流星煌めき君想ふプロローグ.零れ落ちた流星
星々の瞬きと煌めく月を眺め、隣で仏頂面をして歩く彼に思いを馳せる。月に似た瞳を片目に宿し、ふと浮かべた笑みがまるで花が綻ぶように可憐な彼を。
「月が綺麗だね。」
かの有名な文豪は、アイラブユーを「月が綺麗ですね」と訳した。自分がそれを知った時、「何で月?」という思いが勝っていたが、彼に恋情を抱いている今なら分かる。月と彼の綺麗さが重なり、「好き」だと言いたくなって、だがそれを言えない何かしらの理由があって、遠回しに出たのがこの淡く端麗な言葉なのだと。無論、これは自分の考えであるため、全くの根拠は無い。
きっと彼は知らないだろう。「月が綺麗だね」の言葉の意味を。
だからこそ自分も、聞く人が聞けば恥ずかしい言葉をスラリと言える。彼がこの言葉を知らない事を理解しているから。
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