肩を並べて「人が多いな」
花見客でいっぱいの公園を、あたりをいぶかしげに見回しながら、シリウスはそう言った。
「いつも高いところで見てるから、気づかなかっただけだよ」
僕はそう言いかえす。そして付け加える。
「でも、やっとここまで降りてきてくれた」
あの騒動の後、どうやらシリウスはプロキオンを許したようだった。
今の彼は邪魂を追わなくなった。そのかわり、僕の行く先々に姿を現すようになった。僕から邪魂が出てるのかと思って、そう聞いたら、なんだか決まり悪げな感じで「そうじゃない」とだけ言われた。
「プロキオンも誘ったんだけど、今更合わす顔がないから行かないって」
そう伝えると、シリウスはまじまじと僕の顔を見つめて、その後視線を外して「ふん」とだけ言った。
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