答えは聞かないのれんを仕舞い、閉店作業も終わりになりかけてたとき、裏口の方からノック音が聞こえた。先に帰ったソウヤが忘れ物でも取りに戻ってきたのかと思っていたがドアが開けられる気配はない。おかしいと思ったナホヤは覗き穴から外の様子を窺うとそこにいたのは灰谷蘭だった。
「蘭?」
いつもなら客用の出入口から入ってくるのに今日はどうしたんだと疑問を抱きながらドアを開けるとそこに立っていたのはいつもの彼ではなかった。
「!? おま、そのケガどうした!?」
ナホヤが見たのはいつもの黒い特服がボロボロになるほどに傷だらけの蘭だった。
「はは、ちょっとね、」
「ちょっとってなんだよ!手当てすっから早く中入れ!」
「いや今日は」
「今更遠慮してんじゃねえよ!ほら!」
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