ある人形の独白……あの方は……人形が好きです。
部屋にも、たくさんの人形が山のように積まれています。
きっと私も、その中の、気まぐれに愛を注いで、満足してもらうための、人形の一つなのでしょう。
私のことを忘れたみたいに放っておいて、他の人形と一緒に寝てしまうことも多いんですよ。
それでも、私はあの方の人形なので、何も言わずに、機嫌を損ねないように、言動を、行動を間違えないように、捨てられないように……あの方が私を必要になった時、役に立てるように刃を磨いています。
ですけど、ここだけの話、飾られて、愛でられるだけの人形とは少し違うと感じることがあるんです。
あの方の周りにいる人形の中で唯一、私だけがあの方の命令に返事をすることができる。
忠誠の言葉を並べて、跪くことができる。
自身の脳内をあの方の事で埋め尽くして、想うことができる。
それだけで、とても幸福で満たされるんです。
他とは差があると、思ってしまうんです。
こんなことを考えて、あまつさえ口に出してしまうなんて、人形失格ですね。
………………。
…………………………………。
あぁ、すみません。少しお喋りが過ぎましたね。
こんなに話したのは、いつぶりでしょう。
自分の思考をかなり整理できた気がします。
ありがとうございます。
……そうですね、お礼に、貴方の片付けは、私がしておきましょう。
あの方がするよりはまだ、人情があると思いますよ。
それに、あの方にこの話の事を伝えられても、困ってしまうので。
では、さようなら。