お互い様「なんですか?」
「……なんでもねぇよ」
休日前夜の店内の賑わいに耳を傾けながら、高明は割り箸を手に取ったまま、敢助に問いかけた。
なんとも歯切れの悪い返事に、高明の眉間に皺がよる。けれどそれ以上追求したところで、返事は変わらないだろう。高明はあからさまなため息をひとつ溢すと、目の前にある蕎麦に箸を付け始めた。
明日はお互い非番なのもあって、夕飯を外で食べようということになっていた。相変わらず蕎麦とパスタで一度揉め、今回は高明が譲ったが、もやは次は譲まいと心に決める。
けれど、食べ物に罪はないと啜った蕎麦が喉を通り過ぎていく。
やはり蒸し暑い日に食べる冷たいものは良いと、食べ進めようとした時だった。
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