相談事ー放課後の教室
「今日の夕食は何かしら。ねぇ伏黒?」
「なんで俺に聞くんだよ。ここ最近、お前たちの食事の世話をしてんぞ。」
「だってめんどくさいじゃない、1人分って。なら3人分の方が効率良いでしょ?」
「だからって…おい、虎杖も何か言えよ。」
「……あ、わりぃ。なんだっけ?」
伏黒と釘崎が雑談していた時、自分は他のことで頭がいっぱいだった。
伏黒の問いかけで我に返る。
「どうしたんだ、最近。」
「授業中もぼけぇ〜っとアホ面よね。身が入ってないわ。」
「そんなことねぇーって。」
と笑ってみせるが、伏黒には勘づかれていた。
「なんかあったんだろ。」
「いや…まぁ…あったわ。」
伏黒にはすぐ気づかれてしまう。
こんなこと相談すんのもなと思いつつ、頭ん中でぐるぐる考えるのも解決しないまま。
俺は口を開いた。
「あのさー、俺の友達の話なんだけど…」
「あぁ」(これは自分からのことだな・だわ)
伏黒と釘崎が同時に話に興味を向けてくれた。
「気になる人に、手を出されたみたいで。でも、付き合ってるわけでもないし、告白されるわけでもないしで、これってどうなんだろうって。男って、みんなそういうもんなん?」
時が止まった気がした。2人は唖然とした顔をで俺を見ている。
そして先に釘崎が反応した。
「はぁ?その男何よ。そもそも付き合ってないのに手を出されるそいつもそいつよ。てか男ならあんたのが分かるでしょ。」
正論だ。耳が痛くなる…
興奮した釘崎を宥めるように伏黒が制止する。
「まぁ落ち着け、釘崎。で、その友達…はどうしたいんだ。」
「え?」
「だから、付き合いたいとか、現状維持か」
「あー…分かんねぇ…」
伏黒の問いかけで気づいた。考えてなかった。
釘崎が「はぁ?」とキレているのが分かる。それをまた伏黒が制止している。
「分かんねーけど…現状維持だと、なんかモヤモヤすんだよな…」
「はぁ…あんたさ、分かんないわけ?」
「え?何が?」
釘崎の貧乏ゆすりが大きくなり、沸点が超えていくのが分かる。
「だ〜か〜ら〜、それって、そいつはその相手を"スキ"ってことでしょーが!」
釘崎に指を刺され指摘された。
え?俺は五条先生のことが好きなの?
思考が停止した。
「おい、釘崎落ち着けよ。虎杖もボケっとしてんなよ。」
「え?あ、あぁ…"スキ"か…」
「自覚ないわけ?あんた恋愛したことないでしょ」
「え?それ今、関係ねーじゃん。まぁしたことないけど…」
釘崎は更に続けて問いただした。
「手出されて嫌だったわけ?」
「いや、別に」
「で、それだけの関係だとモヤモヤするんでしょ」
「…はい」
「その相手に告られたら、どう思うのよ」
「え?!…嬉しい…かな!」
告られたらって言われたら、顔が熱くなってしまった。
「ほら、もう答え出てんじゃない。」
「おう…」
「分かったんなら、さっさとあんたから告って、どうにかなって来なさい。」
「え?…おう!ありがとうな、釘崎!ってあれ?」
釘崎は話が終わると急に立ち上がって、教室を出て行ってしまった。
「ほら伏黒、飯作るわよ。飯。」
「え?あぁ。虎杖も。まぁそういうことだ。(てか、友達の話じゃなかったのかよ。)」
伏黒もそう言ってといって釘崎を追って行ってしまった。
1人残った教室で、頭の中を整理する。
そっか。俺は五条先生のこと好きになってたんだな。
いつも掴めない感じなのに、俺や伏黒、高専のみんなのこと考えてて、先生が「僕、最強だから」って言うと安心できて。
"好き"って分かった途端、全てが腑に落ちた。
あの日、先生がしてくれた事は何でか分からないけど、俺の中でのすべきことが決まった。
ー廊下 伏黒視点
「おい、釘崎待てよ。夕飯、結局どうすんだ?」
釘崎はスタスタと先へ行ってしまう。
ようやく呼び止めることができた。
「……」
「え?聞こねぇよ」
釘崎は何やらぶつぶつと独り言を言っているようだ。急に足を止めたから、俺も立ち止まった。
「あれ、虎杖自身のことよね。」
釘崎は冷静に、そう言った。
「え?あぁ、たぶんな。」
「しかも、相手男よね。」
「あぁ、確かに。そうなるのか。」
「その相手って、まさか…」
「え…まさか…」
『五条先生?!』
俺と釘崎は多分同じことを考えたと思う。
(やばいやつに手つけられたな、虎杖。)