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    花見をする👹学柱とその関係者

    心を癒すは花の宴「兄貴~」

    坂の向こうから年の離れた弟が大きく手を振っている。
    可愛らしく、愛おしい弟や、妹が一番上の弟の脇からわいわいと顔を出して高く可愛らしい声で兄ちゃん兄ちゃんの大合唱だ。

    例えそれが俺が持っている重箱を催促する声だとしても、あの前の生とは違い、少し生意気で、家族よりも友達をとる弟たちも居るが、それでも、全員が居なくなることを体験した俺にとっては全てが愛おしくて全てが可愛らしく見える。

    まぁ、今後のために多少は厳しくしている自覚はあるが、全員素直に育ってくれている。

    「お待たせぇ」
    「兄ちゃん遅い~」

    きゃあきゃあと重箱をおろせば子供たちが楽しそうに腰やら足やらにしがみついてくる。

    奥で困ったように笑う母ちゃんと親父に、前の時もクビを切られるまではいつもこんな感じだったなぁと笑ってしまう。

    生まれた時から生前の記憶があった。誰にも言った事はなかった。
    あんな辛い記憶を話をする必要性を感じていなかった。
    だから言わなかった。
    でも、出会っちまった。

    母ちゃんの後ろからぞろぞろと現れたメンバーは皆記憶を持っていた。俺と出会ったあの職員室で泣きながら抱き締めあったのは最近の出来事だ。

    「追加の料理と酒とジュースとおやつだぁ」
    「ありがとうねぇ、実弥」

    ほわほわと笑いかけてくる、母ちゃんと既に酔っぱらいの親父。
    宇髄は嫁三人を連れて、冨岡は姉を連れて、胡蝶姉妹は寄り添って、時透は双子の兄を連れて、甘露寺は伊黒と鏑丸と、煉獄は両親兄弟を連れて、悲鳴嶼さんは御館様ご夫婦とご子息と一緒に参加してくれた。

    皆が幸せそうに笑う姿、楽しそうな声、薄桃色と空色の二色の世界で大きな青いレジャーシートには一緒に戦った戦友と、その戦友の守りたかった人達が集まっている。

    あの頃の俺が喉から手が出る程に見たかった光景が目の前に広がっている。

    お互いを愛し、愛され、泣いても辛そうに顔を歪めてもいない両親。
    笑いながら、ゆっくりと食事を楽しむ甘露寺や煉獄。それを楽しみ酒を嗜む伊黒。
    姉に世話をやかれながらも目を細める冨岡。
    うちのちびどもと楽しそうにじゃれあう時透。
    宇髄と酒の飲み比べをして真っ赤な顔をしている悲鳴嶼さんと、それを応援する胡蝶姉妹。
    胡蝶の末っ子と学校の事を楽しそうに会話するうちの次男。

    目を細めて、戦友の和の中にビールやら日本酒やらを置いて、煉獄の傍に食い物を、甘露寺の傍にはおやつを置いた。

    「おかえりなさい不死川さん、遅かったね」
    「家まで帰ってきたんだよ。こいつら量食うしなぁ」

    一番下の弟に潰された時透が俺に気づいて手をプラプラと振ってくる。
    コイツのこの年相応の子供らしい顔なんて見たことがなかった。
    今は昔みたいな表情はない。本当に普通の子供の顔をして笑って怒って幸せそうにしている。

    「コンビニ近くにあるよ?」
    「バカ、高くなんだろ。車あんだから激安スーパー行ったわ」
    「こんな日くらい高くなっても良いじゃん、割り勘だし」
    「割り勘でもだぁ金はあっても損はねぇ」

    桜を髪に絡ませた伊黒が呆れ顔でこちらを見ている。ムカつくので先程妹から渡された花びらが綺麗に残っている桜を頭にかけてやれば、肩の鏑丸が目を大きくして、ひっくり返った桜の花弁が帽子みたいに頭に乗ってて凄ぇ可愛いことになっている。
    伊黒は面白いくらいに髪に桜が引っ掛かって、もともと中性的な顔だからかこちらもまた可愛らしいことになっている。

    「きゃー!伊黒さんとっても可愛いわ!素敵だわ!綺麗だわ!!!」
    「そっ、そうか?」
    「うん!鏑丸君もとっても可愛いわ!」
    「あら、本当、とっても素敵ですよ」
    「あらぁ~本当だわ、伊黒君素敵よ」

    面倒くさい女衆が伊黒に群がったので、俺は酒のみ勝負をしているでかい二人の方に腰を下ろす。ちなみにお気に入りのおしるこを家から持ってきたので、勿論持ち込んだ。

    「楽しそうっすねぇ」
    「宇髄が、酒が弱いのが面白いんだぁ」

    へらへらと笑う悲鳴嶼さん、向かいには真っ赤な顔でわはわは笑いながら嫁を膝に乗せて一升瓶片手にフラッフラ揺れている。
    昔は樽で飲んでも全然顔色も変わらなかったのに、今はこんな風に酔うんだなぁ。

    まぁ、悲鳴嶼さんも同じだが、今はへらへら笑いつつ、下の妹のコ○ックのぬいぐるみを膝に乗せて猫可愛いとずっと撫でている。

    それのモデルはカモノハシだぞとは思うが、本人が楽しいならそれで良かろう。

    煉獄家はもうあそこだけで幸せそうに桜を眺めつつ伊黒に夢中の甘露寺の隣でもりもり俺がド○キで買ってきた焼き芋を食べる煉獄(兄)見を楽しんでいる。

    「不死川も飲むかぁ?」
    「俺はこれをいただいてますんでぇ」
    「不死川~お前ぇ、嫁より甘いもん好きらよなぁ~」 
    「おーおー好き好き。お前は嫁が好きだよなぁ」
    「めっちゃ好きぃ~~~愛してるぞぉ」

    わははと笑いながら嫁の頬に順番にチュッチュとキスして、嫁達は嬉しそうにキャイキャイ笑う。

    玄弥は楽しそうに時透と二人でご飯を食べながらじゃれあっている。
    こんな日々が続けば良いと、そう、思う。
    でも、あの記憶がなければ、こうして出会ってはいないだろうし、この何でもないような幸せに気づきもしなかっただろう。

    「母ちゃん、来年も同じメンバーで花見行こうぜぇ」
    「ええよ、実弥はお友達大好きやねぇ」

    うふふと笑う母ちゃん、昔の俺なら全力否定していただろうが、今の俺は失くすことが嫌すぎる。

    「おー好きぃ」
    「うちの息子は素直で可愛ぇねぇ」
    「顔は怖いけどな」

    母ちゃんは嬉しそうに笑い、親父がからかうように笑う。それでも昔と違って大事な息子だと思われてるのを知っているから嫌てはない。むしろ今の俺は親父も好きだ。
    幸せすぎてこっちまで笑顔になっちまう

    「あー!不死川君笑ってる!」
    「あぁ?んだよ」
    「笑顔が幼いんですね」

    胡蝶姉妹が俺の顔を覗き込んでくる。
    マジマジとじっくり覗き込んでくるが、俺が笑うとそんな変か?何かおかしい顔してんのか?

    「そうかぁ?」
    「うん、うふふふ、不死川君も幸せそうで嬉しいわ。また、来年も再来年もみんなで花見しましょうね」

    カナエが右手の小指だけ立てて手を伸ばしてくるので俺もその小指に同じ指を絡めて笑う。

    「私も」

    二人の指にもう一本細い指が絡み、しのぶがにっと笑う。
    コイツも記憶がある。最後の頃とは違ってカナエとは全く似てない、昔の勝ち気な性格のまま大きく育っており、大変糞生意気である。
    その違いもまた平和を謳歌している為だと思えば愛おしい。

    「来年は竈門達も呼ぶかぁ」
    「そうねぇ、卒業すれば贔屓とか言われないものねぇ」
    「えぇーでも僕は参加するよ?玄弥の友達として」
    「てめぇらは贔屓って言われねぇくらいレベルが高ぇからなぁ」

    小さい頭をグリグリ撫でてやると、うひぁと楽しそうな声がする。
    はぁー可愛い。

    「兄ちゃん!弟は俺でしょ!」

    ズボッと俺と時透の間に頭を突っ込んでくる次男がくっそ可愛い!
    頭を両手で頭を捕まえて髪がぐっしゃぐしゃになるまで撫でてやった。

    ざぁっと強い風が吹き、辺り一面がさくら色に染まる。
    世界は鮮やかで美しい。

    「ワハハ!桜酒だな!平和とぉ幸せにぃ~~~!!!!乾杯~~~!!」
    「「「「乾杯~~~!!!!」」」」

    宇髄の言葉に皆笑いながら、手に持った各々の飲み物をたかだかと掲げた。
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