きみとたべごと 身体の熱が冷めた頃、微睡からもまた覚める。くるまったシーツから顔を出すと、いつの間にか隣には丸くやわらかな白くまの抱き枕があった。名はラッキーと云うらしい。もちろんあの男が買ってきたものだ。
俺がいないときでも、先生がさびしくならないように。そう言って、両手でぎゅう、とくるみながら。いとけなくわらったその顔は、いままでに見た表情の中でも、際立ってうつくしいひとつだった。
身を起こすと、部屋は肌寒かった。纏うもののなくなった肩が震えて、かちかち歯が鳴った。ベッドの横を見下ろすと、脱ぎ捨てた服が床で皺になっている。手を伸ばそうとして、やめた。
もう一度シーツにくるまって裾を引きながら、幽霊みたいに床へと下りた。一人掛けソファの横のチェストに、昼に洗って干したばかりの浴衣が畳まれているのを思い出したのだ。袖を通して帯を締めると、南国みたいな柔軟剤の香りがした。最近切り替わったばかりのそれは、まるでずっとそうであったみたいに、知らぬ間に感覚に馴染んでいる。
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