音が耳に入って、少しだけほっとする。すん、とこちらの匂いを確かめるように鼻を鳴らしているのは、警戒しているのかも知れない。見知らぬ人間に触れられていることに警戒はしても、暴れはしないのだからやはり頭の良い子なのだ。感心しながら、また一歩一歩、慎重に段差を踏みしめた。漸く部屋の前まで辿りついたところで、ドアの鍵が鞄の中だと思いだす。四苦八苦して鍵を取り出し解錠すると、どっと疲労感が沸いてきた。行儀は悪いけれど、足先で蹴るようにして扉を開ける。息をつきかけて、まだぐったりできないぞ、と慎重に犬を廊下に寝かせると、すぐ脇の洗面所から大きなバスタオルを掴んで一つしかない部屋に向かう。中央に置かれていたテーブルを端に寄せて、出来たスペースにタオルを敷く。再び犬の体を抱き上げてタオルの上に下ろすと、ペンライトを取り出して、今度は明かりの下で傷口を探す。
    「あれ?」
     しかし、毛並みを掻き分けて掻き分けて探っても、一向に傷口らしきものが見付からない。
    「怪我してるんじゃ、なかったんだ。」
     毛並みを汚す血の跡はまだうっすら湿っていて、そう前のもののようには見えなかったけれど、もうとっくに完治した傷だったらしい。もしかしたら、怪我をして弱っている間、食事が出来なかったのかも知れない。それで、お腹が空いて倒れていたとか?
    「わんちゃんでも、ハーブの匂いをおいしそうっておもうのかな?」
     クローゼットの中を探り、今度実家で買っている犬に持っていこうと思っていたウェットフードの封を切る。犬用のトレイはないので、深めの皿を二つ取り出して、それぞれにエサと水を注いで犬の頭の辺りに置いてやる。
    「食べられる?」
     まるでこちらの言葉がわかるみたいに、目だけがこちらを見た。けれど、体を起こすこともなく、とろんとした目をそのまま閉じる。床を掃くみたいに、尻尾が数回ふさふさと動いたのが、ありがとう、と言っているように見えた。
     実家に連絡をして車を持ってきて貰うようにお願いしようと思っていたけれど、体が熱を持っている様子も無く、他の不調も見えない。強いて言えば、とっても眠そうだ。思いついて首元の毛をかき分けて確認したけれど、首輪はしていなかった。緊急性はないのかも、と思うと、急に力が抜けてベッドへと座り込んでしまう。そのままごろりと寝ころぶと、スマートフォンを取り出して、犬を拾った時の手順を確認する。 人に対して唸ったりもしないし、首輪は無かったけれど、どこかで飼われていた犬なのかもしれない。幸い明日は土曜日だ。病院に連れて行って、交番に届けを出してこよう。ペットは可だったはずだけれど、保護したことを大家さんに連絡しなくては。
     そうやって翌日の段取りを考えて居る内に、ミチルの目蓋も落ちてくる。お風呂にも入っていないし、着換えてもいないけど、ただでさえバイトが遅くなって疲れていたのと、安心したのとで落ちてくる目蓋に抗えない。そのままミチルの意識は、夢の中へと落ちていった。
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