それだけで満足するかと問われたら──目まぐるしく過ぎていった二か月。
暗闇の中で細い糸の先端を掴むかのような僅かな情報から始まった担当事件は、じわじわと神経をすり減らしていって最終的には捜査企画室全体で取り掛かる程の大きな案件となった。
特にこの二週間は行確からの潜入、摘発──と息付く間も無い程、全力で駆け抜けた日々。
漸くまともに取れる休暇を前にして、浮き立つ気持ちがお月さまと共に浮かび上がってくる。
(先ずは溜まった洗濯をして……あぁ、天気が良かったらお布団も干しちゃおう)
この二か月、満足に出来なかった事を頭の中に思い浮かべて、優先順位をつける。そうして一日の予定が決まった頃、私は身を沈めていた温かな浴槽から出たのであった。
お風呂から上がって暫く怠っていた諸々のお手入れを済ませた後、冷蔵庫からカクテルの缶とおつまみにと買ってきたスーパーの惣菜を取り出しながら頭を掠めたのは〝彼〟の背中だった。
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