無題 ──今日は厄日だ。
アイゼンは目の前の惨状にはぁ、と大きなため息を吐く。
死神の呪いを自覚するアイゼンは、今まで幾度となく危機に立ち向かってきた。その度に何とか乗り越えてきたのだが──今回は少々酷すぎるのではないだろうか?
「──アイゼン❤︎」
今まで聞いたことがない甘ったるい声でアイゼンを呼ぶ少女──ベルベットは、その豊満な肢体を惜しげもなくアイゼンの身体に押し付けてくる。衣服越しに感じる柔らかな感触は心地よく、つい手を伸ばしそうになるのを何とか理性で抑え付けた。
「……ベルベット。離れろ」
惚れた女に甘えられて嬉しくないわけがない──が、それはあくまで本人の意思が伴っていることが前提である。正直な話、今のベルベットには個人の意思が全く感じられない。
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