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    森香(しんか)

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    森香(しんか)

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    書きたいとこだけ書いた祓ったれ本舗のゲトウさんと俳優イジチさんの話。

    #夏伊地
    xaydi

    俳優イジチファンのゲトウさんの話

    「あぁ〜〜〜〜〜っ、かっこいい…」

    夏油のそんな声に、五条は眉をしかめた。
    紆余曲折を経て、お笑いコンビを結成してから初めて聞いたその声は、まるで自分たちのファンと同じくらいにハートが飛んでいる。
    本日の祓ったれ本舗は、某国民的アイドルの体を動かすアトラクション系のバラエティの収録に呼ばれていた。
    対戦相手は今期から始まるドラマの俳優達らしく、番宣用のお揃いのTシャツを着ている。

    「"また"伊地知潔高?」
    「悟!伊地知さんだろ!」

    夏油の言葉に、うげぇと五条は更に顔を顰めた。
    何を隠そう、夏油は今回の番組での対戦相手である俳優チームの一人、伊地知潔高の大ファンなのだ。
    五条自身はあまりドラマを観ないのだが、そこそこドラマや映画、舞台などで活躍している俳優らしい。
    主演をするような煌びやかな見目というよりかはどちらかと言えば地味目であるため、助演などで輝くタイプ。
    過去に何度か賞も貰っている。
    などなど、夏油から耳がタコになるほど聞かされている五条ははいはい、と適当に相槌を打った。

    「どうしよう…今回の収録は伊地知さんの出演ドラマだからもしかしてと思ってたけど、まさかご本人にお会いできるなんて…!」
    「今から対戦すんのに大丈夫なの、お前」
    「無理…!!無理だよ、彼に見られていつも通りに話せる自信がない…!!」
    「がんばれー」

    結果、五条のやる気のない声援も虚しく、過去一番、夏油が噛んだ収録として祓ったれ本舗のファンには永久保存版として後にも語られることとなる。



    「ゲストの皆さんにもアンケートを答えてもらいました」

    この番組特有の、天の声がゲストたちにトークテーマを振っていく。

    「ドラマの内容から、ここ最近のやっつけたい悩みとは。…えー、伊地知さんは共演者の方たちとの同じシーンが少なすぎる、と書かれてますね」
    「はい、そうなんですよ。今回も、主人公とぐらいしかまだ会ってなくて…」
    「一人だけリモートです」
    「現場にはいます!けど、このドラマでは後々は共演者の方たちと合流する、予定です!」
    「あくまでも予定です」
    「絶対に合流します!」

    トークが盛り上がるなか、夏油だけは伊地知をじっと見つめている。

    「あー、しょげてる伊地知さん可愛い…。けど、あの俳優と仲良すぎないか。いや、確かに共演は3度目だけれど。イケメンとか言われて調子に乗ってんじゃないか?だいたい、顔なら私の方がイケメンだろ」
    「いや、キモッ」

    マイクに乗らないノンブレスな夏油の呟きは、五条によって処理された。



    ゲームは盛り上がり、点差も僅差。
    収録は和やかなムードに進みつつ、ゲストのエピソードトークで場を盛り上げる。
    祓ったれ本舗はお笑いコンビであるため、やはりここにいる観覧のお客を笑わせるのに終始した。
    夏油の最近、ハマっている趣味の話を終えて五条はそういえば、と声を上げた。

    「実は、うちの傑がめっちゃファンの人がこの中にいるんだよ」
    「ちょっ!悟!!」
    「え、誰だれ!?誰ですか、夏油さんっ?」

    顔のいい祓ったれ本舗の二人だが、芸人にしてはゴシップは少ない。
    特に夏油はガードが厳しいことが有名なので一気に共演者は色めき立つ。
    特に対戦相手のドラマチームの若い、今売り出し中の女優なんかはもしかしたら、と胸を高鳴らせた。

    「じ・つ・は〜、なんと、伊地知さんです☆」
    「へ!?…私ですか?」
    「悟〜〜〜っ!!」

    共演者たちが盛り上がっているのを見守るように見つめていた伊地知は、いきなり出てきた自分の名前に思わず声を裏返した。
    夏油は夏油で、隣の五条の肩を掴んで揺さぶるのに忙しい。

    「夏油さん、本当に?伊地知さんのファンなの?」
    「え、ぁ、えっと…」

    司会のアイドルの一人にそう聞かれ、口篭る。
    五条の差し金とはいえ、ファンであることを前々から公言したかった夏油はチャンスだと思いつつ、こんな公共の場でそんなことをしてもいいのかと、自問する。
    そんな夏油の様子に、伊地知はふっと笑って司会のアイドルに向き直った。

    「こんな人気の方が私なんかのファンなはずないですよ〜。私、たまに共演者からドラマに本当に出てたのかなんて言われるぐらい影が薄いんですから」
    「今回も一人の撮影が多いですもんね」
    「今回はまだマシです!」

    上手に笑いに変えて話題を逸らした伊地知に、現場は和やかなムードに戻る。
    あのままでは放送事故になりかねない空気を助けられた、という事実と共にこのままでは誤解されたままになるという事に夏油は慌てて立ち上がった。

    「違いますっ!!」
    「へ、?」

    立ち上がった勢いのまま夏油は、驚いて固まる伊地知の前まで行き、手を握った。

    「わ、私は、本当に、伊地知さんが好きなんです!!」
    「え、へ!?」
    「本当に、好きなんです!!嘘ではありません!!」

    真っ赤な顔でそんな、一世一代のような告白をする夏油。
    そしてそんな告白をされ、真っ赤に固まる伊地知。
    現場は、その後ろで大爆笑する五条の声のみが響き渡る。

    「夏油さん、それ、ただの告白になってるよ」

    司会のアイドルのツッコミに、更に真っ赤に染まった夏油の顔は容赦なくお茶の間に流れた。
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    32honeymoon

    TRAINING・先日アップした画像版に修正を加えて、今までとおなじ横書きにしました。前回読みにくかった皆様はよければこちらで。
    ・修正したのは暁人くんの心情描写が主です。まだKのことを好きになりかけてきたところで、信じる心と無くしてしまう不安の板挟みになっている雰囲気がちょっと出てないかなと感じたので、台詞回しを少し変えてみました。まあ内容は同じなので、再読頂かなくとも問題ないと思います…単なる自己満足。
    【明時の約束】「ねえ、KK。たとえば今、僕がこの右手を切り落としたとして、ーあんたの宿っているこの魂は、何処に宿るのかな」

    ー突然。自らの右手に在る、そのあたたかな光と靄のかかる手のひらに向かって、突拍子もないことを言い出したその体の持ち主に、KKは呆れたように何いってんだ、と返した。

    『ーオレの魂が宿る場所は、ココ、だろ。手を失ったとて、消えるわけがねえ。ああ、ただー大切なものが欠けちまったって言う事実に対して、クソみてえな後悔だけは、一生残るだろうな』

    気を抜いたままで容易に操れるその右手。ぶわりと深くなった靄を握り込むようにぐっと力を込めると、とんとん、と胸を軽くたたく。

    「後悔、?」
    『ああ、後悔だ』
    「どうして?これは、僕の体だ。例え使えなくなったとしても、あんたには何の影響も無い筈だよね。それとも、使い心地が悪くなったとでも文句を言う気?ーああごめん、言い過ぎたかも。…でも、そうだろ」
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