『願い星(仮)』1.
それは、いつもの平凡な一日の終わりだった。いつものように授業を終えて、図書館で少し予習と復習をして。そしてオンボロ寮に帰ったらグリムと晩御飯の支度をして、ハーツラビュルへ遊びに行く彼を送り出す。今日はラウンジのシフトが無いフロイド先輩も部活終わりに遊びに来ると言っていたので、それを待つ間にクッキーを焼いてみようかな、と珍しく思い立った。
この右も左も分からない世界に来てから、なんだかんだであっという間に一年が過ぎていた。暴れ逃げるグリムを必死に追いかけた入学式も、やっとの思いで生徒として受け入れてもらえたのも、もう随分と前のことだ。各寮での厄介ごとに首を突っ込んでは巻き込まれ、しかしそのお陰でいざと言うときに助けてくれる人も増えたことで、もうすっかりこの学園に馴染んだと自分でも自負していた。
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