Unknown④ 布団に横たわって視界を閉じて、自分の中に入り込んで、呼吸の音だけを聞きながら開いた思考。
僕は先輩のことをどう思っているんだろう。
好きか嫌いで二分するなら間違いなく好きだ。少しでも嫌いの分が多ければ一緒に──ともすれば命を預け合う状況も有り得る──仕事なんて出来やしない、したくない、そこまで捨て鉢じゃない。
じゃあどうして好きに分類される?
それは先輩が強くて、仕事だって出来る、頼れる人だから──だよな、そう、そうだ。
それはずっと変わっていない。多少の違和感を抱き始めてからも業務に支障は全くなかったのだし、僕が気付いた変化だって無視しようと思えば出来るものだった。なにせそれはどれも、他の人は全く気に止めない程度のものだったのだから。
だったらどうして僕は気になって、見過ごせなくて、本人に直接聞くまでに至ったんだろう。
進んでは戻る思考。だけどそれでいい、前だけを見ていたら小さな取りこぼしに気付けない。
何度でも戻って、残らず見つけて、拾って、そうしていかないときっと、終着で大きく間違ってしまうと、そう思ったから。
確かに仕事に支障はなかった。
放っておいてもよかった。
なのに、そうはできなかった。
それは、どうしてだ?
僕が──僕だけが気付いた先輩の小さな変化、それは──今まで知らなかった、先輩の姿、だった、から、だ。
そう、そこにいた先輩は、僕の、知らない先輩、で、だから──
と──
思考が辿り着いた瞬間、無意識に目を見開いていた。
穏やかになっていた動悸が大きく跳ねたのは──
そうだ、それが、僕は──堪らなく、不安だったんだ。だから──
……ああ、そうか。
僕は、僕の知らない先輩がいる、という状態が、嫌だったんだ。
だから聞いたんだ。
僕は、先輩のことを、もっと知りたい。仕事中だけじゃなくて、それ以外も、もっと。
そう望んだから、だから──
に、続く先が、さっきまで眼前に立ちはだかっていた障害が綺麗さっぱり消えて、
はっきりと、見えたからだ。