5/19 雨天中止の夜に「へえ…素敵なスポーツバーだね。サッカーファンも大勢通い詰める理由がよくわかるよ」
「だろ。俺と同じ顔したサッカー好きのオーナーのセンスには脱帽するぜ。俺も将来独立して自分の店持ったら、色々参考にしたいもんだ」
「そうか。君は確かダーツバーに勤めているんだったね。そちらにもお邪魔しても?」
「おお、遠慮なんかいらねえよ。それこそアンタらの番組終わった後で寄ってくれりゃいい、ほぼ夜通し営業してるんだから」
「それは有り難い。
今夜も声をかけてもらえて助かったよ、試合が中止ですっかり持て余してしまった。…それで、ティナは?」
「まだ何人かに声かけてから来るとさ。一昨日の試合は負けちまったが、この前の日曜のタキナカについては大いに語りたいんだと」
「あれは惜しかった。間違いなく今年のベストゲームのひとつに入るだろうな。
ノーヒットノーランまであと2アウトで達成ならず……実に惜しかったが、そこに至るまでが本当に立派だった。捕手のヤスダも素晴らしいリードだったね。次回の登板も楽しみだよ」
「投手陣もな…同期のツルサキだったり中堅のユゲが中々上がって来られないぶん、タキナカには期待したいもんだぜ。油断するとどえらい失点するが、今年は勝ち頭になれそうな気がする」
「同感だね。
やはり君は…ティナと考え方が似ているな」
「あ?んなこたねえよ、俺は良いものは良いと言う代わりに腹が立ったことは全部口に出して発散させるタイプさ。ティナみてえに悲惨な試合の後でもポジティブ探しできるほどお人好しじゃない」
「それは……はは。そこは私も同じだが」
「……で。惚れてるんだろ。あいつに」
「…。ああ。彼女の兄同然の君に隠し立てはしない。
確かに私はティナに特別な想いを抱いている。初めて会った時から…。
だが…」
「だが?」
「この気持ちを押し付けることはしたくないと…彼女と話していて、そう思った。私の個人的な感情よりも、今は彼女や…セッツァー、君のような素晴らしいティナの友人たちともっと語り合いたい。
良い試合のことも、情け無い試合のことも」
「なるほど、下心にはブレーキ掛けてお友達の線を優先したわけか……まあ懸命っちゃ懸命だな。フラれて終いの関係ほどつまらねえもんはないってね」
「手厳しいな、フラれる前提かい」
「どうだか」
「私の心情は、君にも共感して貰えると思うのだが」
「やめてくれよ、俺にとっちゃティナは妹同然なんだぞ。今更惚れた腫れたの感情なんざ……」
「…。わかった、そういうことにしよう。
だがライバル宣言なら、いつでも受けて立つからね」
「はいはい」
「―――こんばんは!遅くなっちゃった、セリスたちも来てくれたわよ!」
「あー、一気に賑やかになったな。
それじゃあオーナー、飲み放いまからスタートで頼むぜ!」
改めて膝突き合わせて言葉を交わした野郎二人。セッツァーの胸中は中々複雑なのだろうなとエドガーは察している。
でも、それはそれ!これはこれ!
先ずは週末勝利して、また美味い酒を飲みたいものだ!