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    kumaneko013

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    kumaneko013

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    新年あけましてのアデアレちゃん。
    世界観とか細かい事は一旦横に置いておいて下さい…。

     新しい年が明けた。
     昨晩は年越しという事で、解放軍の皆と夕食時にささやかな宴を開いたものの──場所は駐屯地、何よりゼノイラとの戦の真っ只中でもある。心の底から新年を祝うという意味なら、やはりガレリウスを倒し、コルニアを取り戻してからの話になるだろう。
     一日でも早く戦いが終わるよう、更に気を引き締めていかねば。
     そんな新年の誓いを胸に、ほぼ日課でもある朝の鍛錬を行うべく、アレインは剣を携え天幕を出た。すると──
    「あっ、殿下!」
     外に出た途端、弾んだ声を掛けられて。
     見れば天幕から少し離れた場所に立っていた赤毛の青年が、アレインの元へ走り寄ってくる。
    「おはようございます。そしてあけましておめでとうございます!」
    「ああ、おめでとう。今年もよろしく、アデル」
    「こちらこそ!」
     屈託のないアデルの笑顔につられ、アレインも相好を崩した。しかしその頬が、鼻の頭が赤くなっている事に気付き、
    「……もしかして、俺が出てくるまで外で待っていたのか?」
    「ええ。殿下への新年の挨拶を、一番乗りしたくて……」
     頑張って早起きしちゃいました、と笑うアデルの両頬へ、そっと自身の手を当てて。そこから伝わるひやりとした感触に眉根を寄せた。
    「こんなに冷えて……寒かったろう」
    「へっちゃらですよ。何せ心が燃えてますからね!」
     どこか誇らしそうにも見えるアデルに小さく苦笑していると、彼は何やら周囲を一瞥した後に声を潜めて、
    「ええと、その。実は殿下にちょっとお尋ねしたい事があって」
    「うん?」
     一体何だろう、とアデルの頬から手を離し、彼の顔を見つめるアレイン。
     片やアデルは妙にソワソワした様子で、アレインの出方を窺うような眼差しを向け、
    「なんでも異国の新年の行事に『姫はじめ』ってやつがあるらしいんですけど……殿下、ご存じですか?」
    「いや……知らないな」
     返答を聞いたアデルの表情が、パッと明るくなる。
     ──が、アレインの訝しげな視線を受け、それを誤魔化すように軽く咳払いをしてから、話を続けた。
    「その姫はじめを……ですね。こ、今夜にでも、殿下と一緒にできたらなあ~と思って……」
    「でも『姫はじめ』という名の行事なんだろう? 俺は王子であって姫ではないが、それでも良いのだろうか」
    「いいんです! むしろ俺的には殿下じゃないと意味がないので!」
    「?」
     一連のアデルの発言を、アレインは今ひとつ理解し切れていない様子だった。それでも他ならぬ彼の頼みならばと了承してしまい、無言でガッツポーズをするアデル。
    「それじゃあ、約束ですよ! あっ、姫はじめについては後で俺が詳しく教えますから、調べたりしないで下さいね?」
    「わ、わかった……」
    「ありがとうございます、殿下。では俺は一旦戻ります!」
     そう言ってアレインの元を離れたアデルだったが、何故かすぐに振り向き引き返してくると、そのままアレインの両肩をがっしと掴み、
    「言い忘れてましたが、この件は皆には内緒でお願いします。特にジョセフ殿やクライブには、絶っっっ対に話さないで下さい……!」
    「あ、ああ」
     アデルの何とも言えぬ迫力に押され、こくりと頷くアレインに満足したのか。今度こそアデルは自分の天幕へと戻って行った。傍から見ても分かるほど、とても浮かれた足取りで。
     そんな彼の後ろ姿を見つめつつ、アレインは小さく息を吐く。

     件の『姫はじめ』とやらは、全く想像がつかないけれど──
     アデルがあんなに拘っているのを見る限り、ひょっとして自分が思っている以上に重要な行事だったりするのだろうか。
     その相手に自分が選ばれたのは、アレインとしても正直嬉しかったし、誇らしかった。

    「……夜が楽しみだな」
     新年早々、下心に塗れたアデルの思惑には全く気付く様子もなく。
     ふふ、と柔らかな微笑みを讃えたアレインは、夜の逢瀬に早くも思いを馳せていた。



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