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    あさうい

    好き勝手
    @suki_iroiroto

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    あさうい

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    閲覧ありがとうございます。
    ノイくん目線多めの暁さん不在暁理小説です。
    一貫して暗めのお話です。怪我、自傷の表現を含みます。

    残痕「僕、飲み物買ってくるけど、理人さんは何かリクエストある?」

    「そうだな…水を頼む。…………すまない。」

    「そこは普通、ありがとう、じゃない?
    まぁ別にいいんだけど。あ、後でお金は貰うから。」
    そう言って、ノイは更衣室のベンチから立ち上がり、部屋を出て行った。

    最近、ノイに気を遣われている気がするのは、恐らく気のせいではない。
    1ヶ月ほど前、タイムジャッカーの攻撃により、自分は負傷してしまった。十中八九その事が原因だろう。
    しかし、怪我と言っても軽傷だ。直ぐに治ってしまうだろう。
    だが、怪我を負う自分を見て、ノイは酷く青褪めていた。
    ノイに要らない心配をかけてしまっている自分が不甲斐ない。自分はもっと、もっと、強くなくてはいけない。
    暁さんはもう、いないのだから。その分まで。
    怪我をした箇所がズキリと痛んだ気がして、そっとその箇所に触れた。


    少し前、理人さんは怪我をした。
    タイムジャッカーが悪あがきで撃った銃弾が、偶然、木箱が積まれた金属製の板を吊るしている、鎖に当たった。
    理人さんと僕はその下にいた。
    落ちてくる木箱なんて、理人さんの運動神経なら簡単に回避することが出来たはずだ。
    でも理人さんは僕を突き飛ばして助けたせいで、かわしきれなかった。
    実際、理人さんが助けてくれなかったら、僕は木箱の直撃を免れることは出来なかった。当たりどころが悪ければ、最悪、死んでいただろう。
    僕を助けた代わりに、理人さんの片足が木箱の下敷きになってしまった。
    痛みに顔を歪め、脂汗をかく理人さんの姿が脳裏に焼き付いて離れない。
    医療班の迅速な対応と、理人さんの常人離れした回復力のお陰で、怪我は直ぐ治りつつあるが、僕は自分を許す事ができない。
    いつまでも理人さんを追いかけていては駄目なのだと、あの日、強く誓ったのだから。
    僕は足早に理人さんの待つ更衣室へ戻った。


    『コンコンコン』
    更衣室へ入る前は必ずノックをするのが隊の決まりだ。正直、意味があるのかよくわからないけど、もうすっかり体に染み付いてしまった。
    「…………?」
    普段はハキハキとした理人さんの声が返ってくるが、今は何も返ってこない。
    まぁ別に気にする事ではないかと思い、遠慮なく扉を開ける。
    理人さんは飲み物を買ってくる前と同じように、ベンチに座っていた。
    しかし、先程とは違い、背中を丸めていて表情がよく見えない。理人さんの性格を体現したような背筋はどこへ行ったのだろうか。
    「理人さん、水」
    ペットボトルを渡そうと理人さんに近付いて、恐ろしい事に気がついた。
    手に伝わるペットボトルの冷気が全身に広がるような感覚がして、僕は思わずその場にペットボトルを落とした。
    「理人さん……な、何やってんの!?」
    最初はタチの悪い見間違いか、勘違いかと思ったが、そうではなさそうだ。
    理人さんは、傷を負っている片足を、両手でギリギリと圧迫していた。
    震える手を半ば強引に動かして、理人さんの両手を足から引き剥がす。
    「……ノイ…………」
    「理人さんのバカ!そんな事して傷口が悪化したらどうすんの!?ていうか、何でこんな事してるわけ!?」
    「あ………すまない、ノイ……なんで、自分は…」
    驚いたように目を見開いて、謝罪の言葉を口にする理人さんに腹が立ってきた。
    驚いているのはこっちだし、謝罪の言葉が欲しいんじゃない。
    「どうして…………あ、」
    少し考えて、とある可能性に気付いた。
    でもそれを理人さんに言ってはいけないと本能が告げている。
    幸か不幸か、本人は無自覚だったようだし、このまま止めさせるのが懸命だ。
    「……いい?理人さん、二度とそれしないでね。悪化するよ。」

    「ああ……。」
    未だ呆然としてる理人さんを置いて、僕は再び部屋を出た。


    こんな事、気付きたくなかった。
    程度は違えど、なんの巡り合わせか理人さんとあの人と同一の箇所に怪我をした。
    僕も、多分理人さんも、お互いそれに気付いてはいたが、今日まで決して言及することはなかったし、僕の場合は考えたくもなかった。
    その箇所を圧迫する深層心理なんて、どう考えても、あいつ絡みしかないじゃないか。
    理人さんがあの傷に見出しているのは、一体なんなのだろう。
    救いか、はたまた羨望か……なんて、考えるだけでも吐き気込み上げてくる。
    どうやら、僕が思っていたよりもあいつの支配は、気持ち悪いほど深く、暗く、根強く、理人さんの心に巣食っていたようだ。

    「どれだけ理人さんに執着すれば気が済むんだよ……!」
    引き金を引いたからといって、簡単に取り除けるようなものではなかったのだ。
    その事が悔しくて、地獄であいつが満足気に微笑んでいるような気がして、僕は思わず舌打ちをした。
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