「大好きだからさよなら」みたいな台詞
お互いに好きだけど些細な諍いによって上手くいかなくなっていく
好きだからこそ辛いね もう別れよっか
そして最後に一日デートをする
帰り道に見た夜空を一生忘れないだろう
的な映画をシアタールームで見ている
主題歌がエモくて良い
エンドロールでふたりの写真が流れるという演出も良い
恋人の鋭心とふたりで感想を話す
「好きなのに別れるってどんな感じなんですかね」
「自分の幸福よりも相手の幸福を優先したいという思いがあったようだが」
幸福って優先する必要あるのか?ふたりで見つけたり守るものじゃないのか?
「俺は全然分かんないな。だって、お互いにそう思ってるなら別れる必要なくないですか?」
くす「俺は安心していいということか?」
「もちろん」ふんす
お互いに話し合っていればそんなこと起こるはずがない
「えっ、ていうか逆に鋭心先輩は分かるんですか?」
「分からなくはないな。そばにいることだけが愛の形ではない。俺よりも相性の良い別の人間が現れることもあるだろう」
「そ、それはそうかもしれませんけど!」
すこしふざけた様子
本気で言っているわけじゃないだろう そう思いたい
それでも永遠を願う気持ちもある
むすっとしてるとキスされて全部とろとろ
「安心しろ。お前を手放すつもりはない」ふふ
かっけー
秀が出るドラマとか?
明らかなセット売りをされる
なかなか好評 いいけどさあ
なんとなくもやもやする
鋭心とも話せていない
芸能人とはいえ恋人に嫉妬されるみたいなのよくあるよねという何か
まあ鋭心先輩はそういうのないし……
俺はあるけど……
鋭心先輩はないし……
LINKは返しているけど気を遣われたのかあまり来ない あ~…
新曲のレコーディングで出会う
なんだか久々だなと思う
「今度のオフ、出かけないか」
「良いですね。先輩の家に行けば良いですか?」
「いや、店を予約してある」
少し嫌な予感がした
俺の勘なんてよく外れるから…
その日はまるで何かの記念日のようだった。
「全部決めてくれたんですか?」
「気にするな。それよりお前は俺よりも忙しいだろう。無理はしてないか」
「全然してないです! 鋭心先輩と会うことで回復してるっていうか、ホント……」
汗だらだら どうして言い訳みたいになるんだろう?
食事も何もかも楽しかった
帰り道空を見上げる
「こういう時、何を話せば良いか分からないが」
あ、なんかダメだ、これ。
あの日見た映画を思い出す
「お前に出会ってから、俺の日常は随分と幸福なものになった」
一生忘れないって本当なのかな
辛い時間を乗り越えて楽しい日々が続いたとして、俺は今日を忘れてしまう気がする
そんなのつらい
こんなに好きな人を忘れたくない
「秀」
振り返る鋭心
「ごめんなさい、鋭心先輩、俺……」
ぶわっ
「無理です、俺。だってやっぱり分かんないですよ。こんなに好きなのに。鋭心先輩だって、俺のことが一番好きなんじゃないんですか? だったら、別れる必要なんかないでしょ……」
「秀、落ち着け。何を言っている」
焦った顔をするのは珍しいな、と思ってたけど、付き合ってたくさん見るようになったんだよなあ
「お前と別れるつもりはない……」
だって!
「……前に、一度……」
気まずそうな顔
「……お前が言ったんだ。お互いの誕生日の間になる日を祝う文化があると」
「えっ……あっ?」
照れくさそうな顔 嘘でしょ?
回想
「記念日って気にするほうですか?」
「いや、誕生日は二人で祝うって言うよりは、事務所とか、ファンと過ごすものじゃないですか。その分、月……いや、半年とか一年の時は祝いたいなと。せっかくですし」
「なるほど、良い案だ。つまり、交際半年の記念日は……」
この日か、とスマホのカレンダーを指す。
「覚えてるんですね」
「当然だ」
照れる。
「そういえば、クラスの付き合ってるやつらは真ん中バースデーを祝ってましたね。お互いの誕生日の真ん中だから、真ん中バースデー」
「興味深いな」
「俺たちは……あー、こっちの方が近いかも。夏休みラストだ。イベントとか入りそうですね」
何気ない会話だった
「……すまない。はしゃぎすぎたようだ」
確かに付き合った日も覚えていた
途端に恥ずかしくなって申し訳なくて赤くなったり青くなったりする
平謝り
一人で暴走するな
鋭心先輩こそ一人で全部きめちゃうなんて
極端なふたりの真ん中はちょうどいい温度だといいよねみたいないい話で終わる