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    やっと書き終わった…!!!
    闇オークションに出品されるゲントの幻覚を捏ねすぎて長くなったものです。実際オークションのシーンそんなに長くない…
    細かいことは気にしないでください。

    #ヒルマゲント
    #ウルトラマンブレーザー

    闇オークションに出品されるゲントの話 テキスト版第一話

    ダンダンッ
    『6番のお客様!おめでとうございます!670万ゼーロで競り落とされました!』
     ハンマーの音と共に会場に溜息と興奮、歓声が渦巻いた。6番の札を付けた男は満足げな笑みを浮かべて連れの男と握手を交わしている。
    『お次は今回のオークションの目玉が登場です!一体どなたが手に入れられるのか…ご覧ください!』
    ステージ裾でマイクを握る奇妙な仮面の男が声を張り上げる。暗い会場の奥、客たちが見つめる先。照明の落とされたステージの上で、ガシャンッという音と共に、スポットライトが商品を照らす。
     そこに居たのは、1人の大柄な男だった。
     頭部を覆う袋と大袈裟な首輪、奇妙な金属でできた複雑な拘束具。警備員に抑えられ、ステージに膝を付くその男を、客達が身を乗り出して眺める。
    『皆様にご覧頂いておりまするこちらの地球人、なんと、M421星人の同化体でございます!』
    会場にどよめきが上がった。
    『かの強力な狩猟民族であるM421星人が、この大きさのヒューマノイドに同化するという極めて珍しい事例の個体です。戦闘時には、本来の姿に戻ることも可能です!』
    仮面の司会者の言葉に合わせ、ステージ奥のモニターに巨人の姿が映し出された。黒と銀色の体躯、縦横に走る赤と青のライン、頭部から噴き出した様な青白い結晶体…
    『こちらが本来の姿であります。肉弾戦が得意ですが、両手からの光弾などの飛び道具も多彩、身軽で素早い動きと彼らの特色である武術を駆使して戦います。』
    『地球人としても丈夫で、更には彼らの美的基準にも合致する個体です!見栄え重視のお客様のニーズにも充分にお応えできると自信を持っております!ご覧下さい!』
    司会者の合図で警備員が男に近づき、頭の袋を外した。艶のある黒髪、鼻筋のとおった端正な顔立ちの壮年の男。長めの前髪が落ちる額の下で、明るい茶色の瞳が眩しそうに細められる。見る人が見れば驚きの声を上げたであろう。舞台中央で拘束具をつけられ、商品として紹介されているその男。彼は紛れもなく、地球防衛隊で特殊部隊の隊長を務める人物、特殊怪獣対応分遣隊SKaRDの隊長ヒルマゲントその人であった。



    『宇宙薬物及び機械洗脳を持って調教済みでございますれば、こちらの装置から命令を与えることで、ご覧の通り自由に操る事が可能です!』
     司会者は得意げに、両手で握った銀色の機械を操作する。同時に、ステージでは男が警備員を振り払って勢いよく立ち上がった。大勢の客が見つめる視線の先で、彼は微かに身を震わせ、そして言葉にならない咆哮を上げた。少し高めの鋭い絶叫が耳をつんざく。操作に従っているのだろうか、男は鎖を引きずりながらゆっくりと司会席に近づき、静かに頭を垂れたのだった。
    『いかがでしょうか!この通り、完全制御に成功しております!宇宙船や拠点の護衛に、侵略兵器に、高い汎用性を発揮します!』
     会場が割れんばかりの歓声と拍手に包まれる。客たちは口々に言葉を交わし、この非常に珍しい生き物をどうにか手に入れようと欲望に目を輝かせるのだった。



    第二話

    司会席に頭を垂れたまま、前髪の下から客席をチラリと見やったゲントはこぼれそうになった溜息を飲み込んだ。そもそも芝居が得意では無い、洗脳された演技などどうやればいいのか。取り敢えず叫んでみて、操作者に頭を下げてみたのだが悪くなかったらしい。操作機を大雑把な命令しか出せないように作ったヤスノブに感謝だ。客席の沸きっぷりを見るに、この競りは盛り上がるだろう。
     後ろ手に回した拘束具の中で、掛金の位置を確認しながら周囲を観察する。この金具を引けば直ぐに両手が自由になる。警備員はステージに2人、4本ある客席通路に2人づつ、後はさっき通った舞台袖に複数人…仲間たちが突入したら、自分は舞台の2人と司会者をオトせば良さそうだ。
     このオークションの会場と客を確認できただけで任務の七割は完了している。後は外に到着しつつあるはずの他部隊と共に、全員を捕縛すればいい。

    『では入札を開始します!ご準備はよろしいですね?それでは、300万からスタートです!』
     眼前でひざまずく商品が内心物騒なことを考えているとはつゆ知らず、司会者は入札を開始した。
    『320万…350万…400万…450万…500万、いかがですか?おおっ、550万!600万!なんと、800万!』
     順調に値段が釣り上がっていく。警備員に引き摺られる様にして再び舞台中央に膝を付いたゲントは拘束具の掛金に指を添わせ、その時を待った。


    「異星人達のオークション?そんなイベントがあるのか…」
     報告を聴いて思わずぼやいたゲントに、エミが頷く。
    「驚きましたね。しかもわざわざ地球でやるなんて。迷惑な話ですよまったく。」
     時はオークションの二週間前。SKaRDは捕縛した異星人の尋問を任されていた。
     現出した怪獣を掃討した直後、近隣で交通事故を起こしたトラックの運転手が、どうやら異星人らしいという通報が入った。現場展開していたSKaRDが対応し、一般の警官を負傷させて逃走を図った異星人を捕縛したのだった。がしかし。
     「お前達が捕まえたんだ。相手をするのもお前達の仕事だろう。」と司令官に仰せつかってしまい、尋問から調査まで異星人対応を一手に引き受けるハメになっていた。
    「で、つまりあの異星人…ピット星人だったか?あいつの目的は結局そのオークションに出品する品の運搬だったという訳なんだな。」
    「えぇ。そのようですね。オマケに、そのオークションとやら、彼らの協定に思い切り抵触する闇取引らしく、当局の目から逃れる為にわざわざ辺境の星で開催される予定だと。」
     尋問を担当したテルアキがメモを見ながら報告する。
    「辺境ねぇ、まぁ彼らからすればそうなんだろうな。…本当に迷惑極まりないな。開催場所は吐いたか?」
    「いえ、それがですね。彼は本当に会場の位置を知らない様なんです。かなり本気で詰めたのですが商品の受け渡し場所しか知らないの一点張りで…」
     テルアキの本気の尋問に口を割らないということは、本当に知らないのだろう、これは厄介だ。
    「さて、どうするかな…とりあえず、司令官に報告してくるよ。」



    第三話

     オークションの5日前、そのマーキンド星人は非常に焦っていた。出品予定の商品が届いておらず、オマケに納入元と連絡が取れないのだ。得意先に『今回の目玉は凄いですよ』と触れ回ってしまった以上、品物が届かない今の状況は大変に不味いものであった。このままでは信用に関わる。
     取引予定の時間を既に半日も過ぎているというのに…いらだちと共に溜息を吐き捨てた時だった。端末に着信、取引相手のピット星人だ。勢いに任せて交信スイッチを押し、相手の言葉も待たずに叫んだ。
    「貴方、どういう了見ですか?待ち合わせに来ないばかりか!今になって連絡をよこすなんて!」
    『あぁ、申し訳ない。少し、アクシデントがございまして…』
    おや、聞き覚えのない女の声だ。
    「貴女、誰です?アクシデントとは?」
    『詳細は申し上げられませんが、前回までそちらとやり取りしていた者は担当を外れました。代わりに私が担当となります。』
    「なるほど…いや、それはいいんだ。品はどうなりましたか、予定どうりに納めて貰わないと困るのですが。」
    女は淡々と答える。
    『非常に申し訳ないのですが、出品を予定しておりました物につきまして、破損という形になってしまいました。つきましては別の物を出品したいと考えておりますが、よろしいでしょうか?』
    「なんですって?ふざけるのもいい加減になさい!コチラにも段取りというものがある!強化エレキングの培養個体20体という約束です!それに相当するものなど―」
    『M421星人、ご存知ですね?』
    「は?いやまぁ、知ってはいますが…」
     突然に予想もしない星の名を言われて思わず声が出てしまった。M421星人と言えば強靭な肉体を持つ狩猟民族だ。
    『そのうちの1個体が今この星に居ることは?』
    「いや、初耳です。」
    『実はですね、とある地球人と同化してこの星に潜伏していたM421星人が居るのですが、その同化体を我々が捕獲管理しているのです。』
    「なんですって?」
    地球人サイズのヒューマノイドと同化するなど聞いたことがない。もし本当なら非常に珍しい事例なのではなかろうか。そしてこの話をするという事は…
    『その個体を、出品したいのです。』


    「上手く行きました!お聞きの通り、明後日早朝の接触です。」
     興奮気味の相手と約束を取り付け、通信を切ったエミが唇の端を上げる。
    「よし、よくやった。さすがの話術だな。じゃぁ後は…ヤスノブ、準備は出来そうか?」
    「ええ、ちょっと手こずりそうやけど、まぁ何とかします。それっぽく見えればええんですよね。後はもう隊長の演技力次第になりますね。」
    「そ、そうだな。」
     ヤスノブは奥の机でピット星人の押収品の中にあった金属品を加工し、拘束具を即興で作っている。発信機を内蔵し、拳銃を目立たぬ様に収納できるモノを、というオーダーだ。



    第四話

     ゲントから報告を受けた司令官の命令はなんとも人使いの荒いものだった。曰く、『どんな手を使っても構わん。その会場を突き止め、参加者を全員捕縛しろ。他部隊の出動を要請してもいい。俺からゴーサインを出す。辺境扱いだろうが何だろうが、他星人に良い様に使われるのは困る。』と。
    「どんな手をと言われましても…」
    「うーん、捕らえたやつが受け渡し場所しか知らないですからね…」
    「…1つ。思いついたな。」
     CPにて、命令を伝えられた隊員たちが唸る中、しばらく黙っていたゲントが小さく手を挙げた。
    「誰かが実際にオークションに参加すればいい。」
    「参加って、場所が分からないんですよ?」
    「あぁ。だから、客としてではなく商品としてだ。それなら会場の場所もわかるし裏側の状況もある程度把握できるだろう。」
    「それはそうですけど…」
    「誰が出るって言うんですか。そもそも宇宙人に対しての商品的価値なんて…う…。」
     ゲントの意図に気づいたであろうアンリは渋い顔で言葉を切った。
    「あぁ、俺が出る。ウルトラマンと同化した地球人なら、イケるんじゃないかな。」
    「…やっぱり。言うと思いましたよ。」
     半ば呆れ顔の隊員たちだが、ゲントは既にその気だ。
    「大丈夫、ブレーザーが居るんだ。それに商品ならオークションの当日まで手荒な扱いは受けないだろ。」
    「そういう…問題では…なくて…」
     眉間にシワを寄せるテルアキに、なんとも言えない表情のアンリ。腕を組んだヤスノブとため息のエミ。
    しばらくの沈黙の後、テルアキが口を開いた。
    「私個人として、承服しかねる提案ではあります。あまりにも危険すぎる。が、現状それより良い案もありません。任務に殉ずる立場としては賛同します。」



     決まってからは早かった。捕縛したピット星人をもう一度締め上げ、取引現場と出す予定だった品物の詳細を聞き出し、段取りを組む。結局、“M421星人の同化体を捕まえ、制御に成功したモノ”という形で取引を持ち掛ける事にした。取引現場に実際に行くのは、エミとヤスノブ、そして商品としてのゲント。
     特機団を始め複数の部隊に出動要請を取り付けた。場所はこちらでなんとかして突き止める、会場を封鎖し、合図とともに突入後、場内の全員を捕縛せよ、と。
    ゲントとブレーザーの関係を他の部隊に知られる訳には行かない。増援の突入タイミングはゲントの方から合図を送る事になった。


    「お待ちしてましたよ。さぁ、早く品を見せて下さい。」
    「慌てないで、少々注意事項がありますので。」
    「注意?完全制御できていないということですか?」
    「いえ、ただ、我々が付けた拘束具を外さないで頂きたい。首輪と手枷で制御しています。競り落とした客が要求した場合にこちらで外す、コレが出品のための条件です。」
    「そのくらいなら構いません、商品価値のほうが大きい、早く確かめさせて下さい。」
     車の外でエミが話している相手が今回のターゲットで間違いないだろう。オークションを企画した、ピット星人の取引相手だ。話が纏まったらしい、頭に被った袋の向こうからヤスノブが耳打ちする。
    「ほな行きますよ、隊長。ちゃんと芝居してくださいよ?」
     小さく頷いて、ヤスノブの手で車の外へ。と、不意に思い切り鎖を引かれた。ぐえっ…危うく零れそうになった情けない声をかろうじて抑え込み、膝をつく。ヤスノブめ、この状況をちょっと楽しんでるだろ。後で覚えてろよ…。
    「おお、こやつですか。…顔を見ても?」
    「構いませんよ。」
     全神経を集中して虚ろな表情に努めるゲントをひとしきり値踏みし、男は満足気に頷いた。
    「確かに、混ざっている様だ。デモンストレーションをここでする訳には行かないのが残念ですね。」
    「では、確かにお渡ししましたよ。ぜひともいい値段を付けて下さい。朗報を待っています。」
    取引成立。あとは、当日まで計画通りにコトが運ぶ事を祈るだけだ。ココからは単独行動、絶対に怪しまれてはならない。手枷の中で、静かに拳を握りしめる。俺の演技力…まぁ、なんとか出来るだろう。



    第五話

    『8000万!8000万が出ました!お後はありませんか?』
     ココに至るまでの経緯を思い出していたゲントは興奮気味の司会者の声で我に返った。
    日本円レートはわからないがずいぶんな価格になってきている様だ。そろそろ煮詰まってきたかな?
    『ではそちらの…おぁぁ!なんと!1億!?皆様!1億が出ました!』
    歓声とどよめきが上がる。
    『皆様!!我がマーキンドオークションの過去最高額です!!』
     ブレーザー、君、なんだかすごい価格が着いてるけど。故郷にいた頃乱獲されたりしてないだろうな…
     ポケットの中がジワジワと熱を持ち始める。どうやら少々イラついているらしい、彼と繋がっている心の底に微かな怒りの感情を感じた。
     無理もないよなぁ、自分を商品として手に入れたがってるヤツがこんなにも多くいるのを、目の当たりにしてるんだから…ちょ、ちょっと待って今
    「ア''ッッッッッヅァ」
     しまった…!全く予期していなかったストーンの発熱に、反射的に声が出た。金額に興奮していた会場が一気に静まりかえる。不味い……

     怪訝な様子でゲントを見やった司会者が、慌てた様子で直ぐにマイクを取った。
    『いや、もーうしわけありません!少し興奮してしまいまして、操作機に手があたってしまった。誤作動ではありませんのでどうか、どうかご安心下さい!』
     なるほど、運営側としてもココで商品にケチが付くのは避けたいと言うことか…命拾いしたな。慌てて顔を伏せ、心臓の鼓動を落ち着かせようとするゲントの耳に、司会者が警備員に耳打ちするのが聞こえた。
    「落札されたら裏に連れて行って鎮静剤を打っとけ。先方に渡す前に暴れられたら困る。」
     これは不味い。首輪に内臓された集音マイクは今の会話を拾ってはいないだろう。もし突入が遅れたらゲントは行動不能になってしまう…少し早いが、合図を送ろう。会場周辺には既に仲間たちが展開しているはずだ。



    第六話

     ここまでの高値が着くとは、誰が予想しただろうか。マーキンド星人は自然と口元が緩むのを感じた。…地球人とは随分と違う頭の形でも、笑顔はこぼれるものだ。商品がさっき不意に動いたことは気にかかるが、落札さえ終わってしまえばこちらに責任は無い。買い手がどんな風に使おうが、どんな目に会おうが、彼のオークションで競り落とされた以上もう彼が責任を持つことは無いのだ。まぁとりあえず、会場付近にいる間に暴れられては困るから鎮静剤を用意させて…そこまで考えたところで、彼の視界の端で商品がまた動いた。今度は明確に、彼を目掛けて。

     商品だった男が滑らかな動きで手枷と首輪を外し、マーキンド星人の首に鎖を引っ掛けて舞台に転がす。慌てて駆け寄る警備員2人を軽くいなして片方に回し蹴りを、左手に鎖を持ったまま右の拳をもう片方に叩き込む。
    「何をしている!早く他の者を呼べ!」
     首を絞め挙げられながらも声を振り絞ったマーキンド星人に、驚きで固まっていた他の警備員たちがあたふたと動き出した。暴れているのはたった1人。増援さえくればすぐにでも取り押さえられる――と、次の瞬間、客席後方で会場のドアが吹っ飛んだ。爆発音と凄まじい閃光。パニック状態だった客たちのほとんどが意識を落とす。スタングレネードか!ここまで強力な対人用のものがあったとは。しかしこれで私の首を締め上げているコイツも…
     かろうじて顔をあげたマーキンド星人は、グレネードの直撃を浴びたはずの男が更に手に力を入れた事を感じた。コイツにはスタンが効かないのか?見上げた顔に、爛々と光る青白い光を見てしまう。あぁ、コイツは…



     司会者の男が意識を落としたのを確認し、ゲントは手枷の中から取り出した拳銃を構えた。吹き飛んだ客席後方のドアから、仲間たちが突入してくる。
    「動くな!防衛隊だ!動けば即座に撃つ!」
    アンリのドスの効いた叫び。
    「隊長〜!無事ですかぁ〜?」
    ヤスノブのゆったりした問いかけ。
    「あぁ、無事だ!ほかの部隊は?」
    「まもなく突入です。建物周囲は完全に包囲完了、既に何体か捕縛していると。」
    「よし」
     エミの報告に頷き、彼女から装備を受け取る。さぁ、ここからだ。
     白煙と悲鳴、威嚇の銃声。ドアだった場所から次々と部隊が突入してくる。会場に居た違法な参加者達は次々と捕縛されていった。
    「順調だな…」
     口の中で呟いたその時、視界の端で何かが大きく膨らんだ。どうやら、追い詰められた客の1人が持っていた生体兵器を起動させた様だ。客席を瓦礫にしながら、巨大な肉塊が膨れ上がっていく。
    「総員退避!!外に出ろ!」
    大急ぎで無線をMOPに繋ぎ、前線指揮を担っていたテルアキに叫んだ。
    「テルアキ、聞こえるか!会場内にて大型怪獣現出!全部隊を建物の外に退避させてくれ!捕縛した連中も連れて-」

     通信が終わる前に足下の床板が割れ、ゲントは大きく体勢を崩す。膝を着いた視界の端で、折れた柱が崩れてくるのが見えた。左手首には蒼い結晶体。早くしろと言わんばかりに熱を発する円盤状の石を握りしめ、ゲントは叫んだ。
    「行くぞ!ブレーザー!」





    『テルアキ、聞こえるか!会場内にて大型怪獣現出!』
     MOPで前線指揮を採っていたテルアキの耳に隊長からの通信が入る。ココまでは彼の拘束具に内蔵した小型マイクで音を拾っていたが、どうやら無事に突入部隊と合流したらしい。しかし、やはり非合法異星人だ。土壇場で怪獣を出してくるとは。
    『全部隊を建物の外に退避させてくれ!捕縛した連中も連れて-』
     通信はそこで途切れる、一瞬の悲鳴も残して。だが、テルアキに心配は無い。今のゲントには相棒が居るのだから。
     モニターの中、建物を破壊しながら巨大化する怪獣と、ソイツの顎下に拳を叩き込みながら現れたブレーザーを確認する。こうなったら、やることは1つ。テルアキは無線を全部隊に繋ぐ。
    「会場周辺に展開する全部隊へ、こちらSKaRD MOP。50m級の怪獣及びウルトラマンブレーザー現出!総員直ちに退避せよ!繰り返す、総員直ちに退避!」



    第7話


    大規模異星人摘発についての仮報告
    報告者:特殊怪獣対応分遣隊SKaRD所属 比留間弦人

    ◯月◯日、都内□□にて行った大規模異星人摘発作戦についての事後報告を行う。
    なお、今回の作戦にあたって匿名を条件にした協力者の助力を得たため、会場特定の手段については本報告でも記載を避ける事とする。
    ◯日、□□市内にて捕縛された異星人から、大規模な集会が予定されているとの情報を引き出した。
    ◯日、独自調査により会場を特定。
    隊員1名が潜入。
    第1特機団及び第115強襲連隊他、15部隊の出動を要請。
    ◯日、会場を包囲し、13:00突入開始。異星人133名を捕縛、内2名が激しく抵抗したため射殺した。
    また、会場内にて50m級の大型怪獣及びウルトラマンブレーザーが現出。出動した全部隊で援護すると共に捕縛した異星人の輸送も行った。
    会場図面を別途添付する。
    詳細については別途本報告にて行う。


    「ふぅ…こんなもんかな…」
     教江野基地、SKaRD CP、パソコンに向き合い司令官に提出する仮報告を作成しているのは、この場所を拠点にしている特殊部隊の隊長、ヒルマゲントである。
     オークションから2日が経った。防衛隊日本支部は、突然に大量収監した異星人への対応に追われている。なにせ、彼らは地球とは別の星から来た連中だ。一体どうやって扱えばいいものか。どうせ彼らにとっても違法な連中らしいのだから、ロケットに詰め込んで宇宙に放り出してしまえと言う意見も上がっているとか。どの様な結論になるにせよ、しばらくGGF内がバタバタする事は間違いないだろう。
     一方でSKaRDはと言うと、相変わらず休みも無く、新たな驚異に備えて任務に向かう日々が始まっている。終わった作戦にはあまり関与できないのが現場の特殊部隊の常、かもしれない。
     そんなSKaRDにまるで私設部隊のごとく仕事を振ってくる司令官、まぁ参謀長の頃より風通しは良くなったし締めつけも緩くなったと思えば気は楽である。作戦行動についての本報告を上げる前に、概要を纏めた仮報告を司令官に提出するのだ。肝心の部分がゴッソリ抜けた報告だが。
    「ま、なんとかなるだろ。」
     明言されたことは無いが、榛野烈は恐らく勘づいているのだ。ゲントがSKaRDのみに共有した秘密を。向こうから言ってこないのだから、彼が他に言いふらすこともあるまい。そこについての謎の信頼感はある。

    「隊長〜、コーヒー休憩にしませんか〜?」
    「あぁ、ありがとう、もうちょっとなんだけど...んん!?」
     声をかけてくれたエミに振り返り、そこに広がる景色に思わず変な声が出た。視界いっぱいにブレーザーの顔がある。
    「ほら、ブレーザーも待ちくたびれてますよ。」
    以前から時々こうして基地内でのみ等身大で実態化するブレーザーは、今回の作戦終了後、何故かよりゲントにべったりくっついて行動するようになった。
    「ブレーザー…一体どうしたって言うんだよ…」
    「まぁきっと、ゲント隊長があまりに危険な方向に作戦立案するから彼も心配なんでしょうね。」
    「そ…そうなのか…?」
    アンリの言葉に静かに頷いたブレーザー。
    「私としても、もう少し自身の安全を考慮した作戦行動を取って欲しいものです。彼が居るからと言って、今回のはさすがに危険が過ぎました。もし単独潜入中に行動不能になっていたらと思うとゾッとします。」
    「ま、まぁ…その、上手くいったからいいじゃないか……。……ごめん。」
    隊員たちと相棒の無言の圧に小さく謝罪。確かに最近、ブレーザーの力に頼った危険な作戦立案が増えている事を自覚している。良くない事だとは思っているが。
    「いつも君には頼りきりだ…すまない。」
    申し訳ない、とブレーザーに頭を下げた瞬間、彼の姿は煙の様に掻き消えた。そして。
    「―ゥア''ッッッッッッチィ…えぇ…?」






    (五話にて、ブレが変なタイミングでストーンアチチをやったのは、彼の怒りをゲントが“ ブレーザーに”対して値段が付けられているから怒っている、と理解した為。その値段の中にゲントも含まれてるんだよ、俺はそれを怒ってるんだよ、という根性焼きです。あとそろそろ暴れたかったのかもしれない。)
    (最後の根性焼きは、素直に謝罪されたことへの照れ隠しです。)
    (グダグダと長くなりましたがこれにて完結。読んで下さった方、ありがとうございました。)

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    S24243114_0102

    DOODLEザライブ「…未来へ」に脳を焼かれているヒルマゲント限界オタクが脳内のイマジナリー神尾ジンさんを通して出力した怪文章。
    ジンさんのモノローグ。ほぼ全編捏造注意。細かいことは気にしないで下さい。

    え?たぶん彼はこれからもずっと亡くした相棒の事を引き摺るし思い続けるでしょうよ。墓参りの言葉から謝罪が消えて、他愛のない雑談と近況報告が増えるのだろう。
    あの世から心を込めて 相変わらず、ここは暗い。光の射さない空と底の無い足元、時間の流れも魂の存在も曖昧になるこの場所は、所謂地獄というヤツだ。ま、責め苦を受けるわけでも無ければ戦いが起こるわけでも無い、穏やかでひたすら無味な死後の世界と言った方が当てはまるかな。
     ここにやって来たヤツは、初めのうちはその魂を保っている。どうやら、現世でそいつの事を覚えている存在が多いほど、魂の輪郭を保てるみたいだ。時間が経てば人は死人を忘れていく。曖昧で、ぼんやりとしたかつての自我の欠片達が流れていく。
     俺?俺は…そうだな、死んでから結構時間が経ってるけど、まだ俺を保ってる。現世で未だに俺の事を引き摺ってるやつが居るんだ。俺の事をずっと覚えてて、ずっと悼んでくれている。それが誰かはわかってる。時たま、暗い空が割れて、あっちの声が聞こえる。またあのバカ、俺の墓の前で謝罪してる。いい加減前を向いて欲しいもんだ。
    1338

    S24243114_0102

    DOODLEゲントが窮地に陥った時、ブレーザーさんが彼の身体を借りて助けてくれた話
    ほぼほぼ捏造。
    細かい事は気にしないでください。

    Xでアンケート取った結果及び書いた人が生身スパイラルバレードに固執しているせいで哀れにも文字通り木っ端微塵に焼かれた宇宙人さんですが、基本ノーモチーフです。円谷作品にたまにいるなんか飄々とした感じの異星人的なやつだと思います。
    蒼と炎[クソッ何なんだあの人間!なんで動けるんだよ!]
    薄暗いビルの間、彼は今大いに焦っていた。簡単な仕事のはずだったのだ。この星には同業者はほとんど進出していないと聞いていたし、いわゆる防衛隊もさほどの規模ではないと。だがしかし、どうして気づかれたのだろうか、いつの間にやら複数の尾行者がついてきていた。

    何とか振り切ろうと慣れない街を走り回り、大半の追っ手を撒いたはずだった。ただ一人、執拗に追ってくるその男に気づいたのは、日が傾き辺りを薄闇が覆い始めた頃だった。捕まると後々面倒だ、一人だけなら何とか対処できるか、そう考えた彼は追っ手を誘い込むことにした。手持ちの端末で周囲をスキャンし、人気のない場所へ向かう。喧騒から離れた路地裏、端末のジャミング機能が十分に働いていることをを確認した彼は、追っ手の方に向き直った。
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