鮮やかな色 なんでもない日に薄い色を付けたのは兄を思い泣いていた少女。
二度と会う事はないと思いながらも、泣き顔より笑顔で過ごしているだろうかと思う事もあった。
─槇村香。あんたの相棒の妹よ。
笑顔どころか男勝りな姿で再会したのは、あのときと同じ日付。
運命という言葉を信じてはいない。
少女から大人の女性へと変わる時間を共に過ごした。けれど、記憶にある色は変わることはなかった。
あの日までは。
─あんたの誕生日は3月26日よ。
淡い色が時間と共に色濃くなっていく。
いつ死ぬかも分からない裏の世界で、誕生日には共に過ごすと約束した。
もうすぐ日付が変わる。
俺の誕生日──香と初めて出逢った日。
ヘッドボードに預けていた背を離し、部屋のドアへと近づくとノックする音を耳にする。
「獠、入るわよ」
ドアが開き、部屋へと入る身体を引き寄せ抱きしめると、香から驚きの声があがる。
「ちょっと、びっくりするじゃない」
「香が来るの分かってたからな」
もう、と非難めいた声を出しながらも香は俺の背に腕を回す。
「お誕生日おめでとう、獠」
「あぁ、サンキュー。香」
色鮮やか日へと変えてくれたパートナーの額に唇で触れた。