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    とうも654

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    とうも654

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    DC夢。諸伏高明夢(になる予定の試し書き)
    ※無断転載禁止。微クロスオーバー要素あり。年上夢主。

    試し書き「えっ、私が長野に⁉︎」
     突然の話に思わず目をパチパチと瞬かせた私に対して、蘭さんは申し訳なさそうに呟く。
    「お父さんとコナン君だけじゃ心配で……」
     彼女の父親は探偵事務所をやっており、最近は殺人事件までも解決してしまう名探偵として名を馳せている。
     しかし今回、私が探偵事務所を訪れたのは依頼があったわけではなく単なる偶然だった。
     普段は「何でも屋」として様々な仕事の手伝いをしており、今週はケガで入院してしまった喫茶ポアロの店長から頼まれ、一従業員として働いている。
     喫茶ポアロは毛利探偵事務所があるビルの一階で経営しているため、テナント主であり、常連客である毛利探偵に時折差し入れをしているらしい。
     はっきり言ってしまえば、消費期限が近い食材の有効活用であると、従業員の榎本さんは言っていた。
     今日の私のシフトは午前で終わりだったため、毛利探偵に差し入れを渡してそのまま帰るつもりだったのだが、困り果てた様子の蘭さんに「自分の代わりに長野に行ってほしい」と頼まれ、今に至る。
     蘭さんは近いうちに部活の大会があり、同行するのは無理とのこと。
     明日と明後日は休みなので別に行っても大丈夫だが、部外者である自分が即答しても良いものか迷う。なにせ、今回毛利探偵に依頼したのは長野の警察官。しかも今すぐ事件現場に向かうという。どうやら緊急を要する事件なようだ。
    「特に予定はないので同行はできますが、関係者でもない私が着いて行ってもいいのでしょうか?」
    「行こうよ**さん!」
     二人の警察官と毛利探偵の顔色を窺っていた私に無邪気な声音でそう言ったのは毛利探偵が預かっている少年、コナン君だった。
    「**さんは鋭いし、おじさんとは違う視点から思わぬヒントが見つかるかもしれないよ」
     にこりと私を見上げるコナン君からは小一らしからぬ、何かを企んでいる気配を感じた。声には出さずとも「行くよね」と圧をかけられている。
    「そのボウズがそこまで言うのなら俺は構わねーが」
     左眼の瞼から頬骨にかけて大きくバツの字の切り傷が刻まれた色黒の男性がチラリと毛利探偵を見遣る。警察官らしからぬ風貌だが、彼は長野県警の警部だと言う。
    「**さんがいてくれたらガキの子守りも助かるから俺としてもぜひお願いしたい」
    「では、よろしくお願いします」
     毛利探偵からも了承を得られたので私達は早速長野へと向かった。
     隻眼の警察官からの見慣れない生き物を観察するような視線が気になったが、彼のバディである女性警察官は私に対して特に気にした素振りがなかったので気に留める必要はないかと思い、気づいていないフリをした。

     事件があった館に到着するや否や、私達は真っ先に事件現場に足を踏み入れた。
     白い壁に囲まれた部屋は一面だけ赤く塗られ、部屋の真ん中には黒と白の椅子が背中合わせになるように足元を釘で固定されている。
     被害者はこの部屋に監禁され、そのまま餓死。毛利探偵とコナン君は部屋の中を一つ一つ観察するが、私は本職でもなんでもないため自由に見させてもらうことにする。
     部屋の真ん中に立ち、赤く塗られた壁を全体的に眺めてみたがやはりこれだけでは何も分からない。しかしこれが被害者が残したダイイングメッセージであるはずならば、まだ何かヒントがあるはずだ。
    「椅子……」
     被害者は絵描き。絵と椅子があれば最初に思い浮かぶのは鑑賞するため。もしそうならなぜ赤い壁側だけでなく何もない白い壁側にも椅子があるのだろう。
     順番にゆっくり交互に視線を動かす。
     赤、白、赤、白……。ふと、視界に壁の色以外の物が見えた気がしたが、ちょうどその時後ろから肩を叩かれた。
     驚いた私が振り向くと、長身の八の字髭が特徴的な男性が静かにこちらを見下ろしていた。
     壁を見るのに夢中になっていたせいで彼が入って来たことに全く気づかなかった。男性は口元を小さく綻ばせ、柔らかな笑みを浮かべる。
    「どうやら私に気づいていなかったみたいですね」
    「えぇ、すみません。私は毛利探偵の付き添いできた**と申します」
    「では改めて、姓は諸伏、名は高明。あだ名は音読みでコウメイ。どうぞお好きにお呼びください」
     丁寧な物腰で名乗った男性もまた警察官らしい。まだ出会って間もないが、色黒の警察官──大和警部と遜色ないくらい彼もキャラが濃そうだなと思った。

     事件現場を見終わった後は大和警部は毛利探偵と話があるらしく、私とコナン君は諸伏さんの車に乗り四人の容疑者のもとへ事件について話を聞きに向かうこととなった。
     後座席に座ったコナン君が小声で私に話しかける。
    「**さんは何か気づいたことある?」
    「容疑者、被疑者の共通点が名前に色が入ってることがヒントになると思うんだけど」
     私が見た物はミステリー小説の主人公のような洞察力を持つコナン君ならすぐ気づくことだろうし、素人に毛が生えた程度の推理しかできない私が口を挟むのもいかがなものか。
    「まずは容疑者の方とも会ってからかしら」
    「……そうだね」
     諸伏さんからは容疑者に話を聞いている間は車内で待っているように言われたが、コナン君の普段の行いからして彼が大人しく待つはずがない。
     蘭さんならまだ止めただろうが、お互いにただ者ではないと気づいた者同士。コナン君は私なら邪魔をしないと考え、誘ったのだろう。
    「全く……私はこれでも〝一般人〟なんですが」
    「ははっ、どの口が」
     コナン君の笑い声が聞こえたらしい諸伏さんとルームミラー越しに目が合ったような気がした。

     案の定、一人の容疑者宅で降りた諸伏さんの後をつけるコナン君を追いかけ、「すみません」と慌てたフリをしてコナン君に軽率な行動を咎めるような視線を向ける諸伏さんに頭を下げた。
     これで一応、保護者の役は果たした。私は諸伏さんの背中越しに容疑者の一人である、翠川尚輝という男性を相手に気づかれない程度に注視する。
    「だって! 小五郎のおじさんにどんな人達か教えなきゃいけないしー……」
     大和警部がわざわざ東京まで行って事件の捜査を依頼したため、そう言われては諸伏さんも強くは言えないのだろう。
     その調子で他三人から話を聞き、諸伏さんが「ノブに指紋が付いていた」というカマをかけた際、一人だけ異様な反応を示した直木司郎への疑惑がより深まることとなった。
     全員の話を聞き終え、大和警部達と合流するために車に乗ろうとしたら諸伏さんに突然「待ってください」と止められてしまった。
    「**さんは助手席にどうぞ」
    「え?」
    「あなたからも事件のことで気づいたことがあればお聞きしたいと思いまして」
    「はあ……」
     気の抜けた返事をしてしまったが諸伏さんは助手席のドアを開け、出会った時と同じく小さく微笑んだ。
    「気づいたというほどのことはありませんが」
    「どんな些細なことでも構いません」
     そう言われてもな、と後座席に座るコナン君に視線を向けると彼は顎に手を当て、事件について整理している真っ最中らしかった。
    「僕はあなたに聞いているのですよ」
     横目でちらりと私を見た諸伏さんに内心、ええっと困ってしまい、思わず眉を寄せた。今の時点で私が言えること、とすれば。
    「強いて言うなら、今夜は見張らなくていいんですか?」
    「直木司郎をですか」
    「彼もですが、みどり……翠川尚樹もです」
     私がその名を口にした途端、車内はエンジン音を残し、静かになる。
    「……それはなぜでしょうか?」
     数秒間を置いて尋ねた諸伏さんにどう答えようか迷い、結局思ったことをそのまま話す。
    「すみません。ただの勘です。まあ、まず事故でもなければ直木司郎ではないでしょう。アレは人を殺すようなタマじゃない」
     ただの一般人がまるで殺人者を見たことがあるような口振りに諸伏さんが不審に思っただろうことは顔を見なくても分かる。
     だが、ついでに推理らしきものも添えて置けばそれっぽくはなるだろう。
    「あとは赤と白の壁。ゆっくり交互に見るともやが見えるんですよね。あれ、なんて言ったっけ──」
     名前が出てこず、考え込んだその直後諸伏さんが突然道脇に車を停め、自身の携帯を取り出した。
     そして私を見て、まるでヒーローに憧れる無垢な少年のように瞳を輝かせる。
    「流石です、**さん」
     どういう意味だろう、と諸伏さんの言葉の意味を考える前に後ろから身を乗り出したコナン君に「それを早く言え!」と怒られてしまったのでそれどころではなくなってしまった。

     その後、事件は直木司郎と翠川尚樹が密会する現場を押さえ、ほどなくして解決した。
     なんだか毛利探偵の活躍の場をなくしてしまった気がするが第二の殺人が起きないことに越したことはないだろう。
     犯人はやはり翠川尚樹であり、直木司郎はそれをネタに彼をゆすっていた。昨夜の密会は口封じのため直木司郎を殺すつもりだったらしい。
     犯行の動機も判明し、事件は一件落着。思ったよりも早く東都に帰れそうだ。
    「……ダメだ。やっぱり思い出せない」
     私が車内で諸伏さんの質問に答えたあと、彼はろくに説明せず事を進めていたのであれからずっとあの現象の名前を考えている。
     コナン君に聞いてしまえば早いが、それは最後の手段。一度気になってしまうとできれば自力で思い出したくなる。
     大和警部と毛利探偵が話している間、少し離れたところで一人頭を抱えていた。
    「かげおくり、みたいな……残像が目に残る……残像、残像」
     あともう少しで分かりそうなのに。歯痒くてそろそろ諦めてしまおうかと思ったその時、後ろから耳障りのいいバリトンボイスがはっきりと届いた。
    「補色残像、ですよ」
    「あぁ! 諸伏さん」
     それだ、と人差し指で空を叩くようにピンっと指を立てた私を見て、彼は目元を緩ませた。
     そういえば、彼からはずっと私を邪険に扱うような雰囲気を感じ取れなかった。それどころか好意的な印象を持たれている気もする。
     彼とは初対面のはずなのだが。私の探るような視線に気づいたのか諸伏さんは口に手を当てて笑った。
    「そんなに見つめられては穴が開いてしまいます」
    「不躾でしたよね。すみません」
    「いえ、謝らないでください。恩人であるあなたを困らせたいわけではないので」
     諸伏さんはそう言うと声をひそめて私に囁いた。
    「二十二年前の長野の殺人未遂事件を覚えていますか? あの時、あなたに両親と弟を助けていただきました。当時中学生だった、諸伏高明です」
    「──あ」
     そこまで言われてはっと思い出したのは幼い弟を抱え、サイズの大きい学ランに袖を通した少年の姿。
     あの時見た聡明な顔立ちと目の前の男性の顔がぴったりと重なった。
    「あの時の少年⁉︎」
    「もう少年と呼ばれる年齢ではありませんよ。犯罪ハンターの**さん」
    「全く……」
     そこまで気づかれていたのかと思わずふっと笑みを漏らした。
    「よく私の本職を見破りましたね。優秀な警察官さん」
    「ありがとう、ございます」
     心からの称賛を受け、彼は心底嬉しそうに破顔した。
     コナン君すらまだ完全に辿り着いていない私の正体はハンター協会日本(ジャポン)支部に所属するプロハンターの一人。
     表向きは「何でも屋」として情報収集を行い、本業は日本で起きる事件の調査をしている犯罪ハンターである。
     時には警察とも協力することもあるが、個人で潜入調査を行うこともあるため基本は表舞台に顔を出さない。犯罪ハンターが関わった事件は警察内部でも限られた者しか知りようがないはずだ。
     それを彼は独自の調査で突き止めた。これはもう素直に負けを認めるしかないだろう。

     正確な年数は覚えてなかったが、確かに昔、私は長野でとある一家の殺人事件を阻止したことがある。
     あの時はたまたま休暇で東都から長野に遊びに来ていた。住宅街を通りがかったらふいに嗅ぎ慣れた鉄の匂いを嗅ぎ取り、急いで匂いの元へ向かうと玄関で一人の男が包丁を片手に、倒れた男を見下ろしている姿を見つけたのだ。
     只事ではないと判断し、咄嗟に男の頭を背後から殴り凶器を奪った私は迷いなく男の両肩の関節を外し、両手を背中に押さえ付けるように男の体をねじ伏せた。
     その際、通報と刺された傷口の止血をするように家の中にいた妻へ伝え、出血量は多かったものの刺された男はなんとか一命を取り留めたと人伝に聞いた。
     過剰防衛だったかも知れないが、プロハンターであればある程度のこと──殺人すら、許容される。ハンターライセンスとは世界的に見ても凄まじい効力を発揮する特別な資格であった。

    「僕はずっとあなたにお礼を言いたかった。あなたは父が一命を取り留めたと分かってすぐ姿をくらませてしまいましたから」
    「事件直後はメンタルケアが必要だと思い、様子を見ていましたがその後のことは警察に任せるべきだと判断したので。お礼も必要ありません」
    「あなたならそう言うと思いました」
     あの時の少年はポケットから携帯を取り出すとずいっと顔を近づける。
    「ですがそれでは僕の気が収まりません。必ずお礼をさせてもらいます。まずは連絡先を交換しましょう。表向きのでいいですよ、まずは」
    「ええっ」
    「眼鏡の少年から聞きました。『何でも屋』をされているようですね。今は所轄にいますが近いうちに県警本部に戻ります。県警警部の個人的なツテはいりませんか?」
    「君は顔に見合わず押しが強いな⁉︎」
     勢いにのまれ、つい砕けた口調になるが彼は気にするどころか逆に嬉しそうに距離を詰めるので断り切れず、ほとんど流される形で連絡先を交換することになるのだった。
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