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    くもがみ ねぎ

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    くもがみ ねぎ

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    【五夏小説】高♢專時代 しょ~こちゃん視点のふたりの話
    いつぞやべったーにあげてたやつ

    #五夏
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     六眼と無下限呪術の抱き合わせかつ御三家の一角、希少な呪霊操術の使い手、他人の治療も可能な反転術式の習得者。地位と貰ってる給料だけが高そうなおっさんたち曰く、今年の一年は近年稀に見るほどの豊作らしい。そうは言っても、私は別に誰かに評価される為にあいつらと同じ年に生まれたわけではないし、他ふたりもきっとそうだろう。偶然同じものが視認できて、同じような力を持っていて、同じ学校に入学しただけの話だ。だから正直、誰にどう思われようが知ったこっちゃない。私は私に出来ることをするだけ。そこは何があっても変わらない。それなりに勉強して、それなりの医者になる。私の進む道は、どんなことがあっても一本道だ。

     同期ふたりの呪力量はそりゃあもう相当で、それに比例するように術師としての志も高かった──いや、志が高いのは一方だ。もう一方は志よりも我儘度合いや甘味へ対する意識のほうがよっぽど高い。その癖そいつは気に食わないこと、嫌いなものには兎にも角にも盾を突く性分だった。
     その高尚さが鼻についたらしく、ふたりは反発し合うことが多かった。入学して早々溢れる怒りと呪力を抑えることなく「外でゆっくり話そうじゃないか」「話だけで済ませるつもりなら外出る必要ねぇよな?」なんて言って教室を飛び出していったとき、私は悟った。あいつらはただの馬鹿だ。深く関わってたらこっちの身が持たない。小中学にもちょっとやんちゃだったり喧嘩っ早い人間はいたりしたが、そういうのと同類だとしてレベルが違う。お前ら自分の持っている力を分かって高専に来たんだよな? 矛の納め時を知らない猛獣同士が本気でぶつかったとき、どうなるか分からない歳じゃあないだろうに。
     ズドン、と鈍い爆発音とともに窓越しに砂埃が巻き上がる。黄砂よりも深く黄色く濁った風が春の淡空を覆い尽くしたと同時に、アラートがけたたましく鳴り響く。これは確か、未登録の呪力が発生したときに鳴るものだったか。
     間もなくして何が起こっている、と担任がすっ飛んできたが、諸々の説明面倒だったので知りませんとしらばっくれた。

     騒々しい高専生活の幕開けから一ヶ月。大型連休明けのある日のことだった。
     いつのまにかふたりが下の名前で呼び合うようになっていて、どういうわけか私も巻き添えにあった(私からは名字呼びを貫いたけども)。ふたりの間に何があったのかは直接聞いていないので定かではないが、大方任務で息がピッタリあったとか、多分そんなだろう。
     その日を境に、ふたりが肩を組んで歩いたり、楽しそうにひそひそ話をしてたりするのをよく見かけるようになった。かといって喧嘩が絶えるわけでもなく、しょっちゅう言い争いをしていたし、術式行使に出てハリボテの寺やら校舎の一部やらをよく壊していた。その度に担任の鉄拳制裁を食らっていたのも何度も目にした。本当に懲りないと思う。ふたりとも頭がいい癖にふたり揃うとむしろ馬鹿になるというか、悪知恵が働きすぎると言うか。一言で言うと、クズ共ってとこかな。
     オマエのせいだ、いいや君が悪いとまた口論になりかけるが、その点夏油は五条よりほんの少しだけ大人で引き際をわきまえていると言える。最終的に夏油が先に折れたのを、ほとんどの喧嘩で目にしてきたからだ。
     逸材だとか人間離れしているだとか言われようが、私からしてみれば教室で見るふたりはどこをどう切り取っても年相応の男子でしかなかった。グラドルの好みがどうとかで白熱していた日もあれば、発売されたばかりのゲームをふたりして夜通しでしていたらしく至極眠たそうに授業を受けている日もあった。その日の教室は休み時間になっても嘘みたいに静かで、目の下に青黒いクマを作って大きな欠伸をする五条はともかく、目蓋を酷く重たそうにしてうつらうつらとしている夏油はかなり珍しかった。
     喧嘩することは多々あれど、アイツらはなんだかんだで仲が良かったんだ。たったひとりの同性の同級生、加えてお互い一般人には到底理解されない力を持った者同士。相性の善し悪しは当事者が決めることであって第三者が断言できうるものじゃないが、客観的に見てふたりの間には確かに信頼や信用、友愛といった色の感情が色濃く密に織り成されていた。だから色んな意味でどうしようもない呪術界でしぶとく煩く生きていくんだと信じて疑わなかった。無意識にも、ふたりの歩む道は同じだと思い込んでいたんだ。私も、恐らくは本人たちも。

     いつからだろうか。私が気付いたのは三年の春の終わりごろだったが、本当はもっと前からそうだったのかもしれない。
     三人とも単独任務の機会が増えて(私は高専の医務室での実習がメインだったけど)、教室で顔を合わせることがめっきり少なくなっていた。
     けれどもその日は丁度三人とも揃っていて、いつぶりだろうねぇ、と夏油がひどく嬉しそうに零したのを覚えている。私らの中でこういった再会を一番表立って喜ぶのが夏油なのだが、なんとなくその嬉しさが──確かに嬉しそうではあるのだけど──虚栄というか、ほんの少しだけ翳りが見えた。けど五条との会話はいたって普通で、昨日やってたテレビに五条の好きなアナウンサーが出てたとかなんとかで、髪切る前のが可愛いかったとか、私は今のほうが彼女に似合ってると思うだとかで、本当にとりとめのない話だった。見間違いか、とぼんやりしていた私に硝子はどう思う? と五条が意見を求めてきたが、私は別チャンネルのドラマを見ていたし、そもそもそのアナウンサーは好みじゃなかったので興味がないとしか返さなかった。
     確かに硝子、ああいうきゃぴきゃぴした子好きじゃなさそう。フフッと肩を揺らした夏油の表情はやはり僅かではあるが無理をしているように見えて、どこか曇っているように思えてならなかった。
     とはいっても、何かに気付いたところで裏を取る気があるわけでもなく。真面目なあいつのことだから、術師としての意味とか理由とか存在意義とか考えているんだろう。当の本人が考えまくって出した答えに他人の言葉を挟む隙はどこにもない。私はお節介を焼くようなタイプではないし、狭っまいところにわざわざ首を突っ込む気もなければ否定も肯定もしない。でもこれはあくまでも私の話。夏油の一番傍にいるあいつ──五条がどうかは、また別だ。

     夏の終わり、ふたりは袂を分かった。厳しかった残暑を越えて、ようやく過ごしやすくなったと感じられるようになった9月のことだった。
     教室は酷く静かだった。もう座られることのなくなった席の隣で、ひとりだけになった級友は頬杖をついてまるで魂でも抜かれたような顔で遠くを見やっている。
     先々月辺りまで馬鹿みたいに煩かったっていうのに、今や見る影もない。灰原が亡くなってからというもの、弔う間もなく任務に駆り出される毎日だったと聞いている。そんな中舞い込んできたこの世で一番信頼を寄せていたであろう友人の裏切りの報せ。五条を指名していた任務はすべてキャンセルになって、かわりに宛てがわれたのは"呪詛師"夏油傑の捜索及び捕縛、そして処刑だった。
     夏油のやったことは擁護できないが、さすがの私も酷だと思った。上の人間は自分が可愛いばかりで何も考えちゃいない。頭が固いから1か0かでしか結論を出せないし、五条が夏油の一番の友人だったという事実が考慮されることもない。しかし夏油を殺せるような術師が五条ぐらいしかいないのもまた事実だ。
     ふたりだって──なんなら私だって、こんな終わり方をするとは思っていなかった。あんたらはずっと調子づいてるぐらいが丁度いいし、お互いアクセルもブレーキも踏み合うような関係だったろう。なのにどうしてこうなったかね。辛気臭い男をどうこうできる程、私は世話焼きの女ではない。遠くに行くなら連れてくとか相談するとかしといてよ。面倒だよ本当に。

    「やってらんねー」

     もう煙草吸うしかねぇな。お気に入りの喫煙所である校舎西側の螺旋階段に行こうとガタリと椅子を鳴らしたところで、硝子、と覇気のない声で呼び止められた。

    「俺も着いてっていい」

     呪術師だとか呪詛師だとか、教師だとか教祖だとか、最強だとか最悪だとか。

    「あんたがしたいならそうすれば」

     なんて呼ばれようが、どんな枕詞がつこうが、それ以前にあいつらは──目の前にいる男は人間なんだ。不器用で、寂しがり屋で、大事な人を失うやるせなさを知って悲しさと怒りを覚える、普遍的な感情を持ったひとりの人間なんだ。

    「……言っとくけど慰めないよ」
    「いらねぇよそんなの」

     廊下に出ようと引き戸を開ける。五条も着いてくる。

    「硝子はそのままでいてよ」

     言われなくてもそのつもりだっていうのに、零れ落ちた言葉の真意に、私は奥歯を噛み締めずにはいられなかった。
     三人いつも一緒ってわけではなかったが、このときばかりはふたりでドアをくぐった現実を受け止めたくなくて、空席がみっつ佇んでいる教室に蓋をするかのように引き戸を閉めた。

     私がいまも私の席に座っているように、五条の左隣──あんたの席に座るのも、生涯ずっとあんただけなんだよ、夏油。
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    いつぞやべったーにあげてたやつ
     六眼と無下限呪術の抱き合わせかつ御三家の一角、希少な呪霊操術の使い手、他人の治療も可能な反転術式の習得者。地位と貰ってる給料だけが高そうなおっさんたち曰く、今年の一年は近年稀に見るほどの豊作らしい。そうは言っても、私は別に誰かに評価される為にあいつらと同じ年に生まれたわけではないし、他ふたりもきっとそうだろう。偶然同じものが視認できて、同じような力を持っていて、同じ学校に入学しただけの話だ。だから正直、誰にどう思われようが知ったこっちゃない。私は私に出来ることをするだけ。そこは何があっても変わらない。それなりに勉強して、それなりの医者になる。私の進む道は、どんなことがあっても一本道だ。

     同期ふたりの呪力量はそりゃあもう相当で、それに比例するように術師としての志も高かった──いや、志が高いのは一方だ。もう一方は志よりも我儘度合いや甘味へ対する意識のほうがよっぽど高い。その癖そいつは気に食わないこと、嫌いなものには兎にも角にも盾を突く性分だった。
     その高尚さが鼻についたらしく、ふたりは反発し合うことが多かった。入学して早々溢れる怒りと呪力を抑えることなく「外でゆっくり話そうじゃない 3755

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    kaoryu12273

    PROGRESS3~6月に出すかもしれない話の冒頭です。
    相変わらず記憶なし×ありの転生。
    舞台はずっと未来かもしれないこの列島の何処かです。
    もし一言でもあれば、こちらから!
    https://wavebox.me/wave/3vwvg0bho3p7xq56/

    イベント中に増えるかもしれないし、Xで連載をはじめるかもしれません。
    いつか一緒に 昨日知り合ったばかりの男は不思議な家に住んでいる。
     階段は外付けで、外壁は淡いミントグリーン、幼児が積み上げた積み木のように、少し凹凸のある三階建て。
     雨ざらしになっているせいか、ところどころ塗装が剥げていて、鉄さびが滲み出ている頑丈そうな階段を昇りきると、何もない屋上に辿り着く。本当に、何もないわけではない。洗濯物干しと台風でもきたら吹き飛ばされそうなプラスチックか何かでできている白い椅子が一つ、ぽつりと置かれていた。
     朝焼けも夕焼けも似合いそうな建物は、だけど北向きの路地に建っていた。周囲も家屋に囲まれているから、反対側がどうなっているのか、一見するだけではわからなかった。
     悟は目に付くあたりがどうなっているのか、その区画をくるくると歩いていた。平均よりもずっと長身の背丈を活かしても、やっぱりその内情は伺えなかった。
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