バイマイダーリン 『思い出した』のは、中学に上がる頃だった。
世間一般では不義の子とされる自分や、自分を産んで育てた母を親戚として迎え入れてくれた本家の娘にあたる女性に、ある時子供が生まれたのだ。
母には内緒でその子の顔を見に行って、名前を耳にした瞬間、知らない記憶が雪崩のように仗助の意識へ流れ込んできた。
顔が真っ青になりその場で倒れてしまいそうになるのをどうにか堪え、心配そうにこちらを気遣うホリィにひたすら「何でもない」と言い張り、ふらふらとした足取りで帰宅したのを覚えている。
それから丸一日部屋に閉じこもってようやく気持ちが落ち着いた頃、仗助の胸に浮かんでいたのは歓喜と絶望の感情だった。
以前の記憶というものは全てを思い出した訳ではなく、かつての自分がどんな風に最期を迎えたのかも分からないが、それでも分かった事がいくつかある。
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