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    逃避行漫画の描きたい所の一部…書きかけのプロット的な…描けるかな…なんかこういうのが見たくて…でも、1番描きたい所まで辿り着けるのか…パーカーお忍び姿のスレちゃん描きたいのでがんばっぞ…
    場面ぶつ切り、整合性も滅茶苦茶だが、メモ帳に書いてて一度、水星のネタ帳誤操作で全消しした事あるから、こっちにも残しておく……

    #グエスレ
    gueslé

    フロントの療養地にある総合病院の個室で彼女はずっと眠っている。窓からは作り物の空が、一日の終わりを告げる夕暮れ色に室内を染め上げていた。
    病室のベッドに広がる燃えるような赤髪を、静かに眠る顔を、そこに刻まれた幾重もの赤い筋をほんの一時眺める事だけが俺に許された行為だ。いや、そもそもそれすら許されていないのかもしれない。女が何も言わないのを良い事に彼女が目覚めるまでと言い訳をして俺は“見舞い”を続けていた。夕暮れ色だった空はほんの数分で夜の色が増していた。俺はそっとベッドから離れて病室から立ち去ろうとした。

    「…何ヶ月もずっと眠っている人の顔を見に来て、楽しい、ですか…?」
    「…起きて…いたのか…」
    俺は今どんな顔をしているんだろう。久しぶりに聞いた彼女の声に、心臓を鷲掴みにされたような気持ちになる。


    「…グエルさん、私をここから連れ出してください」



    「…行きたい場所があるのか?」
    車の助手席に座って窓の外を眺めるスレッタに問いかけた。
    「いいえ…どこでも良いんです、誰も私達を知らない場所であれば」
    そう言うと再び彼女は視線を車窓の外に移した。


    請われるままにスレッタを病室から連れ出した。頭では分かっている、そんな事をして彼女にも俺にも良い事なんてない。それでも、抱きあげた女の細い身体を手放す気にはなれなかった。

    しばらく車を走らせていたが、いつまでもドライブし続ける訳にもいかない。目的地が無い駆け落ちじみた逃走だが、行く宛はあった。いくつものフロント区間を通り抜けていく。



    「スレッタ、起きてくれ」
    「ごめんなさい、私いつのまにか寝てましたね」
    「動けるか?」
    「はい」
    目覚めた私は身体が少し浮いている事を感じた。シートベルトを外すと、グエルさんは手を取って腕を軽く引っ張り上げるように私の肩を寄せて車の外へ出した。
    「…ここは…?」
    車での移動だったのならコロニー内から出てはいないのだろうが、目にした光景はフロント内で今まで目にしてきた風景とはまるで違っていた。
    「コロニーの外れにある工業地区だ。ラグランジュポイントから離れた位置にあるから、一部を除けば低重力下の地域だな。ここは労働者が集まる場所だから、あまり治安も良くないし、女が来て楽しい場所ではないだろうが…
    「…いえ、少し水星の基地と雰囲気、似てて…」
    「…そうなのか」
    「はい、ちょっと懐かしいです」

    工業地域といってもクエタのような最先端の機械工業ではなく、もっと資材だったり昔ながらの工業が続く場所らしい。修繕されないまま年季が経った錆臭い場所だった。やっぱりここは水星に似てる。
    車は街の外れの駐車場に停めた。グエルさんがわざわざこの場所に来たのは、遠くへというのもあるだろうけど、自分で歩く事すら出来ない私を目立たずに移動させられる事が大きかったようだ。低重力下で浮いた身体を肩を抱き寄せるように支えられて、街中を移動した。大通りは避けて、継ぎ足されて入り組んだ通路を深く潜るように進んでいく。時々、人とすれ違うが一様に視線を避けて足早に過ぎ去っていった。


    ある程度、地下に潜ると重力下の区域に入った。横抱きだと両手が塞がるので肩に担がれるように持ち上げられ、歓楽街のような場所を通って行く。
    裏路地のあまり目立たない所にあるいかにもな古めかしい宿を見つけ、チカチカ光る看板を潜った。薄暗いロビーに入るとテカテカとしたパネルに部屋の内装が映し出されている。グエルさんは一番シンプルな内装の部屋を選び、宇宙居住区ではまず見かけない、“紙の紙幣(キャッシュ)”を機械に入れていく。ここは出稼ぎの“地球居住者(アーシアン)”が多く働いているので、地球圏の紙幣も流通しているらしい。何故そんなものをこの人が持っているのか。
    肩に担いでいた私を腕に抱え直して、客室へ向かう通路を歩いていく。
    「…すまない、普通のホテルではすぐに足が付いてしまうから、こういう所しか泊まれる場所が思いつかなくてな」
    「大丈夫です。なんだか手慣れてますね。学園から居なくなった時もこんな事してたんですか?」
    「絶対戻るものかって思っていたからな。見つからないようにするのに苦労した」
    「大変だったんですね」
    「いや、子供だっただけさ」
    「…そんなことないです」


    外観も部屋までの通路も古びていたが、内装は意外と綺麗に整えられていた。赤いカーペットに部屋の中央に大きなクイーンサイズのベッド、その脇には窓があり1人掛けのソファと申し訳程度のサイドテーブが置かれている。奥の扉がバスルームだろうか。グエルさんは担いでいた私をゆっくりとソファに降ろした。

    「少し顔色が悪いな…」
    「久しぶりに外に出たから少し疲れちゃいました……寒い…」
    「…身体が随分冷えてしまったな……入浴は出来るのか?その、俺に介助されるのが嫌じゃなければ。湯に浸かるだけでも、身体が楽になるとは思う」
    「………はい、お願いします」


    グエルは丁寧にスレッタの服を脱がせた。入院着だからあっという間に裸にされたスレッタをバスタオルに包んで、そのままスレッタを抱えてバスルームに向かおうとする。
    「グエルさん、そのままじゃ服、濡れちゃいます」
    「いや、しかし…」
    「着替え持ってないですよね。ここから出る時、困っちゃいます」
    「……分かった」



    試されていると、いや、確かめられてると何度も感じた。俺の行動を、視線を、言葉を。一つ一つ確かめた上で誘導されていると感じた。現に今だって、腰に頼りなくタオルだけ巻いて、腕の中には裸の彼女がいて風呂に入ってるなんて冗談みたいな状況に陥っている。似てない母娘だと思っていたけれど、コイツもプロスペラ・マーキュリーの娘なんだなと、なんとなく思った。彼女のやろうとしている事は薄々分かっている。しかし、理由がわからなかった。抱き抱えたスレッタの身体中に残るデータストームの痣が、酷く痛々しい。クワイエット・ゼロで彼女だけに全てを押し付け、キャリバーンに乗せた事を後悔しない日は無かった。寂れた古宿だと言うのに、無駄に広い浴槽ではスレッタが倒れ込まないようしっかり抱き抱えていなければならなかった。バスタオル越しに感じる彼女は長い療養でだいぶ痩せたと思う。それでも、腕に当たる胸の感触が柔らかい。細く真っ直ぐ伸びた脚が、華奢な肩が、湯に当てられてうっすら赤く染まっている。首筋に張り付く鮮やかな赤い髪が、艶かしい。ボロボロになった彼女の身体を前にしても、俺はスレッタに欲情していた。

    「…やっぱり少し恥ずかしいですね」
    「…少しどころじゃない」
    「そう、ですね…」
    「すまない…何もしない…何もしないから前を向いててくれ」
    「…はい」
    「もう少し身体が温まったら出よう」
    「…はい」



    なるべくスレッタの裸を見ないように接していたグエルだが、流石に身体を拭くにはスレッタの全身に触れる必要があった。必死に何も余計な事を考えないようにしてる様子の彼が少しおかしくて、なんて馬鹿な人なんだろうと思った。
    丁寧にスレッタの身体を拭って、彼女の長い髪をドライヤーで乾かした後、自身はおざなりに身体を拭いたままでベッドに横たえたスレッタから離れて狭い1人掛けのソファから動こうとしなかった。スレッタを傷つけないように、それでも1人にする事は出来なくて見えない境界線を守るように。


    「こっち、来ないんですか?」
    「…軽蔑してくれ。動けないお前を連れ出して、あまつさえ欲情してる」
    「やっぱりアナタ、本当に訳分かんないです」
    「……ああ」
    「私が寝たフリしてたこと、途中で気づいてましたよね」
    「…ああ」
    「なんでずっとお見舞いに来てたんですか…?」
    「……」
    「…グエルさん、私、貴方の目が好きです。澄んだ青なのに熱くて、真っ直ぐで優しくて、でも、寂しい目をしてる。貴方を悲しませてるのは私ですか?」
    「……」
    「貴方が私に向けるものを全部、ください。貴方が欲しいんです。私を愛して」
    「…………っ!!」
    ベッドからほんの数センチしか持ち上げられない腕で辛うじて差し出された手を、グエルは受け取らずにはいられなかった。絡めた指をそのままベッドに縫い付け、抱きしめるように覆い被さり女の唇に口付けた。
    「…好きだ…好きなんだ、スレッタ…」




    私はクワイエット・ゼロから帰って来た後、2ヶ月間も眠り続けていたらしい。意識を取り戻した時の接着剤で貼り付けられたように持ち上がらない瞼にもピクリとさえ動かせない指先にも酷く動揺した。最初にスレッタが目覚めた事に気づいたのはプロスペラだった。自身もデータストームの後遺症に侵されているからだろう、スレッタの困惑に安心しろと伝えるように、トン…トン…とゆっくり拍子をとりながら胸元に手を携え、スレッタの状況を教えてくれた。

    エリクトの事、ミオリネの事、地球寮の事、そして、グエルの事


    目が覚めて割とすぐにリハビリを受け始めた。麻痺した身体はどれだけ早くリハビリを開始するかでその後の経過が大きく変わっていくらしい。リハビリと言っても、介助士の手でひたすら関節の可動域を広げる為のマッサージだったり、支えてもらって立ち上がる練習をしたり、劇的に身体の機能を戻す事は不可能だ。今の私は満足に物も掴めないどころか、腕を持ち上げる力すら失っていた。特に両脚の麻痺が一番酷い。お母さんの後遺症も脚への症状が一番重く、ヘッドギアを外し素顔を晒した母は、日に日に衰えていく。近い将来、自分も同じ未来を辿るのだと思う。自分の身体が自分のものではないようで、それを承知で今があるというのに何も分かっていなかった自分が情けなくなる。



    「スレッタ、あの人もうすぐ来るよ」
    「うん、ありがとうエリクト」
    スレッタの検査着の懐からぶら下げられたキーホルダーのエリクトが声をかける。彼女は依然としてデータストームに適応したままなのだ。パーメットが使われている機械は、エリクトにとって手に取るように存在が知覚出来る。
    「スレッタがそうしたいって言うなら、ボクは協力するけど、いつまでもこんな事続けてられないよ」
    「分かってる、分かってるの…」



    グエルは仕事の合間を縫って、3日に一度はスレッタの病室を訪れていた。
    面会時間ギリギリで間に合わずに病院を後にすることもしばしばあったらしい。見かねたミオリネが病院側に掛け合い、グエルが来た時だけは面会時間の融通がきくよう調整したほどにグエルはスレッタの病室に通い続けた。ほんの数分だけ眠り続けるスレッタの顔を眺めてまた会社への道を引き返す。掛ける労力に比べて見合いもしない不毛な時間だ。
    なんて馬鹿な人なんだろう。何故、アナタはそうまでして此処に来るのか。そんな価値なんて私には無いのに。彼の前では寝たふりをし続けた。お母さんにもエリクトにもミオリネさんにも彼には私が起きたとまだ伝えないでと頼んだ。
    目を瞑っていても、彷徨った末にベッドの端に置かれた握り拳の手が、そっと私の名前を呼ぶ掠れた声が、否応なしに彼の感情を伝えてくる。それでも、私はグエルさんの目を見るのが怖い。眩しいくらい真っ直ぐに私を見つめてきた目が変わらない事も変わってしまっている事も、ずっと確かめられずにいた。







    絡めた指をそのままベッドに縫い付け、男は抱きしめるように覆い被さり女の唇に優しく口付ける。
    敬うように、慈しむように、決して女を傷つける事はしないように。この優し過ぎる男に同じように返す事が出来ない身体を呪った。
    止める男を宥めて、私はその先を強請った。


    身体の麻痺が残っていても、どろどろに溶け合うみたいにグエルを感じた。初めての行為は痛くて辛くて恥ずかしくて、でも彼の息遣いを、汗ばむ肌を、優しく抱きしめる腕を、張り詰めたグエル自身を感じれる自分に嬉しくなった。青い瞳が痛いくらい熱い。
    私はこの人が、好きだ。





    ----------------------





    またいつのまにか眠っていたようだ。てっきり飾りだと思っていた窓からはカーテンの隙間を縫って朝を告げる擬似陽光が差し込んでいた。
    左隣に感じる温かさに目を向ける。白く照らされた彼の顔には少し目元に隈が出来ている。以前よりも痩せたような気もする。それでも、今隣で眠る彼の顔は穏やかな表情で、昨夜も本人には伝えなかったが、前髪を下ろしたグエルさんはなんだか幼く見えて可愛いなと思った。





    ----------------------





    腕の中が暖かい。瞼に透ける光が朝になったと告げていた。ぼんやりと目を開けると、愛する女がこちらを見つめて笑っていた。

    「おはようございます、グエルさん」
    「…おはよう、スレッタ。すまない、起きていたのか」前髪をかき上げるように彼は目元を押さえ込み目を覚そうとする。
    「多分、まだ早朝ですよ」
    「身体は平気か?」
    「はい…あの、服着させてくれたんですね、ありがとうございます」
    「いや、昨夜は無理させたな」
    「私はグエルさんと、したの、嬉しかったですから」
    「俺も、嬉しかったよ」

    彼の目が愛おしげに細められる。まだ少し眠たそうな彼は私の頭に手を伸ばし、優しく撫でるように少し絡まった私の髪を手櫛で梳いていく。グエルさんの綺麗なブルーの瞳に真正面から見つめられるのはやっぱり恥ずかしい。
    あっそうか、何かに似ていると思ってたんだ。エアリアルのライブラリで見た、古い地球の映画であった光景を思い出す。



    「ねえ、グエルさん。私、行ってみたかった場所ありました。海、が見てみたいです」




    ----------------------



    (中略)




    ----------------------





    「…スレッタ…?」
    もぬけの殻になった病室を見て、ただ茫然とするしかなかった。あの子の病室に飾ろうと持ってきた花束を落としたせいで、青い匂いが嫌に鼻についた。



    グエルがスレッタを連れ去った。弟のラウダには、理由も言わずにしばらく会社を頼むとだけ、メッセージがあり、その後音信不通になっているらしい。
    方々手を尽くして探しているが、乗り捨てられたグエルの車が発見されたのみで、スレッタとグエルの行方は未だに分からない。グエルは学園時代、ベネリットの情報網を潜り抜けて3ヶ月近くも行方知らずになっていた事もある。スペーシアンの御曹司が一体、どこでそんな事を覚えたのか。
    「今時、逃避行とかあるのね」


    そもそも突然病室から姿を消したスレッタがグエルに連れ去られたとすぐに分かったのは目撃者がいたからだ。

    「プロスペラ!スレッタが病室にいない…!あの子あんな身体で…っ」
    「グエル・ジェタークと一緒に行ったわ」
    「アンタ、黙って見てたの!!?」
    「あの子が望んだ事だから」
    「…っ!」
    「あの子が望んだ事だから、私は彼らを止めなかった」
    私はそれ以上、プロスペラに何も言う事が出来なかった。

    2人が消えて3日経った。誰も居ないはずの病室に、人の気配がした。恐る恐る扉の開閉ボタンを押すと、ベッドに横たわるスレッタを見つめ続けるグエルの姿があった。両手でスレッタの手を優しく握りしめて、愛おしさを隠すことのない眼差しを向けるグエルと安心しきった表情で眠るスレッタの姿はとても美しかった。2人が愛し合っていると、男と女になったのだと、分かった。私はあの男の目を知ってる。あの目と一緒の目をした男を知っている。きっとこれは私が欲しくても、もう得られない関係。あの時、一歩踏み出せなかった私自身で終わらせてしまったのだから。
    2人を羨ましいと思った。それでも、私がスレッタを愛しているのも事実で、身体の動かない彼女に無体を働いた男を許せなかった。それが、彼女が望んだ事だとしても。
    ツカツカと病室に入っていくミオリネに気づいたグエルは待っていたとばかりに顔を見上げた。その顔目掛けて、力一杯、手を振り上げた。静かな病室にパシンッと破裂音が鳴る。
    もう、私は感情を止められない。泣きながらグエルに向かって吠えた。
    「アンタを信用した私が馬鹿だった!!!!」
    「自分がした事を分かっているの!!!?
    「今すぐ、ここから出て行って!!!!!」
    グエルはほんの一瞬だけスレッタの顔を見つめ、その手を放して何も言わないまま病室から立ち去った。

    「…ミオリネさん…駄目ですよ、そんな事しちゃ…」
    「スレッタ…」
    「ただいまです、ミオリネさん」






    「…なんで帰ってきたの?」
    「あの人は強い人だけど優しすぎて、私が一緒にいちゃ駄目なんです」
    「…それでも、アイツはアンタが望めば、一生大事にしたはずよ」
    「だから、です。あの人は心を与え過ぎてしまう」
    「ズルいんです、私。グエルさんの優しさにつけ込んで私の我儘につきあわせた。でも、もう離れなきゃ。私じゃ、隣にいてあげられない。あの人を縛っちゃいけない。もう何もあの人から奪いたくない」
    「…アンタが何かを奪ったなんて考えないわよ…あのバカは…」
    「私、大好きなのに抱きしめてあげられない苦しさを何も分かってなかったんです」
    「私達はクワイエット・ゼロでお母さん達を止めると選択をしました。私はそこから逃げてはいけないんです。お母さんの事もエリクトの事もガンダムの事も。それにグエルさんを巻き込めませんから。」
    「…それで、帰ってきたの…」
    「…ミオリネさん、私と結婚してくれませんか?責任取ってください」
    「うん……ごめん……ごめんなさい……」
    「どうして謝るんですか…?」
    「スレッタばかりに辛い思いをさせてる」
    「…そんな事ないですよ。だから、一緒にズルい女になってください」
    「愛してるわ、スレッタ」
    「はい、ミオリネさん」

    私は愛するこの子を、私が罪過の輪に縛り付けてしまったこの子を、ただ抱きしめる事しか出来なかった。





    ----------------------




    兄さんがスレッタ・マーキュリーを連れて、消えてしまった。不思議と落ち着いている自分がいるのは、こうなる事を心のどこかで予想していたからだろうか。


    クワイエット・ゼロでエアリアルから砲撃を庇われたキャリバーンは機体こそ無事だったが、データストーム負荷の反動で身体に強烈な痛みが走ったスレッタは絶叫と共に通信を途絶えた。
    彼女の悲鳴を聞いた兄さんは怒鳴るようにフェルシーに指示を出し、抱えられたエアリアルごとキャリバーンを母艦に運び込んだ。


    遅れてハンガーに降り立った僕は、兄さんの所へ向かおうとして、投げ捨てられたヘルメットがつま先にぶつかった。ハンガー中に響き渡るあの女の名前を叫び続ける声が、息があると分かって女を抱きしめ震える肩が、忘れられない。あんな兄さんを見たのは初めてだった。兄さんがどれほどスレッタ・マーキュリーを愛しているのか、嫌でも分からせられてしまった。


    「…兄さん、彼女をベッドに運ぼう。少しでも楽な体勢にさせた方がいいよ。医者も呼ぼう。兄さんも僕のせいで怪我しているでしょ、診てみらった方がいい…」
    「…ああ、悪かった取り乱した」
    兄さんはスレッタ・マーキュリーを医務室のベッドまで運ぶと、地球寮の生徒に彼女の事を任せて、自分は部屋を後にした。



    「…ラウダ、お前は身体に異変は無いのか…?お前までスレッタみたいになったら、俺は…っ」
    悲嘆に満ちた顔で震える手を僕の頬に向ける兄さんを今度は僕が抱きしめた。
    「大丈夫、大丈夫だよ。僕はもう、兄さんを悲しませるような事はしないよ」
    抱きしめながら、兄さんがあの女を以前のようには呼ばなくなった事を寂しく思った。












    (めっちゃ途中。なんか良い感じに続けたい。中略部分は予想付くと思うけど、あの人達出ます。というか、その為に書いてる所あるので。)

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