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    みおみお

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    みおみお

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    自分が描いた落書きから、イメージした話。

    ぬる甘な話になっていると、良いのですが?

    #飛影
    flyingShadow
    #蔵馬
    colony
    #飛蔵
    hijack

    たまになら、「偶にはいいじゃないですか?」
     そう言いながら、蔵馬が背中に寄りかかってくる。
    「本当は、肩を枕にしたいんですが、飛影の肩だと高さが足りないんですよね」
     ぐいぐいと体重をかけてきて、その強さに負けないように、背中に、首に力を入れた。
    「……寝る気はあるのか?」
    「ありますよ」
     そう言うと、蔵馬は座りが良い場所を探すように、体をもぞもぞと動かしだす。
    「じゃあ、少しだけ。貸してください」
     ふっと身体の力をぬいたようで、背中全体に重みを感じる。しばらくすると、規則正しい息の音が微かに聞こえてきた。
     身体を動かせば、起きてしまうだろう。だから、このまま。その背中の温もりだけを感じている。


     久しぶりに、蔵馬の部屋の窓を開けた。
     すると、あっ。と、何故か困った顔で迎えられた。

    「……迷惑だったか?」
    「いえ、迷惑な訳、ないじゃないですか」
     そう言いながら、ジャケットを脱ぎハンガーに掛けている。ちょうど、今、家に帰ってきたらしい。そんなの知るか。俺も今、ちょうど魔界から此方へ来たのだ。
     ぺたりと蔵馬が床に座るので、その横に座ってみる。すると、何故か蔵馬が鼻先を近づけ、体の匂いを嗅いでくる。眉をひそめてみれば「飛影の血の匂いはしませんね」と言って、安心したのか笑った。
     服の袖の匂いを嗅いでみる。砂埃と微かに錆びた鉄の臭いがする。
    「怪我をしていないと、この部屋には入れないのか?」
    「そんな事ないですよ」
     窓の鍵だって、帰ってきたら直ぐに開けているんですよ、貴方のために。と何故か今日の蔵馬は饒舌だ。
     いや、蔵馬はよく喋るし、余計な事も言う。だが、肝心な事ははぐらかす。それが今日は随分と素直に話しているようにみえた。
     素直というか、注意力が散漫というか。
    「…具合、悪いのか?」
    「やだなぁ」
     そう言って笑うが、言葉が続かない。
    「………………」
    「……寝てないんです」
     あはは。と力なく笑う。
    「仕事があるのに、魔界と霊界と、なんか立て続けに呼ばれて、動きっぱなしで…」
     昔は、このくらい動いても平気だったのになぁ。と言いながら、ふぁっと欠伸をする。
     それにしても、いつの間に魔界に来ていたのだ?気付けなかったのが悔しい。どこで、何をしに来ていたのか?まあ、多方、幽助か黄泉であろう。あの二人は、蔵馬に頼り過ぎている節がある。そして、蔵馬もあの二人になんやかんやと応えている。いい加減にして欲しい。
    「じゃあ、寝ろ」
    「えー、飛影が来たのに?」
     怪我をしていない飛影が来るって、貴重なんですよ。と妙な高さのテンションで話しかけられる。そのいつもと違う感じがとても居心地が悪い。
    「休んだ方がいい。寝ないのなら、帰る」
     えー。と幼い生き物のように不服そうにこちらを見る蔵馬の姿は、思いの外愛おしい。
     しかし、折角来たのに。蔵馬が疲れているのならば来た意味がない。蔵馬が正常でいてこそ、会いに来た意味がある。
    「それなら、飛影」
     蔵馬がニヤリと口角を上げ提案する。
    「寝るから、枕になってください」



     こうやって無防備に眠る。という事は、信頼されている。ということなのだろうな。

     もうどのくらい経ったのか?蔵馬の部屋で微動だにせず、蔵馬の寝息と温もりを背中に感じながら過ごしている。
     時々、何かの機械が唸るような音を立てたり、植物の葉がかさっと動いたりする。カーテンが外気で揺れて、車が近くの道路を通る。
     それは、ただ。ほかの世界の話であって、耳に聞こえてくるのは、蔵馬の寝息だけだった。
     決して飽きる事のない時間で、その音に集中すると、鼓動や血液が巡る音さえも認識できそうだった。
     いつも、雑音が多いのだ。
     偶には、こうやって。蔵馬の存在そのものだけを、感じてみるのも面白い。

    「ん……っ」
     すっかり眠りの深淵に堕ちていた蔵馬が浮上したのか、体がもぞりと動く。座りの良い場所を無意識に探ろうとしていた、その瞬間。
    「……っ!!」
     身体の重みのバランスが崩れた。
     そう気付いた時には、蔵馬が自分の背中からこぼれ落ちる。蔵馬の背中より自分の背中の方が小さいのだ。下手に動けば、ずり落ちてしまうのは予想できたことだ。瞬時に体を反転させると、腕にその身体を受け止める。

    「……すみま…せん」
    「いや」
     ちょうど、自分の膝の上に上半身が乗り、腕の中で仰向けに転がった状態で、蔵馬が目を覚ました。
     目覚めと共に体が傾いたから驚いたようで、瞼を何度か瞬きながら、こちらを見上げている。先程よりは体調も良さそうにみえた。心がホッとする。
    「眠れたか?」
    「ええ、ありがとうございます」
     自分の太腿に、そして受け止めた腕に、蔵馬の黒髪がさらさらとかかる。
     その流れるような造形が、ああ、綺麗だな。と呟きそうになる。
    「でも、もう少し、ここで寝ていたい……です」
     その綺麗な蔵馬が、少しはにかみながら言うのだ。断るという選択肢があろうものか。構わない。と肯首すると、良かった。と小さく喜ぶのだから、たまらない。
     そして、俺の腕の中で、再び目を閉じようとする。
     ああ、でも。
    「……駄賃を寄越せ」

     そっと、腕にある体を抱き寄せて、俺は身を屈めて、くちびるを重ねた。
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    みおみお

    DONE以前、イラストで描いたモノを、小話にしました。
    幽ちゃん曰く、蔵さんが子ども扱いしてくる!というイチャイチャ話?
    今は、甘んじてやるからな。「おいで」と柔らかな声で言われ、そのまま素直に蔵馬がいる場所へと体が吸い寄せられた。

    ✳︎ ✳︎ ✳︎

    今日も蒸すな。と思いながら垂れる汗を拭うと、じゃりっとした不快な感触。一応、玄関のチャイムを押す前にズボンの膝を叩くと、思っていた以上に細かい砂が舞った。

    日々の鍛錬。といえば聞こえはいいが、同じような趣味の奴と手合わせという遊びを楽しみ、汗に砂埃がくっついてどろっどろの状態で何も考えずに蔵馬の一人暮らしの部屋に寄れば、「とりあえず、シャワーでも浴びておいで」と回れ右の要領で浴室へと行くよう指示を受けた。
    シャワーを浴びている間に、蔵馬は…置いたままにしてある…オレの服を持ってきてくれた。脱いだままの服は、洗っておくよ、と洗濯機を回し始めるのだから、相変わらず手際が良い。「わりぃな、さんきゅっ」とシャワーの音にかき消されぬよう大きめの声で蔵馬に返事をして、オレは頭から爪先まで泡だらけの体をシャワーで洗い流した。汗も砂も落ちるとさっぱりして、気分は良い。
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