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    オサハタ

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    オサハタ

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    若かりし頃のカズヤギのメモ。
    ふたりは同い年同期の設定。
    共に元カノ有り。
    気が向いたときに更新or予告なしで削除

    #カズヤギ

    taboo 同期で友人でもあるカズサがうちに来たのはとある明け方。事前にメールを受けて、やり取りの中でともに翌日非番であると分かるや否や、
    『酒持ってこれから行く』
    との返信を受けた数十分後だった。

    「急になんだよ」
    玄関を開けた僕の問いにカズサは無言のまま、あまり見た記憶のない仏頂面を返すだけ。
    「彼女に振られでもしたか?」
    それはなんの気無しの当てずっぽうだった。だが、いつだったか聞いてもいないのに惚気られたどこの誰かも知らない相手を引き合いに出した途端、生来垂れた目尻を精一杯引き上げた友人を見て僕はぎょっとしてしまった。
    「……悪い」
    図星だったのだろう、そう理解して、気まずく謝るこちらにカズサは
    「ヤギヤマは悪く無いけどぉ⁉︎」
    と玄関扉を閉めつつ不貞腐れつつ、ずかずかと部屋に上がり込んだ。

    「ま、飲めよ、お前の持ってきた酒だけど」
    大量に──本当にどれだけ自棄なんだこいつはと呆れるほどの量だ──持ち込まれた酒の中のひとつを差し出すと
    「お前も飲めぇ!」
    とカズサは僕にも別のひとつを寄越してきた。
     はいはいと受け取り一口含む、が、その間にカズサはもう一缶を空にしそうな勢いで喉を鳴らしていた。
    「あんまり気にしすぎるなよ、よっぽど惚れてたんだろうけどさ」
    「気にしてないけど⁉︎」
    月並みな僕の慰め、それを一蹴するカズサ。じゃあなんだこの急な来訪と酒の量は、という追い立ては避けるべきだろう、そのくらいは分かる。
     今はただ聞けばいい、カズサが語る内容を、適当であっても相槌をうちつつ──
     そう、ぼんやりと構えていた僕に、カズサが次に口にしたのは、
    「俺、お前じゃないとダメらしい」
    という、意味の分かりかねる、言葉。
    「……は?」
    きっと僕は今、随分と間の抜けた顔をしているのだろう。
     にも関わらず──
     友人、であるはず、の、カズサは、眉間に皺を寄せた、それはそれは真剣な目で、こちらを見つめていた。




     カズサは僕とは違う。
     そう意識したのは、思えば出会った瞬間だったかも知れない。
     当たり障りなく、目立たず、こなすべき事のみこなして、波風を立てず平穏無事に何もかもを終えられればそれが一番だと考えていた僕にとって、カズサは『衝撃』の一言だったから。
     大きな声で、何者にも臆すどころか待ってましたと言わんばかりに意気揚々と言葉をかけて回る、カズサのその様は僕にとって異次元そのもの。
     これは関わるべきではない、と、判断したものの一息遅く、目が合った──いや、合ってしまったカズサが僕の元に大股で近寄ってくるなり発した言葉は
    「なんか食うもん持ってる?」
    だった。
     思い返せばその時も、僕は
    「……は?」
    と、随分と間の抜けた顔をしていたのだろう。


     そのときに僕が持っていたのはラムネ菓子だった。
     『集中力が切れるのは脳の栄養不足、そういった事態にはこれがいい』とどこかで聞いて、それでお守り代わりに持ち歩いていたもの。
     それを、
    「……食うもん、と言われても、こんなものしかない」
    と容器を振って見せた僕に、カズサは──その当時はまだ得体の知れない、同期のうちのひとりでしかなかった相手は──生来垂れた目尻を更に引き下げてにかりと笑いながら両手を差し出した。
    「最高! それ美味いよな! くれ!」
    「……は」
    呆気に取られつつ、僕はその手に幾つかのラムネ菓子を乗せた。

     それが僕らの出会い。

     それ以降、カズサは僕を見るなり
    「今日のおやつは⁉︎」
    と駆け寄ってきた。
     数日は同じラムネ菓子だった。それでもカズサは
    「いつものやつだな!」
    とけらけら笑いながら口に運んでいた。
     それを、僕は、どうにか変えてみたかったのか、それとも他の意図があったのか、もう覚えてはいないが兎にも角にもある日、違うものを懐に忍ばせてみたんだ。

    「あ! ヤギヤマ!」
    とうに互いの名を認識するまでに至ってしまった僕らの間柄、いつものようにこちらを見つけるなり鼻息も荒く駆け寄ってきたカズサは、
    「ラムネくれ!」
    と言って手のひらを差し出した。
    「……ラムネで、いいのか?」
    「いい!」
    こいつはいつもよほど空腹なのか、それともそんなにあの、どこででも手に入るラムネ菓子が好きなのか、分かりかねるしやっぱり得体が知れないと胸中で独りごちつつ、僕はいつものラムネ容器と、そして、仕込んできたモノの両方を掲げて見せた。
    「どっちがいい?」
    そう聞いたときの、カズサの顔だけは今もよく覚えている。
     
     生来の垂れた目尻をぐわりと引き上げて、いつも向けていた笑みすらも引っ込めて、あの五月蝿かった口からは何の音も出ていない、そんなこいつを、見たのは初めてだったから。

     それを目の当たりにした瞬間、僕は
    (なんだ、こういうのは嫌いなのか、てっきり食べられるものなら何でもいいと思っていたけど。 ……まぁそれならいつもどおりラムネを渡せばいいか)
    と思った。
     だけど、それは違っていた。
    「何それぇぇぇ⁉︎ 初めて見たわ新商品⁉︎」
    と、カズサは普段よりも更に大きな声を出し、瞳をまん丸にして、頬の紅潮した顔を僕の手元に近付けた。
     本当にこいつは何なんだ、という、それまでに何度も抱いた思いがそのときの僕にも生まれていた。

     だけどこのときに感じたそれは、過去までの懐疑的なものではなく……そうだな、上手く言えないけれど、どこか面白可笑しく、愉快なものと捉えていたんだと思う。

     だから
    「お前のそんな顔、初めて見た!」
    と、カズサを驚かせるくらい、笑ってしまったんだろう。



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