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    huyuhi2

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    huyuhi2

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    ちっちゃいマク ある朝目を覚ますと、胸の上に何か小さないきものが乗っていた。
     マークは仰向けに寝転がったまま自分の胸元を見て、そのまましばらく見つめてから何度か瞬きをして、やっと何かいるな、と思って「うん?」と声を零した。見間違いでも幻覚でもない。二頭身のいきものは、大きく息を吸って揺れた胸の上でぽにゅぽにゅと転がって顔を顰めている。揺り落とされないようにするためか小さな手がマークの服にしがみついた。ぬいぐるみではなく、はっきりと自分の意思があるようだった。
     混乱する頭をどうにか落ち着けようと左右から感じるスティーヴンとジェイクの体温に意識を集中させる。ぴっとりとくっついた熱も、穏やかな呼吸も、いくらかマークの気を静めてくれた。ほっと息を吐いて再度いきものを見つめる。ちんまりとしたいきものは、どうしてか彼らではなく、マークそっくりだとしか思えない顔をして寝息を立てていた。
     自分以外に動きを見せることのない空間に焦れて「おい」と声を掛ける。どう見ても自分だとしか思えないかたちをしたいきものはゆっくりと目を開いた。ブラウンの目と目が合う。いきものはじっとマークを見つめて、それからもぞもぞと胸に身を沈めて小さく鳴いた。
     なんだこれ、と首を傾げる。
     似たような表情をしたいきものも同じ方向に首を傾けた。
     頭が重かったのか、バランスを崩した二頭身の『マーク』がマークの胸の上でぽよんと転がる。そのまま落ちていきそうになったのに慌てて手を伸ばし、下から支えるようにすくって受け止められたことにほっと息を吐いた。驚いたような顔をしたいきものがマークの指にしがみついている。高いところから落ちる経験はかなり怖かったらしかった。
     上体を起こし、ベッドに座っていきものを乗せた手を顔の近くへと持ち上げる。マークの手の中で座り込んだ『マーク』は、礼を言おうとしているようにみいみいと鳴いていた。
    「マーク、どうした?」
     聞こえたジェイクの声にぎくりと背が強張る。マークが動いたせいで起こしてしまったらしかった。左隣で起き上がった彼に申し訳なくて眉を下げる。もっと静かに動けば良かったな、と思いながらもこの状況をなんとかしてくれるんじゃないかと安堵してしまっていた。
     心配そうに眉を寄せた彼にどう言うべきか迷って、「これ」といきものを乗せた手のひらを見せる。ジェイクは目を見開いて一瞬固まり、大きく息を吸った口を勢いよく覆った。ひどく動揺したように指が震えている。叫ぼうとした咄嗟に飲み込んだようだった。
    「こ、これは……」
    「……ああ」
    「マーク……?」
    「そう……みたいだな。起きたらここに居て……」
     こっくりと頷いていきものを見下ろす。
     『マーク』は困惑したように眉を寄せて二対の目を見上げていた。
     「はゎ……」と不思議な声を零したジェイクが震える手を『マーク』に伸ばす。差し出された指とジェイクの目、マークの目を順に見てきつく服を握り締めた『マーク』は、おずおずと手を伸ばしてきゅっとジェイクの指を抱き締めた。
     キャアと悲鳴が上がる。
     驚いた『マーク』とマークがぴょんと跳ねた。
     スティーヴンはぐっすり眠ったままだった。
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